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第14話(4)早乙女悠馬の魔術理論「光と闇の調律」

「長瀬は、ある種特別な素養を持っていると僕は思ってる。」


四元素属性の講義から、光と闇属性の話に移ったところで、早乙女は長瀬について語り始めた。


長瀬は闇を中心に据えながらも、光の加護を得ている。

これはおそらく、神シイゴに匹敵する力と見ても差し支えないだろう。

そして、杉本と澄江の二人も、明らかに光属性の素養を持っていると、早乙女は言葉を続けた。


「簡単に言えば、光は元素――マナをどこからともなく生み出す力。

闇はマナを打ち消す力。

ゼロ、すなわち“無”を生み出す力とは、どれだけの力を秘めているかわかるかい?」


早乙女は興奮したように語気を強めた。

四元素魔術の講義の時にも感じたが、研究者気質の人間は、自分が興味のある事柄を語ると熱が入るものだ。


完全なる“無”の世界は、空間すらも超越する。

例えば元素はどこにでも存在し、日本からアメリカへ、地球の反対側へ移動しようとしても、その力点を“ゼロ”にすることはできない。元素が邪魔をするからだ。


その“無”を移動できるのが、闇属性。

日本とアメリカをゼロの世界で繋げば……もはや“移動”という概念すら不要になる。


宇宙空間も完全な闇、完全な真空ではない。

地球の概念で言えば、最も闇に近い存在はダークマターだろう。

見えない、触れられない、だが質量があるという謎のエネルギー。

それですら完全な“無”ではなく、質量が存在している。


だが、そこに闇のマナを魔力として発動させたらどうなるか。

闇のマナは“打ち消す力”。

完全なる“無”の闇を誕生させることができる。


日本から、アメリカから――そんなちゃちな話ではない。

宇宙のどこにでも移動できる力、それが闇属性だと早乙女は力説する。


どうやって光を生み出している?

どうやって真なる闇を生み出している?

光でも闇でも、突き詰めて深く追求すれば、その正体は永遠に見えなくなるだろう。


いたるところに矛盾が見えてくる。

ただ……これだけは言える。

だから光属性なのだと。だから闇属性なのだと。


その矛盾は、地球の概念で考えているからこその矛盾。

この世界には“マナ”と呼ばれる、それこそ神がかり的な力が存在する。

だから光と闇の属性は、矛盾を飛び越えた神秘の力なのだ。


火・水・風・土の四属性は、なんとなく理解することは可能だろう。

だが、説明すら困難な事象を可能にしてしまう力――それが光と闇の属性だった。

マナは作用しても、四属性のマナと光・闇のマナでは、根本的に力の規模が違う。


もちろん、簡単に説明するために理解できる範囲のことだけを語っているが、それ以上の力も秘めているはずだ。


運が良くなったり悪くなったり――どう説明すればいいのか見当もつかない。

それこそ神がかり的な力の源だ。

言葉にすると闇属性の異様さが際立つかもしれないが、光属性も同様に言葉では語りきれない。


「最大限簡単に表すと、『見えるものすべてが光』『見えないものすべてが闇』。

こう言えば、光であれ闇であれ、その二つが恐ろしいほど異常な属性だということが伝わるか?」


早乙女は言葉を強めてそう語った。


そして、その素養は互いに反発し合っていて、二つの属性を同時に扱うことは不可能。

イメージしてみるといい。

光が照らす場所に闇は存在しない。

闇が染めれば、光は存在できない。


光と闇は、本質的に相反する表裏一体の属性。

ただ、どちらの力が強いか弱いかだけで、正と負がひっくり返る――100かゼロの世界。


光を照らせば影ができる。

影が照らせば光が消える。


「影が照らす……こういった発想は、地球にいる時はできなかった。

だが、マナの力で闇――影を生み出すことができる。」


早乙女は、光と闇の属性を語る講義の締めくくりとしてそう言った。


---------


マナに関する講義が続く中、早乙女はふと杉本の表情が気になり、声をかけた。

ディフォルメされた言い方をすれば、頭から煙を吹き出して唖然としていた。


「杉本? 大丈夫か……」


「すまん……全然わからん……」


意気消沈した顔を見せながら、杉本は正直に講義を理解できていないことを伝え、頭を下げた。


「私も……少し難しいですね。なんとなくは理解できますが……」


杉本に続き、澄江もまた、完全には理解できていないことを早乙女に伝えた。


「はぁ……長瀬さんは理解できたから、これで伝わると思ったんだけど……

じゃあ手っ取り早く言うと、君と藤沢さんは光属性の素養を持っているから、四元素+光の“五元素”を扱えるはず。

それを踏まえて、君たちがそれぞれ扱えそうな術を提示していくようにしよう。」


魔術の世界は、二人が思っていたよりもずっと奥深かった。

頭から煙が噴き出すほどに。


長い講義の間、ミラノーラのアーカム魔導学院には強い日の光が差し込んでいたが、気がつけば日は傾き、辺りはすでに夕暮れの赤みに染まりつつあった。


──過去の追憶は強き者の通る道。

絶対なる存在を討つため、彼らは振り返り、輝きを増す――

新たなる力の奔流は、やがて大樹をも脅かし、大地に咲く若き芽を育むだろう。


**次回、第15話「祝祭の影に潜む神柱浄化」**

決戦の時は刻々と近づく。

人はただ己の武を磨き、己の知を信じる。

華やかな祝祭の灯りは、聖戦への序章と繋がる。

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