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レベル1の私を追放した勇者よ、貴方の傷はもう治らない。だって私、もうパーティーにいないから  作者: kabutomushi/Z


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第1話:追放と異変の自覚

【I. 追放】


「お前は、もういらない」


勇者エドガーの冷酷な宣告が、ダンジョン地下三階の湿った通路に響き渡った。


私の名前はアリス。職業はプリースト。しかし、パーティー内では『荷物持ち』という名の雑用係だ。


三ヶ月、毎日毎日、全身の魔力を絞り出して仲間に回復を施してきた私への、たった一言の労いは、これだった。


「アリスの回復魔法は効果が薄く、魔力の燃費が最悪だ。そんな役立たずのスキルに、パーティーの貴重な資源を割く余裕はない」


勇者はそう言い放ち、私を冷たい壁際に突き飛ばした。


私は、慣れ親しんだ水色のローブの袖で、滲む視界を拭った。確かに、私の魔力はすぐに枯渇するし、治癒の光も他のプリーストに比べて地味で弱い。いつだって、団長の剣士カイが「水しか出ないのか」と嘲笑した。


「じゃあな、アリス。せいぜい魔物に食われないようにな」


パーティーは、私に背を向け、迷いなくさらに深い階層へと進んでいく。彼らの足音はすぐに消え、静寂だけが残った。私は一人、全身の力が抜け落ちたように、湿った通路に座り込んだ。


(私の、三ヶ月間の努力は…何も意味がなかったの?)


悔しさよりも、深い孤独が私を包んだ。誰にも必要とされない、本当に役立たずのプリースト。


【II. 帰還の試練】


しかし、いつまでも座り込んでいるわけにはいかない。魔物が出るダンジョンで立ち止まることは、すなわち死を意味する。私は重い腰を上げ、地上への帰還ルートを辿り始めた。


普段なら、この時点で既に魔力切れと疲労で足がもつれているはずだった。勇者パーティーにいた頃は、激しい戦闘の後、いつも私は数時間動けなかった。それが、彼らを追放された理由の一つでもある。


なのに――おかしい。


(あれ?全然、疲れていない?)


重い荷物を背負い、急ぎ足で階段を駆け上がっているのに、息切れ一つしない。むしろ、体が内側からポカポカと温かい。「回復魔法が常に私にかかっているような状態」といえば、そうかもしれない。でも、私はさっきから一度も魔法を使っていない。


「気のせいよ。まだ、緊張が解けていないだけ」


そう自分に言い聞かせた。きっと私は、パーティーにいた頃、知らず知らずのうちに緊張とストレスで消耗していたのだ。一人になったことで、ようやく体が解放されたのだと。


【III. 初めての戦闘と異変】


地下二階に差し掛かったところで、通路の曲がり角から、青白い肌をした『ホロウ・ゴブリン』が飛び出してきた。


「ひっ!」


思わず悲鳴を上げ、逃げようと後ろに下がる。急いで向きを変えようとした瞬間、足元の石につまずき、体勢を崩した。その拍子に、背中のリュックを支点にして、鋭利な岩の突起に右手の甲を深く引っ掛けてしまった。


ドバッ、と鮮血が噴き出す。激痛。脈打つたびに血が溢れる。これは深い。このままでは確実に動けなくなり、魔物の餌食になる。


ホロウ・ゴブリンは、私めがけて粗末な石斧を振り上げた。恐怖で体が動かない。


(ああ、こんなところで……)


次の瞬間。


右手の甲の傷口が、ひどく熱を持った。熱くて、痛い。焼けるようなその感覚に、私は反射的に目を閉じた。


ゴブリンの石斧が振り下ろされる。衝撃はなかった。代わりに、ゴブリンの呻き声が聞こえる。


恐る恐る目を開けると、ゴブリンは私の目の前で石斧を落とし、顔をしかめて通路の隅に後退している。私からは、強烈な**『不死身の気配』**が放たれており、低級魔物には耐えられないほどの強烈な圧力でそれを感じたからだ。


そして、私の右手の甲を見て、私は思わず息を飲んだ。


あれほど血が噴き出していた深い傷が、まるで映像を早送りしているかのように、急速に再生している。肉が盛り上がり、血が止まり、数秒後には、ただの赤みがかった皮膚が残るだけ。


――傷が、治っている。完全に。


私はパニックになった。これは、私の魔力とは無関係だ。これが、私の《リジェネレーション》の真の姿?


「私は……怪我を、しない?」


自分の体に起こった異変に、アリスは顔面蒼白になりながら、目の前のゴブリンの存在すら忘れかけていた。

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