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生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜  作者: mitsuzo
第三章<セルティア魔法学園/生活魔法クラブ編>

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094「反響/冒険者サイド(1)」



——セルティア王国王都冒険者ギルド


 時刻は夕方。森で魔物を狩ってきた冒険者(荒くれ者)たちが狩りの疲れを癒すべく、ギルド内に併設されている食事処兼酒場でビールによく似た『エール』をごくごく美味そうに喉に流し込んでいた。


「んぐんぐ⋯⋯ぷはー! 最っ高だなっ!!」

「この一杯のために生きてるっ!!」

「おうよっ!!」


 ワイワイざわざわと各テーブルで冒険者は思い思いに飲み食い語っていた。そんな中、あるテーブルでこの中では珍しく神妙な顔をした冒険者3人が声を潜めて話をしていた。


「な、なぁ⋯⋯お前らこの話(・・・)知っているか?」


 3人の中で一番小柄な男がそんなことを言うと、


「なんだよ、勿体つけんなよ!」


 と、図体が2メートル近い男が大声を上げて小柄な男に言いよる。


「何よ、お得情報か?」


 そして、この中では中肉中背の優男が興味深げに問いかける。


「ま、まー、お得というか、本当だったらすげえって話だ」

「「何?」」


 そう言うと、この話を振った小柄な男が一度深呼吸して『ある魔道具』の話を切り出した。


「聞いて驚くなよ? 実は王都のどこかの商会で『治癒(キュア)の魔道具』を売っているらしい」

「んん? それって、光魔法の『治癒(キュア)』のことを言ってんのか?」

「何だよ! そんな別に珍しくも何ともねえじゃねーか! まー高すぎて買えないけど⋯⋯」


 と、二人が「なーんだ」と期待を裏切られたようなリアクションをしたが、小柄の男の次のセリフに二人が驚きの表情を見せる。


「⋯⋯今、俺が話した『治癒(キュア)の魔道具』ってのはな⋯⋯『生活魔法の魔力で動く魔道具』の話だ」

「は、はぁぁ?! 生活魔法で動く『治癒(キュア)の魔道具』だとぉぉ!!」

「いや、お前何言ってんだよ!?『治癒(キュア)』は六大魔法の光魔法だぞ? 何で生活魔法の魔力で発動できるんだよ!」

「ああ、まったくお前の言う通りだ。でもよ⋯⋯実際にその魔道具は生活魔法の魔力で発動する代物なんだよ」

「はっはっは。お前⋯⋯『掴まされてる』ぞ?」

「何?」


 と、大柄の男が『掴まされてる=騙されている』と揶揄する。


「そうだよ。そんな非常識な魔道具あるわけねーだろ! 仮にだ。仮に、もし、そんな生活魔法の魔力で動く『治癒(キュア)の魔道具』があったとしたら、平民とか亜人とかの『生活魔法士』が使えるってことなんだぞ?」

「そうそう。そうなったら『治癒(キュア)の魔道具』を独占販売しているオプト神教が黙っちゃいないっての!」

「そうそう!」


 二人は、この話を出した男にもっともな意見を言う。しかし、


「⋯⋯実はな、俺1回使ったことがあるんだよ、それ」

「へ?」

「何?」

「まーでも、俺が買ったわけじゃないぞ。森で魔物に不意打ちで襲われてケガをしたときなんだけどよ⋯⋯。その時たまたま近くにいた若い奴らに助けられてよ⋯⋯」

「若者?」

「ああ。二人組だ。ありゃ、たぶん魔法学園の学生かもな」

「それで?」

「で、その時、そいつらが持っていた魔道具で治してもらったんだ」

「へ〜。学生が⋯⋯」

「ああ。そんで俺はそいつらが持っている魔道具を俺も欲しいって話をしたら⋯⋯」

「「したら?」」

「自分たちから話を聞いたってことを黙ってくれるんなら、この魔道具を売っている店を教えてやる⋯⋯って行ってきてよ⋯⋯!」

「「それで、それで!」」

「⋯⋯話はこれで終わりだ」

「はぁ?! ふざけんなよ!」

「いや、今の話の流れだとその後買いに行ったって話じゃないのかよ!?」

「それなんだがよ⋯⋯実はこれからその店に買いに行こうと思ってんだけどよ⋯⋯その⋯⋯」

「ん?」

「なんだ?」

「いや、まあ、別に怖いってわけじゃないけどよぉ⋯⋯。でも、よくわからないところに一人で行くってのは、ちーとばかし、その⋯⋯」

「ああ、怖いってことね」

「ばっ?! ち、違⋯⋯っ!」

「はいはい、お母さんはお前を信じていますよぉ〜」

「⋯⋯やっぱりお前らに話すんじゃなかった」


 そう言うと、男はエールを一気に飲み干し、その場から離れようとする。


「お、おい、どこ行くんだよ?」

「うっせぇ! 離せっ!! 今からその店に行くんだよ!」

「「マジかよ!」」


 そう言って、男はテーブルから立ち、ギルドから出て行こうとした。


「お、おい! ちょっと待てよ!」

「行くよ、俺らも!」

「何っ?!」


 二人は男の腕を掴み、一緒に行くと告げる。


「お前の言っていることがもし本当なら⋯⋯その魔道具超やべー代物じゃねーか!」

「まったくだ。平民や亜人でも使える『治癒(キュア)の魔道具』なんて今まで存在していなかったんだ? そんなのが本当にあるんなら魔物の狩りがこれから大きく変わるぞっ?!」

「まー、仮に本当にあったとしても値段がどのくらいなのかってのがな〜」

「⋯⋯高いだろうな〜」

「いいじゃねーか。もし高くて買えなくてもよぉ⋯⋯そんな魔道具が実際にあることがわかるだけでもかなり有益な情報だぜ!」

「なるほど! 下手したらその情報だけでも金になるかもな!」

「うっし! そうと決まれば早速行くぞっ!!」




 そうして、3人は酒の勢いも相まって小柄の男が言う店へと向かった。


「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵ギフトというぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://ncode.syosetu.com/n3084hz/


『毎週土曜日13時更新』です。


よろしくお願いいたします。


mitsuzo

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