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第15話(後編)祝祭の影に潜む神柱浄化「神柱浄化」

「何者だ! これより先は神を祀る大聖堂へ続く道。何人たりとも進むことは許されん!」


表通りの賑わいに乗じて、裏から神柱へ近づく作戦は、見事に看破された。

大森は瞬時に状況を理解し、次の行動へと移る。


「隠密はこれまでか。ならば、力尽くで道を押し開くまで!」


大盾で矢を防ぎつつ騎馬との間合いを詰め、斧槍を振り回して騎乗馬の鼻先をかすめる。

その勢いで、黒甲冑の騎兵二人がバランスを崩し、馬から転げ落ちた。

大森の飛び出しに生じた隙を感じ取り、杉本も騎兵の弓を持つ反対側から奇襲を仕掛け、連携を断つ。

同時に澄江が〈ライトニングファースト〉で閃光のように飛び、狭い路地から石柱脇へと駆け抜け、死角から残る一体の騎兵に〈マジックアロー〉で威嚇射撃を放つ。

もんどり打って場に臥せた騎兵を、大森が身体ごと突っ込んで抑え込んだ。


祝祭の狂騒の中、三人は意識を集中させ、闇の気配を追って足音を近づける。

スニークミッションは失敗に終わったが、なんとか場を制することには成功した。


「ここだ……やはり! 魔力が吸い取られていってます!」


澄江の囁きに続き、杉本は杖を大地に突き立てる。

石柱の根元には黒曜石の欠片が埋め込まれ、結晶の繊維が闇の瘴気を揺らしていた。


「女神の祝福を偽る、シイゴの黒き装置……神柱だ」


魔力の根源――マナは生命に多く宿り、勢いを増す。

祝いの宴に集った膨大なマナの残滓が急激に石柱へ吸い寄せられ、瘴気を帯びた結晶へと姿を変え始めた。

大森は腰を落とし、斧槍で瘴気結晶を叩き割ろうと構える。


「待って!」


澄江が叫び、大きく手を左右に振った。


「一撃で割ると、祭壇全体が暴走します。下手をすると瘴気ごと爆発してしまう………

ここは“癒し”の光で、闇を浄化してから破壊しましょう」


澄江は静かに詠唱を紡ぎ、〈ピュリフィケーション〉で石柱の周囲に癒しの光を灯す。

瘴気の塊が白い光に溶けるように霞み、視界を遮りながら深い光の中に沈んでいく。

闇の瘴気が白くかき消され始めたその瞬間、背後から飛び掛かる影があった。

遠隔石弓の矢が澄江の肩を深々と貫く。


「澄江様!」


杉本と大森が同時に駆け寄るが、彼女は痛みに耐え、〈コンセントレーション〉を詠唱しながら身を沈めた。

結界の光がほころび、瘴気が渦を巻く中、彼女はかすかに微笑む。


「大丈夫です……お返しします、お受け取りを!」


〈コンセントレーション〉で集中力を高めた澄江は、自分を撃った背後の影に向けて魔法の矢を放つ。

瞬時に放たれた魔法の矢は、正確に遠隔石弓兵の心の臓を射抜いた。

影は大きな石弓にもたれかかるように崩れ、霧散する。


肩から滴る血を手で押さえながら、澄江は〈ミドルヒール〉で治療を施し、杖を掲げて石柱の浄化を続行した。


両腕を広げると、四元素の光が澄江を中心に奔流となって噴き出す。

癒しの光と火、水、風、土──すべてが調和し、“清浄なる結界”が神柱を覆う。

結界は漆黒の瘴気を霧散させ、瘴気結晶へと変わった石柱を砕く音が聖堂を揺らす。


大森は澄江の盾となり、杉本は〈パワーエナジー〉で力任せの一撃を加える。

豪打の一撃が神柱破壊のとどめとなり、石柱の芯となっていた黒曜石は裂片を撒き散らしながら白い光とともに消え去った。


瘴気が消えた神殿の裏手では、杉本たちと交戦した衛兵隊が意識を取り戻していた。

御神石を砕く、まさにその瞬間に目覚め、嘆きの表情を浮かべながらよろよろと砕け散った神石に近づく。


「おお……なんて……なんてことだ、天罰が下るぞ……」


隊長が呟き、地面に散らばる黒曜石を恐る恐る指で触れると、ボロボロとその形を維持できずに崩れていく。

守るべきを失った衛兵たちは、自分たちが守ろうとしていたものの真意を知らなかった。

けれど、守ろうとした石柱に瘴気が集まっていたことは感じていた。

破壊された今、汚染が洗い流されたかのように、凛とした神々しい空気が神殿を覆っていた。


「アクエリス、君は無事か?」


「回復魔法をかけたので大丈夫です。ありがとうございます」


杉本は、澄江ではなく意図的に十二使途アクエリスの名を出す。

この破壊行動が、この世界を守護する存在――十二英雄の一人が請け負った任務であることを衛兵に知らしめるためだ。

衛兵たちは、破壊に向かった杉本たちを訝しんだが、それが正義の行いであると理解するには、そう時間はかからなかった。


澄江に矢を放った石弓兵は、衛兵ではなかった。

おそらく神柱に刻まれた迎撃魔術の一種だろう。

影の弓兵を形どった何かは、虚空に消えるように姿を消していた。


澄江は再度〈ミドルヒール〉で肩の傷を癒しながら、衛兵に何か説明をしている。

大森は斧槍を畳みながら聖堂へ二礼し、衛兵隊には礼を伴いつつ通行を促した。

──時は来た。磨き上げた己が武を示し、華やかな祝祭の裏で暗躍する闇を払う時――

彼らは交戦する敵を瞬時に無力化し、その力を闇の神柱へと解き放つ。


**次回、第16話「女神の光を求めて」**

熱き魂を宿した聖戦士たちは、神々の住まうティーベリウム大聖堂へ続く扉を潜る。この世界に蔓延る闇の力を振り払う為に。

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