097「反響/獣人・亜人サイド」
——セルティア魔法学園 中庭の一角
「おい、聞いたか?」
「おう、例のアレだろ?」
「⋯⋯ああ。どうやら、あの噂は本当らしい」
「「マジかっ!?」」
現在、そこには騎士科と魔法自由科に所属する2年生で、獣人・エルフ・ドワーフの3人の生徒がたむろっていた。
「しかも、話によると、どうやらその噂の魔道具⋯⋯『生活魔法版『治癒』の魔道具』はこのセルティア魔法学園の生活魔法クラブが製作しているって話だ」
「ええっ!? 生活魔法クラブって、あのレイカ先輩がいるところか!」
「ああ」
「てことは、レイカ先輩がその魔道具を製作したってこと?」
「さあ、そこまではわからないが⋯⋯ただ、生活魔法クラブで製作しているということは確かだ」
「マジかよ⋯⋯。一生徒があんな魔道具なんて作れるのかよ⋯⋯」
「さあな」
「でも、それってよー、大丈夫なのか? 貴族とかにバレでもしたら⋯⋯」
「ああ、それなんだが⋯⋯どうやらまだこの国の王族や貴族にはこの魔道具の情報は伝わっていないらしいぞ」
「え?」
「現在、この『生活魔法版『治癒』の魔道具』は冒険者がメインで購入しているらしくてな。で、その冒険者たちと冒険者ギルドが結束して、この魔道具の情報を王族・貴族に漏れないよう厳重に管理しているそうだ」
「へ〜。え? でも、それじゃあ、お前この話、俺たちに話して大丈夫なのか?」
「いや、俺たちだって一応冒険者じゃねーか!⋯⋯週末だけだけど」
「あ、そっか」
「まー、もちろんお前らには後から『情報を漏らさない』っていう宣誓書を書いてもらうけどな。でも、俺たち獣人の冒険者にとっちゃ、『治癒』なんて回復魔法の魔道具は欲しいじゃねーか」
「ああ。でも高いからな〜」
「これまではな。でも、この『生活魔法版『治癒』の魔道具』は『魔力あり』のものでも金貨5枚で買えるんだぜ」
「「はぁぁぁっ?! き、金貨5枚ぃぃぃ!!!!」」
「しっ! バカ、声でけーよ!!」
「す、すまねぇ」
「悪ぃ⋯⋯」
********************
「ありがとうございました〜、またのお越しを〜」
昨日、学園の中庭で喋っていた3人は『ラミング商会』の奥にある『生活魔法クラブ魔道具販売所』を訪れ、魔道具を購入した。
「ほ、本当に売ってた⋯⋯」
「あ、ああ。しかも『魔力あり』で金貨5枚だなんて⋯⋯」
「破格過ぎだろ! いや、すごく助かるけど!」
「よし、じゃあ、早速明日の週末は魔物を狩りに行くぞ!」
「おお! 治癒の魔道具があればいつもよりも長く狩りができそうだな!」
「おうよ! 実際、他の冒険者たちも前に比べてだいぶ稼ぎがよくなったらしいからな!」
「うぉぉ! やるぜぇぇ!!!!」
そうして、3人はギルドで魔物狩りのクエストを手にして森へと入っていった。
「『治癒』⋯⋯!」
パァァァァ!
「うおっ!? す、すげえ! 傷がこんなにきれいに消えるなんて⋯⋯!?」
何回かの魔物との戦闘の後、負傷した一人に早速魔道具を使ってみると、彼らが想像していた以上の効果だったようで3人はその効果に驚いていた。
「お、おい⋯⋯これってさぁ、普段売っている『光魔法の治癒の魔道具』よりも効果が高いんじゃないか?」
「ま、まさかぁ⋯⋯そんなわけないだろ?!」
「いや、でも俺、前に『光魔法の治癒の魔道具』を使った冒険者を見たことあるけど、その時、傷跡は多少残っていたぞ?」
「マジ⋯⋯かよ」
「ああ。こんなに傷がはっきりと消えることはなかった」
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
そうして、3人が言葉を失い、各々が考えを巡らす。
「なるほど。そりゃ、冒険者たちが王族・貴族に情報を隠しているのも頷けるな」
「あ、ああ。こりゃ、とんでもない代物だぜ」
「でもよー、正直、王族・貴族に情報が入るのは時間の問題だと思うぜ? そうなると、下手したら販売禁止になるんじゃねーか?」
「まーな。だから、人によっては、すでにこの魔道具を買い漁っている連中もいるらしいぜ?」
「そりゃ、そうだろうな」
「まーそんなのできる奴なんて高ランクの冒険者くらいだろ?」
「ああ。低ランクの俺らじゃ買えても3つくらいだからな」
「あーあ、世知辛いね〜」
「でも⋯⋯それでも⋯⋯この魔道具の価値は計り知れーよな。なんせ、六大魔法じゃなく生活魔法で使えるんだから」
「まったくだ。こんな魔道具⋯⋯平民や獣人・亜人のためにあるようなもんだろ?」
「だな。実際、この魔道具を製作した奴は『普段『治癒の魔道具』が買えない平民や獣人・亜人こそ使って欲しい』って言ってるみたいだからよ⋯⋯」
「⋯⋯マジかよ。神じゃねーか」
「まったくだ」
その後、このセルティア魔法学園の生徒である獣人3人組の冒険者パーティーは、この魔道具のおかげで短期間で冒険者ランクを1つ上げることができたとか⋯⋯。
こうして、ラルフたち『生活魔法クラブ』が製作した『生活魔法版『治癒』の魔道具』は王族・貴族の預かり知らぬところで爆発的大ヒットを記録したのであった。
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