080「ドワーフに会いに行こう〜シルフェ・ヴァンディス共和国〜⑥」
——『シルフェ・ヴァンディス共和国』
アガルタ大陸の西のほとんどを掌握する超大国。元はエルフ族とドワーフ族が興した国であるが、元々仲の悪かったこの2つの種族が手を組んだのかはいまだ明らかになっていないが、しかし、その結果、どちらも長寿であることと、豊富な魔力と魔法に長けたエルフ族に、日用品から武器・防具、果ては魔道具に至る様々な加工技術に長けたドワーフ族が組んだことにより、国はみるみる発展していき、ほんの100年程度で西にある各領土を一つにまとめ、超大国として台頭。
現在、領土だけで見れば、ラルフたちがいる大陸東の覇権国家として君臨する超大国『グランザード帝国』をも凌ぐ。それが、この西の超大国『シルフェ・ヴァンディス共和国』なのである。
「い、いやぁ、なんかすごいところに来てしまったな⋯⋯」
テイラーがそんな感想を漏らす。
「本当だね。でも、ドワーフを見ることができて私は嬉しいですけど」
「マ、マジかよ⋯⋯。ラルフって本当、肝がすわってんな」
「そうかな〜?」
「いやそうだろ! だ、だって、見ろよ⋯⋯村のドワーフの人たちの目をよぉ。露骨に嫌な顔してるじゃねーか」
そう。今、私たちは副村長のムロランさんに連れられているのだが、ドワーフ村⋯⋯『イツクール村』の中に入ってからずっと村の人たちに睨まれていたのだ。
「そうね。ドワーフ族だけでなくエルフ族もだけど⋯⋯私たち人間族に虐げられてきた過去があるし、今もまだ私たち人間族の国であまり良い扱いを受けてないっていう現状もあるからね。⋯⋯正直、嫌な顔されても仕方ないとは思う」
と、ミーシャが少し悲しげな表情をしながら説明をしてくれた。
「あの⋯⋯歴史書では大まかな話しか載ってなかったのですが、具体的には過去に人間族とはどんないざこざがあったんでしょうか?」
「⋯⋯人間たちが我々種族を奴隷扱いしてきた」
「「「サブリナ(さん)!」」」
ここで、突然サブリナさんが話出した。
「いいの? サブリナ?」
「⋯⋯はい。ラルフ・ウォーカーやここにいる生活魔法クラブの方には話してもいい⋯⋯いえ、話したほうがいいと思いますので」
「そう⋯⋯わかった」
ミーシャさんとサブリナのやり取りを見る限り、どうやらサブリナの話はだいぶ込み入った話のようだ。
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「まず、エルフ族とドワーフ族は今から200年前——人間族から奴隷扱いされてました⋯⋯」
サブリナの話だと、エルフ族とドワーフ族は『家畜』のような扱いをされていたらしく、人間の下で身の回りの世話からひどいところでは人間族の勝手なストレスの吐け口となる暴力による虐待や性虐待といった、『歪んだ嗜好品』として扱われてもいたらしい。
「⋯⋯ちなみに、現在はほとんどそんな扱いは無くなったが、しかし、一部ではまだエルフやドワーフを『歪んだ嗜好品』扱いをしている人間は存在している」
「ま、まさか⋯⋯そんな⋯⋯ひどいことを今もって⋯⋯」
「ちなみに、それはセルティア王国の貴族にもいる」
「なっ?! そ、そんなバカな! そんな話、聞いたことなんてない⋯⋯」
テイラーがサブリナの話を聞くと、あまりの酷さに「信じられない」といった表情で否定しようとするが、
「⋯⋯そんなの当然。一般市民にそんな話が流れることは絶対にない。情報統制されているから気づかない人がほとんど」
「マ、マジ⋯⋯かよ⋯⋯」
テイラーはサブリナの話に愕然とし、震えている。
「だから、だから、私はミーシャお嬢様やレオンハート様の計画に⋯⋯⋯⋯乗った」
「え? 計画?」
「「「「「っ!!!!」」」」」
その時——サブリナの言葉に全員が反応する。
「こ、こらこら、サブリナ〜。しゃべりすぎよ〜」
「あ⋯⋯⋯⋯す、すみません、お嬢様」
「ミーシャとレオンハート様の計画って、どんな計画⋯⋯」
「や、やあ、ラルフ君!」
「あ、レオンハート様!」
ここで、すかさずレオンハートが間に入った。
「確かに、サブリナたちエルフやここにいるドワーフたちは過去にいろいろと我々人間族に虐げられてきた。本当に不幸なことだ。そして、今、さらにセルティア王国やあの東の大国『グランザード帝国』も過去の過ちを繰り返そうとして動いている。だ、だから、セルティア王国第二王子である私や、第一王女であるミーシャ、そしてザナーク・レンフロ学園長で、この『シルフェ・ヴァンディス共和国』につながる転移陣を利用して、ドワーフやエルフたちと友好を図っていこうと思っているんだ!」
と、レオンハートが苦し紛れな説明をする⋯⋯と、
「な、なるほど! 素晴らしい! 素晴らしい活動です、レオンハート様っ!!」
ラルフはレオンハートの言葉に手放しに感動した(※ちょっろ!)。
「そ、そうかい、い、いやぁ⋯⋯でも、そんな大したことじゃないさ。あはは⋯⋯」
「そんなことないです! いやぁ、ご謙遜です、レオンハート様!」
「ま、まいったなぁ〜。あははは⋯⋯」
レオンハートは「バレずによかった」と思うも、あまりのラルフの手放しの感動を見て、若干、後ろめたさを感じていたのは言うまでもない。
すると、
トントン⋯⋯。
「ん? ミーシャ?」
ミーシャがレオンハートの肩をちょんちょんとする。
(か、完全に嘘ってわけでもないから大丈夫ですわ、レオお兄様)
ミーシャはレオンハートが罪悪感を感じていると思って声をかけてきた。
(あ、ありがとう。ミーシャ)
(うん! でも、本当に嘘じゃないわ! 私たちがこれからやろうとしていることはセルティア王国の腐敗政治を正す計画で、そして、その先にあるものは他種族の幸福にもつながるのですから!)
(⋯⋯そうだね。ありがとう、ミーシャ)
そうして、ラルフがサブリナからこのシルフェ・ヴァンディス共和国の話や、ドワーフやエルフの過去の話などを一通り聞いた後、
「着きました。こちらで村長が皆様を待っております⋯⋯」
イツクール村で暮らすドワーフたちの代表であり、この村を治める村長の家に到着した。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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『毎週土曜日13時更新』です。
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mitsuzo
 




