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桜の花びらに名前をつけたら、君が笑った。 ――春の風の中に、君の声がまだ残っていた。

最終エピソード掲載日:2025/11/02
 桜の花びらに、名前をつける少女がいた。

 高校三年の春。
 美術部の幽霊部員だった瀬尾悠真は、卒業制作のために校庭の桜を描こうとしていた。
 けれど、どうしても筆が動かない。

 一年前、その桜の下で、同級生の三枝小春と約束をしたからだ。

「この桜が満開になったら、私に見せてね」
「ただの桜じゃ駄目。花びら一枚一枚に、ちゃんと名前をつけて」

 病気で学校を休みがちだった小春は、春を待たずにいなくなった。
 それ以来、悠真は桜を描けなくなってしまう。

 卒業を目前にしたある日、取り壊し予定の旧校舎で、悠真は小春が遺した一冊のスケッチブックを見つける。
 そこには、無数の花びらの名前と、花のない未完成の桜が残されていた。

 これは、亡くなった少女を忘れないための物語ではない。
 彼女がいない春を、もう一度好きになるための物語。

――
第1章 名前のない桜
2025/11/02 18:21
第2章 花びらの声
2025/11/02 18:27
第3章 完成しない春
2025/11/02 18:30
第4章 君の名前を呼ぶ花
2025/11/02 18:44
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