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第11話(中編) 闇属性の罠と使途の襲撃「暴走」

「どうだった? 長瀬はいたか?」


アーカム魔導学院で待っていた早乙女は、三人の姿を確認するとすぐに部屋へ引き返し、手招きして急かす。

突然の出発だったが、杉本たちの話を聞き、不穏な気配を感じていた礼拝堂跡が怪しいと睨んで彼らを送り出した。

とはいえ、正確に長瀬が捕らえられているという情報を掴んでいたわけではなかった。


「あぁ、長瀬はいたよ。君は彼が捕らわれていることを知っていたんだな。ありがとう。君の情報で――」


杉本が礼を述べようとすると、早乙女はそれを遮り、作戦の結果を早く聞きたいと焦った様子で問いかける。


「救出は成功です。ただ……あの地には、そう簡単に近づかない方がいいでしょう。

詳細は省きますが、触れてはならない世界の秘密が、あの場所には封じられています」


澄江は、次元倉庫の存在をそのまま伝えてよいものか迷いながらも、核心だけを慎重に語った。


「そうか……それで? 長瀬はどうした?」


「別の計画に向かうとだけ。それで、早乙女様に今後どうするか相談すると良いと」


早乙女と澄江が会話を続ける中、杉本は蚊帳の外で不満げな表情を浮かべていた。


「長瀬はしばらく姿を隠すそうだ……。隠れるなんてまどろっこしいことはせず、さっさと魂を捕えている次元倉庫を破壊しちまえばいいのにな」


捕らわれた人々が眠る次元倉庫。

杉本は今すぐにでも救出に向かいたいと、怒気を込めて言い放つ。


「こいつは……また力任せに突っ込もうとしてるのか? マジで脳筋野郎だな。ダメだね、不確定要素が多すぎる」


「な……なんだと? 救うべき人たちがそこにいるとわかっているのに、手ぐすね引いて見てろっていうのか?」


「杉本様!……いけない、落ち着いて! 大森! 杉本様を止めて!!」


早乙女に一蹴されて癇癪を起こしかけた杉本を、澄江と大森が慌てて制止する。

それでも何か言いたげな杉本には、大きくバッテンの印が付いた静音マスクが装着された。

話が進まないと困るため、発言を禁じられたのだ。

そして、反省中ですと言わんばかりに正座させられる。


騒ぎを起こした杉本を静音マスクで封じることで、ようやく早乙女との会話が再開された。

中途半端に杉本が話してしまったため、澄江は次元倉庫や、そこに閉じ込められた多くの魂――拉致された地球人の本体がコールドスリープで眠らされていることも含めて、今後どうするかを早乙女に相談する。


「なるほどね。

それで……君たちはこの獣の言うがままに、その次元倉庫の制御装置? みたいなものを止めに行きたい、と」


早乙女は後ろ向きに親指でピッと杉本を指しながら話す。

背後では杉本が、グルルルル……と唸るように早乙女を睨みつけていた。

その様子を見て、大森が二人の間に立ち、視界を遮るように仲介する。


「できれば……」


「無謀だな。それに、それがどこにあるのか、場所すら見当がつかないんじゃないのか?」


「いえ、聖なる島の聖堂奥……この世界に散らばるダンジョンの管理機構がある場所があります。恐らくは、そこに――」


澄江が言いかけたその瞬間、今までなんとか沈黙を守っていた杉本が、バッテンマスクを外して立ち上がる。

しまった!と澄江が思う間もなく、杉本の行動は速かった。


「よし、わかった! そこに行って止めよう! 澄江、大森、行こう!!」


杉本は一瞬の隙を突き、目を輝かせながら澄江と大森の手を引いて、アーカム魔導学院の一室から駆け出した。

絶句して言葉を詰まらせていた早乙女が慌てて制止しようとするが、判断が一瞬遅れたのが致命的だった。

その手は虚空を掴むだけで、もはや届かない。


「ま、待て! 杉本!……お前、無計画にも程があるだろ!!」


止める言葉も手も、もはや届かない。

杉本は勢いよく学室の扉を開け、意気揚々と飛び出していった。


「あ、あ……バカが!……なんであいつはあんなに猪突猛進なんだ」


早乙女は、勢いだけで突っ走る杉本の行動に呆れながらも、

遠ざかる彼らの背中を見送るしかなかった。


「バカが……制御装置を止めても、その先どうすんだっての。本体を救出した後はどうすんだ。帰る手立てもねぇのに、このままこの世界で朽ちろってか」


早乙女のぼやきは止まらない。

独り言のように呟きながら、次々と問題点を挙げていく。


「はぁぁ……まったく。

救出したとしても、すべての人が解放を望むとは限らんだろ。いや、恐らく救出は失敗するな。とすると……」


すでに姿が見えなくなった杉本たちの背中を目で追いながら、早乙女は作戦の修正案を練り始めた。

だが、その声はもう、彼らには届かないのであった。



---



「ここまで来れば、次元倉庫を止める装置があるはずだ」


杉本は杖を掲げ、探索者の“視界”で広間の構造を俯瞰する。

床下にはマナの回路が縦横に走り、中央部で交差していた。


アーカム魔導学院を出て聖堂方面へ向かう途中、ミラノーラ外構へと転進。

その先の林の中、岩場に隠された人工ダンジョンの入り口が姿を現す。


そこは十二使途が設計した実験場であり、澄江がミラノーラと『聖なる島』を繋ぐ転移陣を設置した場所でもある。

杉本たちはその転移陣を使ってミラノーラへ来たが、今はその道を逆行し、『聖なる島』へと戻っていた。


神殿の奥には隠された通路があり、その一室にダンジョン制御室が存在するという。

さらにその奥には、十二使途でさえ用途を知らされていない機密区画があると澄江は語る。

そこにこそ、次元倉庫を制御する装置がある可能性が高い。


転移陣から地下大聖堂へ戻り、建設中の神殿へ。

神殿奥の隠された通路を進む途中、澄江は祈りの呪文を小声で唱え、足元に光の結界を張った。


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