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雑多な小噺

ねえ、お母さま、聞いてちょうだい

掲載日:2025/12/11

 寒い、冬の夜。

 あるところに、小さな家が、ありました。

 そこには、セレーネという、小さな女の子が、住んでいました。

「今日は、星がきれいね。」

 窓の外を見たセレーネは、さびしそうに、そうつぶやきます。

「そうだ!お母さまと、約束していたんだった!」

 セレーネは、何かを思い出しました。

 ちょっぴり大きいコートを着て、ランタンに火を灯して。

 あっ、お母さまの大好きなリンゴも忘れてはいけません。

 カゴいっぱいのリンゴと、明るいランタンをぶら下げて、セレーネは外に出ました。

 約束とは、何なのでしょう?


 さふ、さふ、さふ。もぎゅっ、もぎゅっ、もぎゅっ。

 白い雪の上を歩くたびに、そんな音がなります。

「おや、セレーネ。こんな夜中に、どこに行くんだい?」

 雪うさぎが、聞いてきました。

「お母さまといっしょに、お空の星を見るの。」

「そうかい、気を付けてな。」

 一言二言だけ話し、セレーネはふたたび歩きはじめました。

 さふ、さふ、さふ。もぎゅっ、もぎゅっ、もぎゅっ。


 やがて、小さな丘にたどり着きました。

 丘のてっぺんには、大きな木。

 セレーネは、木の根もとに座りました。

 まわりには、誰もいません。

「ねえ、お母さま、聞いてちょうだい。」

 セレーネは、ひとりで話しはじめます。

「あのね、あのね、最近、シルヴァが優しいの。なんでだろうね?」

 誰かに話すように。

「こないだなんて、花束も作ってくれたの。お気に入りの杖に飾ってくれて。嬉しかったなあ。」

 家族に話すように。

「それでその時、不格好なプロポーズまで言われちゃって!それで、2人で笑ったの。でも、不格好でも、なんでか、かっこよかったな。」

 母親に話すように。

「来年は、シルヴァもここに来てくれるって。楽しみにしててね。」

 木のそばに、リンゴの入ったカゴを置いて。

 セレーネは、立ち上がりました。

「また来年ね、お母さま。」

 ランタンの火が消えないうちに。

 きらきらと光りまたたくダイヤモンドに見守られているうちに。

 セレーネは家へと帰りました。

 リンゴがカゴからこぼれ落ちました。

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― 新着の感想 ―
1年に一回しか会いにいかないのはちょっと不精過ぎな気が・・。 後、大きな木の『根元』からでは夜空も真上はあまり見えないような? セレーネはギリシャ神話の『月の女神』で、シルヴァはラテン語で『森や林』…
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