スペースシップ『アンコウ』
スペースシップ「アンコウ」は、広い宇宙を長く旅をしている。
スペースシップ「アンコウ」は、メイル型とフィメール型に分かれている。このスペースシップは、メイル型だ。
メイル型「アンコウ」は、フィメール型「アンコウ」とドッキングすることがかなわなければ、ただ宇宙を彷徨い塵芥となるだろう。
彼らは、フィメール型の放つ小さな明かりを求め、彷徨い続ける宿命なのだ。時に、大型スペースシップに攻撃されながら。
「大型スペースシップです。形式は…『サメ』です! こちらを狙っています」
「砂状アステロイドベルトに潜伏しろ! プランクトン粒子さえあれば、しばらくは凌げる。緊急旋回急げ! フェロモン反応が近い。フィメール型はそう遠くない!」
※
広大と言う表現も稚拙とも思えるような、無限の広がりを持つパーシフィク・オシャーン宙域。
「ここは?」
「おそらく、ハレ・ナウマク深淵かと思われます。このように宇宙線の穏やかな宙域は稀です」
「フィメール型の発見が期待できるな。受光センサーを最大限。このまま緩やかに進行する。瞬きをするな!最後のチャンスだと思え!」
僅かなフェロモン反応を頼りに、宙域を彷徨い続けた。
船体の寿命が尽きかけようと思われる頃、暗い宇宙の中で明かりを見つけた我々は歓喜の声をあげた。
「まだ、コチラの機能は正常か?」
「正常です。ドッキングできれば、コチラの遺伝子情報を渡せます」
我々の船体の何十倍もの大きさをしたフィメール型が、ゆっくりとコチラに近づいてくる。既に数体のメイル型が同化しているのが確認された。
「我々も、続くぞ! 命をつなげ! 我々の意思は失われるだろう。だが、命をつなぐのが我々の使命だ! 緊急発進! 全速力だ。なんとしても、ドッキングせよ!食らいつけ!」
長い航海でオフィレエンジンは、ボロボロである。
スケイル装甲がボロボロと剥がれはじめた。
「船長! 船体が持ちません!」
「諦めるな!私達は死なない!我々は繋ぐ為に産まれたのだ!アギトアンカー放出!ドッキングの衝撃に備えろ!」
※
フィメール型「アンコウ」は静かに休んでいた。
体内で、新たな「アンコウ」を育てているのだ。
あのメイル型「アンコウ」の航海は無駄では無かった。彼らの意識は失われたが、彼らの決死の航海が新たな生命をつなぐのだから。




