095「反響/冒険者サイド(2)」
「⋯⋯ここだ」
「は? こ、ここぉ!?」
「嘘つけ!!」
「本当だ」
「い、いや、だってお前、ここって⋯⋯」
そう言って、大柄の男が店の入口の看板を指差す。
『ラミング商会』
「お、お前⋯⋯ラミング商会って王都でも1、2を争う大商会の一つだぞ!? こんなところ、俺たち低ランク冒険者が入れるわけねーじゃねーか!!」
「おい、本当にここで合ってるのかよ!?」
「あ、ああ。あの若造ははっきりと『ラミング商会』と言っていた。ただ⋯⋯店の中には置いていないらしい」
「「え? どゆこと?」」
「あの入口にゴツいガードマンが二人いるだろ?」
「「ああ」」
「あのガードマンに『あの魔道具が欲しい』と言うと合言葉を聞かれるらしい。そして、その合言葉が合っていれば、その『魔道具を買うエリア』へ通してくれるんだそうだ」
「合言葉ぁ〜?」
「おいおい⋯⋯そんなことあるかぁ〜?」
と、二人が半ばバカにした様子でそんな返事をすると、
「いいじゃねーか、別に。もし、それで騙されていたとしても門前払い喰らうだけだしよ。だから、いいんだよ。騙されてたとしても」
「まーそうだな。話のネタにはなるか」
「そうだな。よーし、それじゃあ当たって砕けますかねぇ」
そうして、小柄の男は二人を連れて、店の入り口にいる門番の一人に尋ねた。
「なんだ、お前ら?」
「あ、あの⋯⋯えーと⋯⋯」
「なんだ? 冷やかしか? あまり舐めたマネすると⋯⋯」
「あ⋯⋯『あの魔道具が欲しい』っ!!」
「「っ!!!!」」
小柄の男がそう叫ぶと二人の門番が顔を見合わせ、
「⋯⋯ついてこい」
そう言って、話しかけた門番が3人を正面玄関ではなく、その横にある細い業務員用通路から奥へと案内された。そして⋯⋯、
「ここだ」
「「「っ!!!!」」」
門番に案内されたそこには、
「生活魔法クラブ魔道具販売所」
と書かれた立派な看板が掲げられた建物がドーンと姿を現した。
********************
「「「せ、生活魔法⋯⋯クラブぅぅ〜???」」」
そんな聞いたこともない看板を観て、訝しげにしていたが「ここまで来たんだから⋯⋯入るぞ!」と意を決して建物に恐る恐る入っていった。
「いらっしゃいませ〜」
中に入ると、受付嬢が一人いて俺たちに挨拶をした。
その後、広い店内を見渡すと⋯⋯というか、見渡すほどでもなかった。というのも、建物は立派で店内も広いのだがこれだけの広さに関わらず、商品は目の前の縦1メートル、横2メートルほどの机に乗せてある『小さい杖の魔道具』が数個置かれているだけだった。
そんな、ギャップというか、違和感というか、何とも言えない雰囲気に俺たちは軽く圧倒されていたが、そんな時、受付嬢が声をかけてきた。
「すみません、お客様。現在まだこちらにある魔道具しか用意してなくて⋯⋯。ただ予定としては、今後、魔道具を順次製作・販売していきますので、商品もさらに増えてまいります。ですので、今後ともご贔屓にしていただければと思います」
「そ、そうなんですね⋯⋯わかりました」
俺たちみたいな底辺冒険者に対して、とても丁寧に説明をしてくれるこの受付嬢に俺たちはすごく感心した。⋯⋯ていうか、惚れた!
正直、この子をナンパしようかとも思ったが、しかし、今はそれよりも、あの『例の魔道具』の話を聞かなければ⋯⋯。ということで話を切り出そうとした。がしかし、
「あ、あの⋯⋯ここには⋯⋯その⋯⋯」
がしかしだ! ここで俺は躊躇した。
というのも、あまりに突拍子も無い魔道具の話なので、もし、あの話が嘘だとしたら目の前の受付嬢に変な目で見られてしまう⋯⋯そう思い、つい魔道具の話に躊躇していると、
「はい。ここに置いてある魔道具が『生活魔法版『治癒』の魔道具』でございます」
「ええっ!? ほ、本当に、この魔道具って⋯⋯生活魔法で発動する『治癒』の魔道具なんですか!!」
「はい。当社オリジナルの魔道具でございます」
「「「本当にあったぁぁぁぁぁ!!!!」」」
********************
「で、でも、本当なんですか? 本当に、その⋯⋯生活魔法で⋯⋯」
「はい。間違いございません。ということで、現在お試しキャンペーンをやっております」
「「「お試しキャンペーン?」」」
「はい。今なら実際にこの魔道具を試すことができます」
「マジっすかっ!?」
「はい。⋯⋯お試ししてみます?」
こいつは願ってもないチャンスだ!
「ぜひ、お願いします!」
「わかりました。では、どなたかおケガをされている方はいますか?」
「あ、じゃあ、自分が⋯⋯」
と中肉中背の優男が手を挙げる。
「この右腕の爪傷なんですが⋯⋯」
見ると、止血はされているもののひどいケガであることはわかった。
「おい! お前何やってるんだ! いくら何でも、こんな深い傷を治すのは無理⋯⋯」
「はい、わかりました」
パァァァァ!
「はい、終わりました」
「え⋯⋯?」
「終わっ⋯⋯た?」
小柄男と大柄男が受付嬢の言葉にポカーンとしていると、
「いかがですか?」
「な、治ってる⋯⋯! き、傷が⋯⋯! あの爪傷が⋯⋯完全にっ!?」
「「ええっ!?」」
二人が見ると、さっきまであった優男の深めの爪傷が完全に消えていた。
「そうですか。よかったです」
と、受付嬢はニコリとさも当たり前のように驚くことなく淡々としたトーンで返事をする。
「す、すごい⋯⋯本物だっ!!」
「あ、あの! 今度は俺がその杖でこいつに試してもいいですか?!」
「はい、どうぞ」
そう言って、小柄の男が受付嬢から杖を受け取ると、大柄の男の額にある『古傷』にかけてみた。
パァァァァ!
「うぉ!? ふ、古傷まで⋯⋯⋯⋯治った!!」
「何っ!? 本当か!」
そう言って、大柄の男が鏡で自分の額を確認する。
「な、治ってる⋯⋯! ま、まさか⋯⋯古傷まで⋯⋯」
「お、俺は、生活魔法しか使えない。そんな俺が⋯⋯この杖を使ってこいつの傷を治せたってことは⋯⋯本物だ。本当に⋯⋯生活魔法の魔力で『治癒』が使える魔道具だ!」
3人が皆、目の前のこれまでの常識ではあり得ない現象に震えていたが、しかし、そんな3人の心境を特に気にもせず、淡々と受付嬢が話を始める。
「あ、ちなみに、この魔道具は『魔力入り』の魔道具なので金貨5枚と少々お高いですが⋯⋯こちらの『魔力なし』のほうでしたら金貨3枚でご購入が可能⋯⋯」
「「「き、ききき、金貨5枚ぃぃぃ〜〜っ!!!!」」」
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo




