098「反響/王族・貴族サイド」
——ヴィバルディア・キリシュタイン侯爵家
「⋯⋯ヴィバルディア様」
「⋯⋯『影』か。どうした?」
「はい。実はある情報なのですが⋯⋯ヴィバルディア様のお耳に入れておいたほうがいいかと思いましてこちに参った次第でございます」
「ほう?⋯⋯聞こう」
「実は、少し前⋯⋯1週間ほど前あたりからですが⋯⋯『奇妙な魔道具』について、まことしやかな話が城下で囁かれておりまして⋯⋯」
「奇妙な魔道具?」
「はい。噂では『治癒の魔道具』とのことで⋯⋯」
「『治癒の魔道具』? そんなの別に珍しくもなんともないだろう?」
「ええ。ただし、奇妙なのが、その魔道具⋯⋯生活魔法で発動する魔道具なのだそうでして⋯⋯」
「何? 生活魔法で⋯⋯発動?」
「⋯⋯はい」
普段、滅多なことでは驚かないヴィバルディアだが『影』の言葉に少し動揺した様子を見せた。
「何をバカなことを⋯⋯生活魔法の魔力で発動する『治癒の魔道具』などあり得んだろう?」
「ええ、ごもっともです。なので、さすがにデマ情報だと思われますが一応ご報告が必要かと思いましてお話しした次第であります」
「ふむ。まーあり得ない話ではありますが、一応今後その件で何かあったらまた報告してください」
「わかりました。では⋯⋯」
フッと『影』の気配が消える。
「生活魔法で発動する『治癒の魔道具』⋯⋯ですか。いや、さすがに、それはいくらなんでも⋯⋯もはやあの方による絶対なる六大魔法の支配構造は完成したのですから⋯⋯。今更『生活魔法の復権』などあるはずがありません。あり得ないはずです⋯⋯」
そう言いながら、顔を歪め考えるヴィバルディア。
「⋯⋯一度、『オプト神聖国』へ行って教皇猊下にご相談しにいきますか」
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——セルティア魔法学園/学園長室
「さて、最初の魔道具⋯⋯『生活魔法版『治癒』の魔道具』の販売だが状況はどうなりましたか?」
学園長ザナーク・レンフロがソファに座る生徒に生活魔法クラブから販売された魔道具の話を尋ねる。
「はい。販売から1週間ほど経過しましたが例の魔道具は大ヒットしています」
そう答えるのは、セルティア王国第二王子レオンハート・セルティア。
「レオン、今回我々は宣戦布告という意味合いで大々的に魔道具販売をする予定だったが、実際には表に出ないような販売をしていると聞いたが、それはどうしてなんだ?」
「はい。そもそもこれは『口コミ』を利用した販売方法だと、ラルフが提案してきたものでして⋯⋯」
「ラルフ君が?」
「はい。彼が言うには『あえて隠すように売るほうが、最終的にはプラスになるのが大きい』と言ってましたね」
「ほう? 最終的には⋯⋯か。一体、どんな未来を描いているのだ、ラルフ君は?」
「さあ⋯⋯。ですが、本人も『そこまで根拠のあるやり方ではないのでうまくいかなければすぐにやめて構わないです』と言ってました」
「ふむ⋯⋯なるほど。まあ、たしかに別に失敗したからと言って困ることはないからな。そもそも、あの魔道具は魔法の内容的にも効果的にも値段的にも絶対に売れるものだろうからな」
「はい、それは間違いないでしょう。ただ⋯⋯」
そう言って、レオンハートが一拍、間を置く。
「⋯⋯既得権益貴族か?」
「ええ。そして、その中でも特に最重要人物が⋯⋯」
「ヴィバルディア・キリシュタイン⋯⋯か」
「はい」
二人が『最重要人物』として同じ名前を出す。
「もちろん、フィリップ陛下や王太子のジェリコ、宰相のヴェントレー・シャニマスも重要だが、その中でも特に警戒するのは|ヴィバルディア・キリシュタイン《この男》だろうな」
「ええ。なんせ、彼はセルティア王国の既得権益貴族を束ねる男ですし、もっと言えば彼は⋯⋯」
「オプト神聖国とのつながり⋯⋯か」
「はい。そして、今回生活魔法の話が彼の耳に入れば、間違いなくオプト神聖国に行き、教皇猊下へ報告に行くでしょう。一応現在はまだそのような行動はありませんが⋯⋯」
「う〜む⋯⋯オプト神聖国か。しかし、生活魔法の魔道具が世に知られ、ヴィバルディアらと敵対することになれば、オプト神聖国やオプト神教ともぶつかるのは必至。そして、それは『想定の範囲内』ではあるがな」
「⋯⋯そこで話なんですが」
「ん? なんだ、突然?」
「実は、その先にあるだろう敵とぶつかる前に⋯⋯ということでラルフ君から「いろいろと備える意味も込めて、魔道具を量産したいと思っていますがいかがですか?』と言ってきました」
「何っ?! ラルフ君がそんなことを? 意外だな⋯⋯」
「そうですね、ただ、私としては実は彼は見た目おとなしい雰囲気を出していますが、しかし、実際はその外見と相反して戦略的で行動的な感じを⋯⋯最近は強く感じております」
「ほう? つまりはラルフ君は本性を隠していると?」
「さあ⋯⋯そこまでは。ただ、見た目通りの内面ではない気がしますね。とはいえ、それは別に警戒するわけではなく、むしろ、頼もしさを感じています」
「う〜む、レオンがそこまで評価するとは⋯⋯」
「当然ですよ。少なくとも、あの彼のオリジナル魔法⋯⋯『ラルフ式生活魔法』だけ取っても彼は尊敬に値する者と思います」
「⋯⋯そうだな」
そうして、二人がラルフの才能の規格外さを改めて思い出すと、一度大きなため息を吐いた。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo




