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ー20XX年 日本ー
SNSを使った1人のつぶやきから始まる。
SNS(人類滅亡するらしいよ…)
数日後、とある国の人類が死滅したという内容のニュースがテレビやスマホに絶えず流れている。
この話の主人公は、冴えない会社員、佐藤 隼人22歳。
町工場で仕事をする隼人は特別に仕事ができるわけでもないどこにでも居そうな平社員。
毎日、只々1日のノルマをこなし、遅い時間に帰宅し、朝7時には出社する。
取り立てて特技がある訳でもなく、趣味といえるものはSNSで知らない誰かの投稿の閲覧をしイイネを付ける。
そんな生活を繰り返す独身の男性である。
仕事が終わり、帰宅した隼人はベッドの上でSNSに流れてくる人類滅亡の記事を見ている。
ルーシィ「なっ?言った通りだろう?」
ルーシィは窓の底に座り月明かりに照らされながら隼人に言った。
隼人は黙って頷いた。
時は昨晩に遡る。
隼人は仕事が終わり、家までの帰路に着いた。
途中の売地には夜間帯にも関わらず人影がある。
隼人(こんな時間に…。)
時計を見ると0時49分。
街灯に照らされた、その姿は1人の女性だった。
女性は隼人に気が付くと話しかけて来た。
ルーシィ「そこにいるのは…人間か…?」
女性の髪は白く黒いボロボロのワンピースの様な服を着ている。話し方がぎこちなく日本人ではないように思えた。
隼人(いくら日本人では無いといえ、初対面で人間かって聞くか?普通…)
隼人は心の中でそう思いながらも質問に応えた。
隼人「えぇ、そうですけど…どうかなさいました?」
ルーシィ「そうか…人間であったか、よかった…」
隼人(なにを言ってるんだこの人は…早くこの場を立ち去った方が良さそうだな…)
隼人「あの…急いでいるんで…」
隼人は慌てて立ち去ろうとするも、女性に呼び止められる。
ルーシィ「少し待て…近い将来、神の手によって人類は滅亡するぞ。」
隼人(おいおいヤバいって…完全にあっち系の人だ…勧誘とかされないうちに逃げなきゃ…)
隼人「すみません…ホント時間ないんで…」
隼人は女性を置いて立ち去った。
家までの残りの道を走って帰るも、先ほどの怪しい女性のことが頭から離れない。
隼人(よかった、アレ以上引き止められなくて…それにしてもこんな時間に…怖すぎだろ…)
隼人が住むのは安アパートの一室。
田舎から上京してきた隼人にはそれでも高い家賃であったが、会社に社宅はなく、このアパートに住んでいる。
帰宅するまでの間例の女性が追いかけてこないか何度も振り返り、確認をしていたが、どうやら深追いはされなかったようだ。
いつものようにシャワーを浴び、着替えをし、まとめ買いしていたカップ麺にお湯を注ぐ隼人。
隼人(まったく、1日の終わりに嫌なもの見ちゃったな…)
カーテンが揺れる。
まだ蒸し暑い季節の為、窓を開けて、網戸にしていた。
隼人(さすがに夜風は冷えるから締めるとするか…。)
隼人はベランダ側の窓を締めようと1度カーテンを開けると、そこには先ほどの女性が立っていた。
隼人は驚き声にならない悲鳴をあげた。
ルーシィ「逃げることないじゃないか…」
隼人「ど…どうして…」
ルーシィ「そんな事はどうでもいい…とりあえず入るぞ。」
女性はそう言うと、隼人の部屋へと入ってきた。
照明の下で見ると、女性の顔立ちが人間離れするほど端正な顔立ちである事がわかった。
隼人(まるで人形みたいだ…)
女性は靴を履いていない様子だが部屋の中に足跡は付かない。
ルーシィ「それで…さっきの話の続きだが…」
隼人(まさか家に押し掛けてきてまで勧誘なんて…寝る時間なくなるしさっさと断って帰ってもらおう…)
ルーシィ「オマエ…名は…?」
隼人「オマエって…押しかけて来といてそれはないだろ!」
隼人は少し強気に出てみるが、女性は一切怯まない。
ルーシィ「…名は?」
隼人「隼人…佐藤 隼人…。そっちは?」
ルーシィ「ル…ルーシィだ!」
隼人「ルーシィ…?やっぱり海外の人か?」
ルーシィ「海外…?」
隼人「えっと…日本の人じゃないってこと。」
ルーシィ「あぁ…まぁそう言う事だな…」
なぜだかルーシィの回答は曖昧だが、おそらくあまり日本語が上手ではないからであろう。
ルーシィ「人間…どうやら人類は滅亡させられることに決まったらしい…」
隼人(またさっきの話か…)
隼人「決まったらしいって…誰が?いつ?」
ルーシィ「神が…昨日決めた...」
隼人「今更、そんな予言誰も信じないって!1999年のノストラダムスの予言だって外れたじゃないか!オレは予言とか迷信は信じないの!ちゃんと自分の目で見ないとね」
ルーシィ「神はいい加減なのだ…本来であれば1999年に、人類は滅亡するハズだった…しかしちょうどその頃機嫌が良かった為に延期となっただけの事。それが昨日思い出したかの様に言い出したらしい…」
隼人「昨日突然って言われてもな…信憑性もないしな…それになんで地球滅亡じゃなくて、人類だけなんだ?」
ルーシィ「人類は争い、奪い合い、汚染する、この地球に住むものにとって平等に与えたれたものを独占し、枯れさせる、まさに神にとって人類は悪そのものという事だ。」
隼人「そんな…全ての人類がそうであるとは限らないのに…」
ルーシィ「神にとって、誰がよくて誰が悪いなんてものは無い、そもそも魂の塊でしかないから判別なんてつきはしない」
隼人「だからってそんな…神を信じているものは救われるんじゃないのか…」
ルーシィ「そんな事言っているのは人類だけだな、神は気まぐれなんだよ。」
隼人「ルーシィ…キミはなんでそんな事を知っているんだ…?」
ルーシィ「まぁ…私は神の使いだとでも思ってくれていいさ。」
隼人「神の使いなのに…オレにそんな事教えて大丈夫なのか…?」
ルーシィ「質問が多すぎる…教えたところで人類は何も出来ずに滅んでいくだけだ。」
ルーシィの話は信じられない事ばかりだったが、嘘をついているようにも見えず、隼人は困惑した。
ルーシィ「明日にでも確かめるといい…どこかの人類が死滅しているはずだから…」
そう言うとルーシィはベランダから出て行った。