090「ライズの受難」
「ん⋯⋯んん⋯⋯あ、あれ? ここは⋯⋯?」
「お? 目が覚めたようだぞ?」
何だろう、女性の声が聞こえた。
ああ、そうか。もしかして僕は寝過ごしたのかな? 寝過ごして母が部屋に入ってきたのかな?
まったく⋯⋯いくら親子だからって、勝手に部屋に入ってこないでほしいよ。
「も⋯⋯う⋯⋯母上〜、僕はもう⋯⋯15歳ですよ〜⋯⋯勝手に部屋に入ってこないでくれ⋯⋯」
「誰が母上だ、この野郎っ!?」
「⋯⋯えっ!!」
僕は突然の怒号のようなもので飛び起きた。
「あたいはレイカ・シュバイツァー! 花も恥じらう17歳だ、バカ野郎ぉぉ!!!!」
と言って、背後から僕の首に腕を絡ませ⋯⋯落としにかかった。
「ちょ⋯⋯! あ、あの⋯⋯ギ、ギブ⋯⋯」
「わぁぁ、レイカ君! やめてあげてくださいぃぃ!!」
フリオ先生が止めてくれたので何とか助かりました。
それにしてもえらい目に遭いました。まさか、寝起きに首を絞められるなんて⋯⋯。
まーでも、レイカ先輩という方の豊満な胸を堪能できたのでプラマイゼロとしましょうか。ふー甘いですね、僕も。
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その後、皆さんが教えてくれたのですが、どうやら僕はつい5分前に気を失っていたとのことでした。
「ところで、何で僕は気を失ったんでしょう?」
「えーと、フリオ先生の傷が治ったのを見て⋯⋯かな?」
ん? どういうことだ? 何を言っているんだ、このラルフ・ウォーカーは?
「あれ? そもそも、何でこんなところにラルフ・ウォーカー様がいるんですか?」
「え? 何で⋯⋯って、私はこの生活魔法クラブの部員だからね」
「生活魔法クラブ? 何で僕は生活魔法クラブにいるのでしょう?」
「えーと⋯⋯生活魔法クラブで製作した魔道具をラミング商会で販売するっていう話で来ていて⋯⋯」
「ん? あーそうでした、そうでした! で、その魔道具はどちらに?」
「これです」
「⋯⋯これですか。この魔道具は何の効果があるのですか?」
「えーと⋯⋯傷を治す『治癒』の効果があります」
「ほー『治癒』⋯⋯光魔法ですね。ということは、六大魔法の魔力で動かすと⋯⋯」
「いえ、生活魔法の魔力で動かします」
「ん? 失礼⋯⋯ラルフ・ウォーカー様。それはどういう意味でしょうか? 光魔法の『治癒』は生活魔法ではなく六大魔法ですよ? 生活魔法の魔力で動かせるわけないじゃないですか?」
「え〜⋯⋯そこから〜」
「?」
ん? そこから⋯⋯だと?
どうして、ラルフ・ウォーカーはそんな返答を返すんだ?
「ラルフ・ウォーカー様。あの⋯⋯そこからとはどういう⋯⋯」
「だぁぁぁ! 面倒くせえぇぇっ!!!!」
バコン!
いきなり、レイカ先輩という方に今度は頭を叩かれた。
な、なぜっ?!
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「え、えーと⋯⋯つまり、僕は5分前にこの魔道具の効果を確かめるために、実際に使用して⋯⋯それで、フリオ先生の傷が治ったのを見て気絶したということですか?」
「ああ、そうだ! それなのにお前は起きたらまた同じことを言い出すからよぉ。だから目を覚まさせようと殴った。でもよかったよ。記憶が戻ったようで!」
現在、堪忍袋の緒が切れたレイカ先輩という方の主導の元、私はなぜか正座をさせられながら説教を受けていた。
「いいか? お前の常識はここではもはや意味をなさない! だから、その常識は捨てろ、いいな?!」
「え? 常識⋯⋯ですか? それはどういう⋯⋯」
「返事は『はい』だけだ。⋯⋯返事は?」
す、すごい、プレッシャーです。あと、すごい顔怖いです。
「は、はいぃぃ!!!!」
「よし! ということで、これからどんどん生活魔法の魔道具を製作してくっから、そこんとこ、夜・露・死・苦っ!!」
「⋯⋯よ、夜露死苦?」
「『はい』⋯⋯は?」
「は、はは、はいいいいぃぃぃ!!!!」
こうして、僕は生活魔法クラブの魔道具製作の販売関係を引き受けることになった。
「あ⋯⋯あと、お前ー、今日からあたいの『舎弟』な?」
「しゃ、しゃてい⋯⋯?」
「付き人、召使い⋯⋯ってことです」
謎の『しゃてい』という言葉をラルフ・ウォーカーが横でそっと教えてくれた。
「違う! 奴隷だ!(ニカッ)」
レイカ先輩が素敵な笑顔ではっきりとそう仰いました。
ということで、僕は今日から生活魔法クラブの魔道具販売兼、レイカ先輩の奴隷となりました。
「あと、レイカ『様』な?」
ああ⋯⋯なるほど。ちゃんと今回も僕の『ついていないセンサー』は正常に作動していることが確認できました。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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『毎週土曜日13時更新』です。
よろしくお願いいたします。
mitsuzo
 




