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第14話(2)早乙女悠馬の魔術理論「足りないモノ」

「まずはお見事、と言っておくよ。ただ……正直に言わせてもらう。

杉本、いや杉本に限らず藤沢さんと大森君も、戦い方が粗すぎる。

そもそも前衛の身体能力を持つ杉本が後衛に回り、後衛……いや、中衛かな。前に立つべきではない藤沢さんが前に出るのは頂けない。」


乾いた拍手音を両手で響かせながら、長瀬が姿を現した。

どうやら三人の戦闘を、ただ見ていたらしい。

それは今後共に戦う仲間として、杉本たちの力量を分析するためだったのだろう。


俺たちの戦い方を分析され、弱点を看破されてしまった。

自分で言うのもなんだが、戦闘はそもそも出たとこ勝負で対応していた程度のもので、陳腐なものだ。

戦術らしきものも構築しているわけではない。

簡単に言えば、俺たちは弱い。個人としても、パーティとしても。


痛いところを突かれた杉本は、バツの悪そうな顔で頭を掻いた。


「しかたないだろ……俺は生まれてこのかた、命がけの戦いなんて経験したことがない。こっちの世界で、のらりくらり戦ってきただけなんだから。」


「それでも……だよ。魔術の使い方もなっちゃいない。杉本……早乙女には会ったかい?

彼に教えを請えば、もっとまともな戦術を取れたはずだよ。」


長瀬の指摘に、杉本はまたバツの悪そうな顔で答える。


「それが……彼には会ったんだが、ちょっと……な。」


口ごもる杉本を見かねて、澄江が代わりに説明を始めた。


「杉本様と早乙女様は、そもそもあまり相性が良くないのではないでしょうか?

何か、御二方が顔を合わせると、どちらも不機嫌になって会話が進まないように感じました。

杉本様はその空気に耐えられず、飛び出してしまわれて……」


「その……すまん。なんだか、あいつと話しているとイライラして……な。」


杉本は地球での職業――長年警察官として生きてきた。

その職業柄、人を気に食わないからと話も聞かずに自分の思うままに行動するなんてことは、あってはならない。

けれど、ミラノーラでも、辺境の村オレリウムでも、なぜかカッとなると抑えが効かなかった。


「なるほど……そうか、相性か。」


長瀬はようやく現状を理解したようで、一人納得した表情を浮かべ、三人に向けて説明を続けた。


「いや、わかった。元々杉本は粗い性格をしているとは思っていた。

そして早乙女は、神経質なほど慎重な性格。

この世界に蔓延る洗脳装置の影響で、感情の起伏が激しくなっていたし、衝突して会話すら成り立たなかったとしても、それは理解できる。なるほど……」


「すまん。」


杉本は今までの自分の行動を思い返しながら反省し、澄江と大森にも頭を下げた。

長瀬は神妙な面持ちで話を続ける。


「いや、僕の方こそ配慮が足らなくてごめん。

けれど……そうだね、洗脳装置を破壊して感情抑制も可能になった今なら、前ほど衝突するような事態にはならないんじゃないかな。

それに……彼の、早乙女の慎重な戦術は、これから先には必須だよ。

魔術に関してもそう。あまり時間はかけられないと思うけど、教えを受けて損はないと思うけど……どうかな?」


長瀬は、杉本・澄江・大森を順番に見て、反応を伺う。

それに杉本が応えた。


「それは……皆が安全に戦えるようになるのなら、むしろこちらからお願いしたいことでもあるが……」


杉本は澄江と大森の様子を伺うように視線を向ける。

その視線に気付き、二人は反対の意思はないと大きく頷いた。


「わかった。じゃあ、これからの行動は決まりだね。

まずは力を身につけるために早乙女に協力を願う。

そして準備を整えてから、シイゴと相対しよう。僕は別行動でシイゴの状況を探るよ。」


そう言いながら長瀬は手を振ると、ブゥゥンと鈍い音を響かせながら地面に暗く光る陣を生み出した。

まるで光を吸収するかのように、漆黒に輝く魔法陣。

それを見て、杉本たちは驚きの表情で長瀬を見る。


「これは……転移陣だよ。これでも僕は十二使途として英雄と称される程度には力を行使できる。

皆をミラノーラへ帰すくらい、わけないさ。」


そう言いながら、今度は虚空に闇の渦を生み出すと、そこから小さな人形を取り出した。

以前見た、長瀬を小さくデフォルメしたような人形だ。


「それと……これを一緒に連れて行ってもらえるかな。僕の簡易アバターだよ。

会話はできないけど、状況の交信はできるから。」


そう言うと、人形は長瀬の手からピョコンと地面に降り、軽く会釈をした。

その愛らしい動作を見て、澄江がすかさず駆け寄り、自分の手に乗せてキラキラと目を輝かせた。


「はは……じゃあ、その人形は藤沢さんにお任せしようかな。杉本に預けたら踏みつぶしてしまうかもしれないしね。」


そう冗談めかしてウィンクすると、澄江は無言でコクコクと頷き、人形を抱きかかえた。

どうやらミニ長瀬人形の所有者は澄江に確定したらしい。


「それじゃあ……皆、危険はないから魔法陣の上に乗ってくれるかな。転移陣を発動させるよ。」


三人は、長瀬に促されるまま『漆黒に光る』魔法陣に乗ると、足元から消えるようにその場を後にした。

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