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第4話(中編) 囁かれる実験「封じられた地下」

村外れの古びた教会は、石壁が苔むし、瓦礫と化した屋根だけがかろうじて祈りの面影を残していた。

その旧教会の隅に、今は使われていなさそうな小さな古井戸があった。

村長の話では、たしかこの辺りで不思議な光を見た人がいたらしい。


旧教会の跡地は、ずいぶんと閑静ではあるが、村の住宅地からそれほど離れているわけでもない。

また、子供の遊び場にもなっているのだろうか、小さな足跡がいくつも残されており、光を見たという噂の出どころも、もしかしたら子供たちからの報告だったのかもしれない。


大森の先導で旧教会の内部へ入ると、昼間でも少し薄暗かった。

冷たい夜風に晒されたせいか、村人二人の酔いもかなり冷めていたようで、しっかりした足取りで後に続く。

幾つもの祭壇や壁龕へきがんが打ち捨てられたまま放置されており、窓越しの光が割れたステンドグラスの破片に反射し、不気味な彩りを投げかけていた。


「ここだ……」


探索者の視界で、中央祭壇の裏手にかすかなマナの揺らぎを検知する。

瘴気とは異なる人工的な魔力が、まるで蛍を提灯に封じ込めたかのように鈍く発光していた。


澄江が杖をかざし、守りの結界を広げる。

大森は斧槍を構え、扉の隙間から侵入を試みる。

同時に、杉本は足元の床石を調べると、不自然にくぼんだ蓋を発見して声を上げた。


「うん? この下に、何かが隠されている……!」


ぐらつく床石を外してみると、細く狭い空洞が現れ、簡素なロフト階段のような梯子が地下へと続いていた。

軋む階段をゆっくり慎重に降りると、狭い通路が左右に分岐していた。


魔法の光球で通路の先を照らし、右へ行くと、地下部屋を作りかけて放置したような行き止まりになっていた。

引き返して左の通路に進むと、扉のない小部屋があり、壁面には古びた実験器具の跡、割れたガラス容器、引き裂かれたような布切れが散らばっている。

人が住まなくなった廃屋は荒れて奇妙な雰囲気になるものだが、それを加味したとしても、ここは不気味すぎる。


雰囲気に惹かれたわけではないと思うが、なんとなく小部屋の隅にあった燭台に火を灯すと、炎がジリリと揺らめき、闇に溶け込んだ不穏な空気がうっすらと形を結んだように見えた。


「……ここは何の部屋だ?」


杉本が囁くと、澄江は足元の血痕に気づく。

ガラス片から滴る赤い液体は乾き始めており、時間が経過していることを示していた。


「……血液?」


「教会……だったんだよな?」


少し見に行く程度の軽い気持ちで旧教会跡を調べ始めたものの、状況は思ったよりもホラーだった。

そうか……村長がニヨニヨしていたのは、これを狙っていたのかもしれないな。

酔った勢いで肝試しなんてするものじゃない。


……そろそろ帰ろうか。いや、別に怖いわけじゃないけどな。

などと、笑いを誘いながら言ってみようかと考えていたその時、通路の奥からかすかな呻き声が聞こえた気がした。


くっ……もっと早く戻るべきだったか。

後悔しても、もう遅い。

肝試しであろうがなかろうが、調査を願い出ておいて、不審な気配を感じたから引き返そうとは言えない。


意を決して小部屋を出て先に進むと、今度は朽ちかけた木の扉があり、部屋からは僅かに薄明かりが漏れていた。

大森が呼吸を殺し、朽ちた扉の細い隙間から中を覗き込む。


「!!」


部屋の内部を見た大森は、驚愕の表情で絶句する。

そこには、歪んだ檻のような金属格子に、等身大人形のような半透明の村人が括りつけられ、青白い光の線が肉体を走る様子が映っていた。

ほぼ人間と変わらない姿で吊られた者から、半透明の人形まで、まるで成長を記録した標本のように吊り下げられた実験部屋。

中には、子供の姿をした個体もある。


これがアバターを生成する装置――まさしく“アバター化実験”の現場だった。


思わず部屋に飛び込んだ澄江は眉をひそめ、目にうっすら光る涙を拭う。


「やはり……本当にあるのですね」


村に伝わる噂は真実だった。

澄江の流す涙が、その衝撃の大きさを物語っていた。

作られた存在、作られた村人が目の前にいるという現実に、身体が凍りついたように硬直する。

まるで銅像のように固まって動けない。

部屋に入った澄江を追うように駆け込むと、半透明の人形を前に、4人ともショックを受けて立ち尽くしていた。


いったい何のために――

疑念と疑惑が、杉本の脳裏に渦巻いていく。


と、その時。


「Damn... you saw me. That's why I said it's dangerous to make adjustments on-site.」


「It couldn't be helped, the population rate around here had dropped drastically. There was an urgent need to replenish the population, and the placement of heroes...」


「No time to argue! Let's get rid of them!」


掠れた音のような声が、通路の奥から鳴り響く。

ドサリと何かを投げ出すような音と、足音が背後に響いた。

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