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第11話(後編) 闇属性の罠と使途の襲撃「望まぬ邂逅」

杉本達は、神殿奥の隠された通路を進んだ。

澄江は〈守りの祝福〉で結界を張り、虚に備えながら注意を促す。


「闇の瘴気が強い場所です。お気をつけて」


通路は人工の床から、ゴツゴツとした洞窟の地肌へと変わっていた。

ダンジョンと地下道の中間のような空間を、三人は慎重に進む。

大森はぬかるむ床を避けながら斧槍を構え、「罠があるなら見逃さん」と警戒を強める。


その時、探索者の目スキルが反応。

天井から危険の兆候が走る。マナの流路が赤く点滅し、闇属性の瘴気罠が発動した。


息を呑む間もなく、天井から瘴気を含んだ液体が滴り落ちる。

地面に触れた瞬間、霧状となって三人を包み込んだ。


霧は闇属性のマナを帯び、触れた者の思考を鈍らせる。

精神を虚脱させるデバフの一種だろうか。視界が歪み、呼吸が重くなる。


「くそっ!……離れろ!」


杉本は硬直しながらも霧を振り払い、杖を振る。

だが、強い瘴気を纏う霧の中では結界の光も弱まり、浄化の力が十分に発揮できない。


大森は斧槍で霧を切り裂こうとするが、返ってきたのは冷たい虚空の反撃。

斧の刃先が重力に引かれ、振り回されるような衝撃で後ろによろめく。


「くそ…効かねぇ!」


杉本は〈ライトヒーリング〉で大森の衰弱を補いながら〈フィジカルブースト〉を発動。

筋力を倍加し、霧を震わせて空間を確保しようとする。


澄江はその隙に詠唱を終え、〈ライトニングファースト〉を発動。

敏捷を十倍に高め、光の軌跡を描いて霧を切り払う。

彼女の舞うような動きが、霧を焚き払うかのように瘴気を消し去った。


霧が晴れた先に、二つの扉が現れる。

左の扉には「静穏の門」、青い結晶が微かに輝く。

右の扉には「深淵の門」、黒曜石の欠片が埋め込まれている。


「静穏の門は…おそらく安全な回廊だな。安定してマナが流れている」


杉本は探索者の目でマナ密度を調べる。青い結晶は罠の少ない“安全”区画を示していた。


「対して深淵の門は…全属性魔法を遮断するエリアに通じている。次元の制御装置がある可能性が高い。どちらも奥に空洞があるが……こっちの方が核心に近いな」


杉本の分析に、大森は迷い、澄江は黒曜石に杖先を近づけて呟く。


「安全に進むか、早期解決に希望を託すか……どちらも一長一短ですね」


三人は視線を交わす。

杉本が選ぶ扉は、誰もが予想していた。


──深淵の門を開く。

世界を創る力の根幹に迫るには、“深淵”の中核へ突き進むしかない。


扉を押し開けると、重苦しい空気が吹き出す。

床には闇の紋様が蠢き、壁面から黒い触手状の影が垂れ下がる。

まるで生き物のようにうねり、侵入者を喰らおうと待ち構えていた。


「このエリア……マナを直接奪う罠が仕掛けられている!」


杉本の警告に、大森が剣気を放つ。

触手を切り裂くが、刃先に強烈な瘴気が返り、刃が鈍って砕けかける。


杉本は〈フィジカルブースト〉を解除し、〈ライトヒーリング〉で体力を温存。

遠距離から〈清浄なる光の浄化ピュリフィケーション〉を詠唱する。

だが、霧は再生し、完全には消えない。


力押しで進もうとする杉本と大森。

だが、澄江は違った。


額の護符を揺らし、静かに詠唱を重ねる。

〈ライトヒーリング〉〈コンセントレーション〉〈フィジカルブースト〉――

自己強化を同時に発動し、身体能力を極限まで高める。


そして、高密度に輝く“多層結界”を展開。

五重に張られた結界が、深淵の瘴気を層ごとに剥がし落とす。


澄江が切り開いた深淵の先に、大理石の祭壇が姿を現す。

祭壇の前には、六柱の使途が待ち受けていた――

第2使途タウリオス、第4使途バルゴ、第6使途スコーピオ、第9使途ジェミナス、第10使途サジタリウス、そして第12使途パイシス。


「……外界の者ども、何故ここへ?」

バルゴが鞭のような瘴気を纏いながら問う。


「闇の神シイゴが呼び寄せたようだ。世界進化計画の進捗を確かめに来たのか?」

スコーピオは三叉槍を構える。


三人は間合いを詰め、混沌の紋様を正面から受ける意志を示す。

祭壇を守る使途たちの瞳が冷たく光る。


大森は盾を掲げ、杉本は杖を大地に突き立て、澄江は両手で祈りを捧げた。


「我らは真意を求めるだけだ。世界が壊れる前に、正しい答えを得させてくれ!」


杉本が叫び、深淵の祭壇を守護する使途たちと刃を交える。


大槍は竜巻のように荒れ狂い、小剣が舞い、杖丈も踊る。

混戦の中、罠を回避しながら三人は必死に戦うが、戦線の維持は困難を極めた。


斬撃と詠唱が飛び交う激戦の隙を突き、澄江アクエリス長瀬パイシスに接近し、問いかける。


「長瀬様……お戻りになっていますか?」


「しっ、話を合わせて。まずは戦闘を継続だ」


二人は周囲に聞こえないよう、他の使途との距離を保ちつつ、小声で会話を交わす。

澄江は戦闘を続けるふりをしながら、長瀬が何らかの魔法で操られていると考え、使役解除を試みる。


だがその瞬間、祭壇に張られていた“止めの結界”が起動。

床が震え、崩落が始まった。


──ダンジョンが崩れる!通路が崩れる!これは……崩落の罠か?


「引き返すぞ!」


大森は斧槍を構え、三人に退却を促す。

祭壇周辺の床が一気に崩れ、深い亀裂が裂けるように広がっていく。


広がる亀裂を背に、探索者スキルが警笛を鳴らす。

間に合わない!落ちる!……速度上昇の魔法を!……いや、俺だけ逃げ延びても意味がない!


杉本は勇気を振り絞り、最近発現した新魔法〈クリスタル・リニューアブル〉を発動。

大地に呼びかけ、砕けた床を再生させる光の塊を放つ。


だが、地を割く亀裂は止まらず、閃光と共に三人は別々の穴へと落下していった。


──突然の暗転。

転落の衝撃と共に視界が砕け散り、三者三様の闇へと落ちていく。

声も光も届かず、音の存在は分断され、虚空の底へと消えていった。

**次回、第12話「スラム世界~虚ろなる桃源郷~」**

崩落した暗闇の先に待つ過酷な余生と、運命に刻まれた再会の瞬間。

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