079「ドワーフに会いに行こう〜イツクール村〜⑤」
「ここは⋯⋯古代遺跡?」
転移陣で移動した先もまた古代遺跡のような場所だった。
「え? 転移したのよね?」
ミーシャが皆を代弁するかのような疑問を呟く。そう、パッと見は転移する前の場所とあまり変わっていないように見える。
「大丈夫ですよ、ちゃんと転移してますよ」
「「「「「っ!!!!」」」」」
突然、ミーシャの言葉に返事をする言葉を返された。⋯⋯私たち以外のどこかから。
「ああ、驚かしてすみません。私はドワーフ村の副村長でムロランと申します」
そう言って、ずんぐりむっくりの小さいおじさんが奥からこちらに歩いてきた。頭にバンダナみたいなものを巻いているが、それでもかなりボリューミーな天然パーマの長髪なので余計に想像していたドワーフっぽい顔立ちをしていた。
そんな、あまりに想像通りの姿だったので、
「おお! 本当にイメージ通りのドワーフですね!」
思わず、そんなことを言ってしまった。
「あ! す、すみません!! 失礼な言い方をして⋯⋯」
「ほっほっほ⋯⋯別に構わんよ。人間種の者からしたらドワーフを生で見るのは珍しいじゃろうからな」
うわぁ、めっちゃいい人だ〜。
「どうも、お久しぶりです。ムロラン様」
「おお、フリオか。久しぶりじゃの〜。5年ぶりか?」
「そうですね。その節はいろいろとお世話になりました」
「ほっほっほ。問題ない、問題ない」
どうやら、フリオ先生とムロランさんはそれなりに顔見知りのようだ。
「お久しぶりです、ムロラン様」
「ん? おお! お主は⋯⋯⋯⋯もしかして、レオンハートか!?」
ムロランさんがレオンハート様を見て驚きの表情を見せた。
「はい。以前こちらに来た時は5年前でしたので⋯⋯あの頃とはだいぶ⋯⋯」
「おお! おお! 随分背が伸びたんじゃな! それと、顔付きもすっかり垢抜けて大人になったのぉ! そうか〜、あんな小さかったお主がこんなに成長していたとは⋯⋯。やはり、人間はドワーフと違って寿命が短い分、成長が早いのぉ」
そう言って、レオンハート様の背中をバンバン叩く。嬉しくて背中を叩いているのだろうけど、結構強い力で叩いているみたいで、なんか、痛そうなんですが⋯⋯。レオンハート様大丈夫かな?
ていうか、レオンハート様⋯⋯さっきはドワーフ村に行くのは初めてって言ってたのに⋯⋯実は行ったことがあったんだ。⋯⋯じゃあ、何で嘘なんかついたんだろ⋯⋯?
あ、そうか! もしかして、私たち生活魔法クラブのみんなと同じ「初めてドワーフの村に行く気持ち」で行きたかったのかな? ふふふ⋯⋯あんなかっこよくて普段からしっかりしている人なのに、こんなお茶目な部分があるなんて⋯⋯ちょっと可愛いですね、レオンハート様。
などと、一人勘違い思考を繰り広げるラルフをよそに、レオンハートはムロランにバンバン背中を叩かれ思わず、
「ム、ムロラン様⋯⋯。その⋯⋯背中が痛いので、できれば、もうその辺で⋯⋯」
「ん? おお、こりゃ失礼した! わははは、悪い、悪い。いや〜、懐かしくてついなぁ⋯⋯」
と、早々に降参を宣言。
そして、その後、一通り皆が挨拶をした。
「よし。それでは早速、行くかの」
「「「「「お願いします」」」」」
みんなでムロランさんに声をかけると、ムロランさんはさっき古代遺跡でレイカ先輩がやったように、パッと見、ただの岩壁に触れて魔力を通した。すると、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ⋯⋯!
またも、同じように岩壁にスーッと切れ込みが入り、上部へと岩壁が開いた。
「では、村長のところへ案内致します。こちらへどうぞ」
こうして、転移陣から出た私たち。ちなみにこの転移陣のある場所はセルティア王国にあったような古代遺跡の地下3階に設置されていた。
それから地上に上がると、目の前には深い森が広がっており、そこを抜けると、眼前から少し離れたところに人気を感じる村が見えた。
「あれが我々ドワーフ族が暮らす村です」
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「す、すごい。これがドワーフの村⋯⋯」
「うわぁぁ⋯⋯これがドワーフの村かぁ」
私たちはそうしてドワーフ族の暮らす村に足を踏み入れた。村に入ると、ムロランさんと同じく身長は低いが筋肉質でガタイの良い、ドワーフらしい人たちで溢れていた。本当にドワーフの村に来たんだなと実感する瞬間でもあった。
「この村は『イツクール村』といいまして、首都からかなり離れた⋯⋯西の最果ての村でございます」
と、ムロランさんが説明をしたのだが、
「首都?」
という言葉に反応する私に、フリオ先生が説明をした。
「そう。ここはね、ドワーフ族とエルフ族が興した『シルフェ・ヴァンディス共和国』という国の村なのです」
「「「「「ええっ!? シルフェ・ヴァンディス共和国っ!!!!」」」」」
全員がフリオ先生の言葉に驚きの反応を示す。あ⋯⋯レオンハート様は知っていたようです。
「おいぃぃぃ!! フリオ、ゴルゥァァァァ!!」
「す、すいません〜!! こ、今度はちゃんとレイカ君には前もって連絡しますからぁぁ!!!!」
「ったく! ていうか、まさかセルティア王国にある古代遺跡の転移陣から⋯⋯こんな西の超大国『シルフェ・ヴァンディス共和国』につながっていたなんて⋯⋯」
レイカ先輩がここまで動揺するのももっともだ。
なんせ、このアガルタ大陸の西のほとんどを締める超大国『シルフェ・ヴァンディス共和国』に、東の中国家規模のセルティア王国にある古代遺跡の転移陣から一瞬で移動できるんだ⋯⋯この『転移陣』がもたらすであろう様々な恩恵は計り知れない。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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『毎週土曜日13時更新』です。
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mitsuzo




