表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/48

第14話(1)早乙女悠馬の魔術理論「回想」

俺は杉本真也。

地球の女神テラによってもたらされた冒険譚も、だいぶ長くなってきた。

この辺りで一度、状況を整理しておこうと思う。


回想だから退屈に思えるかもしれないが……な。

杉本は誰に語るでもなく、心の奥底に向かって静かに言葉を紡いだ。


改めて――俺は杉本真也。

日本国首都・東京の赤羽派出所で勤務していた警察官。

……だった。


「だった」と言うのは、仕事を辞めたとか定年したとか、そんな穏便な話ではない。

赤羽駅構内で発生した不可思議な事件に巻き込まれ、知人の長瀬良治と共に異世界神シイゴの世界へと連れ去られた。

地球の女神テラの助力を得て、冒険という名の旅を強いられることになったのだ。


異世界神シイゴが管理する世界では、不思議な縁で十二使途と呼ばれるシイゴ直下の部下の一人・藤沢澄江、そして藤沢の幼馴染・大森剛志と行動を共にすることになった。

十二使途とは、異世界神シイゴが『星を守る十二星座の物語』をモチーフに創り上げた機構。十二人の英雄、そして守護者の総称だ。


俺が降り立った異世界の国、ルーメン帝国の辺境に位置するオレリウム村で藤沢と大森を仲間に加え、この世界で行われている「アバター実験」と呼ばれる地球人拉致の実態を知った。

オレリウム村では、共に異世界へ攫われた長瀬良治と再会を果たす。だが、彼はすでにシイゴの手先となっていた。


……いや、すまない。

「シイゴの手先」とは少し言い過ぎたかもしれない。

彼は実質的にシイゴ陣営に属しながらも、俺たちに協力してくれていたのだから。

この世界では、異世界神シイゴの意志が何よりも優先される。

シイゴはこの国の人間すべてに精神汚染――つまり洗脳を施し、神の意思で自由に世界を創り替えることを望んでいた。

澄江――藤沢が十二使途として強く洗脳されるのを防いでくれたのも、長瀬だった。


その悪意に抗うべく、俺たちは隣国ミラノーラへと旅立った。

魔術とも呪いともつかぬ不可思議な力により冒険は難航し、俺自身も知らぬ間に世界の意思に取り込まれていたようで、度々トラブルを自ら引き起こしてしまった。


ミラノーラでは、魔法のエキスパート・早乙女悠真と出会い、街の酒場で女神テラの力を秘めた結晶石の欠片――『聖遺物』の情報を得た。

ミラノーラのさらに先にあるカルタリス共和国の港町で、この聖遺物を入手し、簡易的な加工を施して『女神の杖』とし、俺の主武器となった。


異世界神シイゴと争うためには、『女神の杖』に刻まれた情報を解読する必要があると判断し、カルタリス共和国から海を渡り、十二使途の本拠地とも言える『聖なる島』へと向かった。


『聖なる島』には、祭壇の地下に広がる地下大聖堂があり、その奥には転移魔術が施された門が存在する。

その転移装置から各地の主要都市へ飛べると聞き、『女神の杖』の真なる力を引き出すため、聖遺物研究者がいる帝都ルーメンへと飛ぶことにした。


だが、そこで『女神の杖』の元の持ち主――長瀬良治と、意図せず再び邂逅することとなった。

彼とはその地下大聖堂で共闘し、シイゴと対決することになる。

結果として、俺たちは逃がされ、長瀬は捕らわれの身となった。


紆余曲折を経て、長瀬たち地球人の本体――アバターではない本物の身体が眠らされ捕らわれている『次元倉庫』の存在を知る。

早乙女悠真の本拠地であるミラノーラのアーカム魔導学院。

そこから郊外へ一時間ほど走った先にある古びた礼拝堂に開いた次元倉庫から、長瀬の本体を救出した。


しかし、長瀬は自身の分身とも言えるアバターが、異世界神シイゴと敵対した罪により十二使途に捕らわれているため、世界に二人の長瀬が存在するのは不自然だと判断し、姿を隠して別行動を取ることになった。


次元倉庫から長瀬を救出したものの、入り口が開いた場所や神に近いとされる『聖なる島』では、魔法の根源・マナの力場が不安定になっているのか、度々不可思議な転移に巻き込まれたり、長瀬の過去を垣間見る夢の中での冒険に巻き込まれたりもした。


現実か夢かもわからないが、意識を飛ばされた先で、アバターの成れの果てが住むスラム世界の実情を知った。

とても人が住める環境とは思えないそのスラム世界は、神々の間では「人々の救済の地」として認識されているらしい。


不憫に利用され、打ち捨てられる地球人の惨状を知った俺は、世界の意思に引きずられるまま怒りに身を任せ、捕らわれた地球人の本体が保管されている次元倉庫を止めるべく、再び『聖なる島』の神殿奥へと特攻した。

ちなみに、以前侵入した祭壇地下の大聖堂とは、同じ『聖なる島』にある別の施設である。


特攻先で、次元倉庫の制御装置を破壊したと思ったが、それは次元倉庫の制御ではなく、神の意志に沿って感情を送受信する装置――いわば洗脳装置だった。

偶然ではあったが、異世界神シイゴの根幹とも言える洗脳装置を破壊したことで、真の意味で自由となった長瀬良治は、地球人が捕らわれた次元倉庫を取り戻すことに成功する。


その流れで、異世界神シイゴに直接ダメージを与えるためか、神殿奥のさらに先に繋がる神域で、世界の根幹を司る世界樹の石碑を破壊した。


そして――


「長瀬、いるんだろう?」


散らばった石柱の中心に聳える大樹、世界樹。

その影に隠れるように立っていた人影に、杉本が静かに語りかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ