007「生活魔法の実践・研究(1歳〜3歳)」
ちなみに、この称号についての仕組みはあくまで『六大魔法』に限っての話で『生活魔法』はこれには当てはまらない。『神託の儀』で得られた称号が『生活魔法に関するもの』であれば、すべて『生活魔法士』という称号になる。生活魔法に関する称号はこの一種類しか存在しないのだ。これが、この世界の称号についての常識である。
ちなみに「なぜそうなのか」という明確な理由は見つかっていないらしいが、現状『六大魔法の称号』に関しては、
「神は、六大魔法は各属性ごとに威力が幅広く、且つ、強力である為、『魔法士階級(下級士・中級士・上級士・特級士)』を設け、優秀な家系ほど上位の魔法士階級を授けるようにしたのだろう」
とのこと。そして、『生活魔法に称号が一種類しかない理由』については、
「神は、生活魔法は日常生活程度の効果しか持たない魔法である為、称号は一種類あれば十分ということで一種類しか用意しなかったのだろう」
とのことだった。
どうやら、生活魔法は神様からも辛辣な評価のようである。
何とも世知辛い。
そりゃ、この世界の人間が『生活魔法』に対して厳しいのも頷ける。
そんな生活魔法への評価が辛辣なその神様とは『オプト神』という神様で、この『オプト神』を主神として崇拝しているのが、この世界で唯一の宗教である『オプト神教』である。もちろん、私がいるこのセルティア王国の国教も『オプト神教』だ。
ちなみに、これまでの長い歴史の中では他にも宗教があったらしいが、現在はこの『オプト神教』だけになったようだ。
「一神教⋯⋯か」
とりあえず、生活魔法を取り巻く環境はなかなかに手厳しい。
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この世界の神様である『オプト神』という神様にも辛辣な評価をされている生活魔法。その取り巻く環境の厳しさに軽く絶望したものの、しかし、こんなことでめげるようではいけない。
ということで、再び立ち上がった私が次に手をつけたのはズバリ⋯⋯『魔法の実践』である。
ちなみに、魔法は『神託の儀』で称号を得たあと、魔力を感じられるようになれば魔法を使うことができるのだが、私は『称号』をもらったあとすぐに体内にある魔力の存在を感じることができたので、すぐに生活魔法を試すことができた。
早速、いくつかの生活魔法を試めそうと思ったが、しかし現在1歳を迎えたばかりの私の体ではまだ自力で立つのがやっとで動き回ることはできなかったため、最初はベビーベッドの上で試すこととなった。
私は、人気がいなくなったのを確認して、まずは、明かりをつける生活魔法『光源』を試してみた。
「⋯⋯ラ、光源っ!」
ピカァァァーーーーーーーーーーーっ!!!!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
生活魔法『光源』の明るさは目を閉じていても力強く強烈で、指先から迸った光は部屋全体を強烈に明るく照らした。私はそのあまりの明るさにビビってしまいすぐに魔法を解除したのだが、その際、思わず大声を上げてしまったため、部屋に両親やメイドが駆けつけるなど大騒ぎとなってしまった。
幸い、魔法を使ったことはバレていなかったので、両親やメイドには「怖い夢を見て、思わず叫んでしまった」と説明し、何とか誤魔化すことができた。
「つ、次からは、こういうことがないよう気をつけないと⋯⋯」
私はその事を肝に銘じてすぐに続きをした。
「微風!」
ブォォォォォォォォォォォォーーーーっ!!!!!!
「着火!」
ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーっ!!!!!!
「水!」
ジョバババババババババババーーーーっ!!!!!!
「⋯⋯⋯⋯」
ん、んん〜〜〜〜〜????
な、なんか、威力すごくな〜いっ?!
本来、生活魔法とは『日常生活で使う程度の威力しかない魔法』と書いてあったが、今試した生活魔法はすべて予想以上の威力というか⋯⋯どう見ても威力過多な感じがした。
しかし、前世では魔法なんて存在しない世界だったし、この世界の魔法を生で見たことがなかったので、個人的にさっきの自分の生活魔法は威力過多だと思っても、この世界の常識では『あれが普通の威力』なのかもしれない。
「さっきの生活魔法の威力は『日常生活レベル』とは到底思えないけど⋯⋯実際どうなんだろう?」
ということで、私はその確認のために父上のところに聞きに行こうと思ったが、
「1歳で生活魔法とはいえ発動できるというのは、果たして、安易に見せていいものなのだろうか?」
私は迷った挙句、父上に聞くのを断念した。
私の魔法を見て父上がどう反応するのかわからなかったからだ。
結局、現時点ではとりあえず「こういうものだ」と無理矢理納得させて、その後も生活魔法について実践・研究を進めた。
「それにしても、まさか自分が魔法を使える日が来るなんてな〜⋯⋯」
私は目の前で魔法を使っているという現実に「ファンタジーだな〜」としみじみと感動していた。




