第2話 逃亡
あの後決死の覚悟で逃げ出した。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっあいつが新しいマネージャーだって?調教…?ふざけんなよっ!?絶対に俺は認めないっ
御影は生まれて初めて他人に恐怖を感じた。昔から人に困ることは無かったため、こんなにも逃げ出したい…しかも誰よりも立場が上だと信じている御影にとってこの逃げはこれからの人生を大きく変えるものとなる。
バカにしていたマネージャーが普通じゃないことを知り行動は早かった、事務所の社長と新垣を呼び出したのだ。2人を待っている間も御影は
「…許さねぇ…この俺が」
などとずっと一人で呟いていた
数時間、いやっ本当は数分なのだが御影にとってみればもう軽く何時間も経過したように感じた一刻も早くこの新垣を辞めさせなければ自分に危害を加わすと着いてすぐに座る間も開けず話す
「御影…何を言ってるんだ?気に入らないからと言ってまたそんなことを……」
社長は御影の話を信じることもしない。それもそのはず
「社長、私は平気ですから…御影さんの気に触る事をしてしまったようならば…謝罪をさせていただけないでしょうか?」
「何を言ってるんですか!御影は常にこういうことを言う子でして…御影!!こんないい方をはめるような真似はやめなさい」
新垣もまた御影と同じように外面は良いという面倒くさい特徴を持ってるため本当の姿を気づかれることもそうそう無い。
社長の態度を見て更に御影の機嫌は悪くなった。俺より後に入ってきたこいつを信じるのかよ!?あーもういいわ…俺からこの事務所やめてやろうか…など何時ものように違うことを考え始める
しかしよく良く考えれば俺を引き取ってくれる事務所は他にあるのか…?
世間で勝手に神扱いをされ超一流企業としか契約を許されない…俺詰んだ?平和に過ごすためには…
「とにかくっ俺が平和に過ごすにはこいつと契約解除しろ!!それか俺のマネージャーを変えろ!!」
「…はぁ何が平和だ事務所の平和を脅かしてるのは常に御影だろ?新垣くんはそんな御影を知ってなお着いてくれるんだ感謝しなさい
と言い社長は半呆れ気味で俺と新垣だけ残し出ていった
「…ふぅ社長さんには随分と信じられていないんですね?」
「…何が言いたい?」
「いえっ御影くんの日頃の行いのせいかな…と」
「チッ…」
ムカつくムカつく…なんなんだよこいつっ。自分の思い通りにならないことがこんなにも不愉快で、怒りを何処に逃がせばいいか分からなくなる
「用は済んだ…早くここから去れよ…明日までには事務所から居なくなれ」
余裕な顔で俺に向かい言葉を投げてくる新垣にまだ諦めてないぞと伝えるように出ていくことを命令する
「…御影くん…聞いてましたか?…俺は必要とされてんの…けどまぁ調教のかいがある…か」
「へ…?」
前感じた嫌なオーラだけじゃない口調も変わり社長や事務所での新垣 夜では完全になくなる。御影の前だけの姿
「馬鹿なお前にもわかるように教えてやるよ…どっちが信頼されてるかなぁ?」
「ひっ」
まだだ、またあの恐怖だ体が全力で拒否反応を起こしている。するりと身体は引き寄せられ壁に押し付けられる力は新垣の方が強すぎて押し返すことも叶わない、色んな感情で生理的な涙が出てくる
「やめろよっ気持ち悪いっ!!」
幸いにも空いていた足で新垣を蹴り力が緩んだ隙に頭を思いっきり殴った
「いっつ…」
「お前マジでキショいな!さっさと辞めろよ…俺にこんなことしてただで済むなんて思うなよっ」
そう言うと新垣はスっと目線を時計にやり衝撃で落ちた黒縁のメガネの汚れを服の裾で拭いかけると
「さすが、御影くんですね!……また仕事の時」
バタンと音をたて閉まった扉に背を向け座り込む。この時ばかりは何時ものように強気でいることが出来ない。恐怖と絶望で埋め尽くされた心を落ち着かせている時後ろの扉をノックする音が聞こえた。ビクッと今まで無いぐらいに大きく身体が揺れる。
誰だ…社長か事務所のやつか?新垣以外の奴なら誰でも良い、誰かっ俺は
「御影…?いるんでしょ?」
「あっ……ゆっ…み」
安心する声だ…。唯一俺の気持ちを理解し支えてくれる…そんな暖かい声で意識を離した