060「魔道具開発着手③」
「では、早速やってみましょう」
ということで、緑の魔石に『鎌鼬の狂い刃』の封入作業を開始。フリオ先生に約10センチほどの魔石を渡される。
「さて、この魔物から採れる魔石には元々『魔力』が入っています。これは先ほども話しました魔物が六大魔法で作られているので、当然その魔物の体内にある魔石にはその六大魔法の性質の魔力があるということです。ここまでいいですか?」
「はい、大丈夫です」
「よろしい。ただ、この魔石に入っている魔力は微々たるものでして⋯⋯。この魔石にある魔力だけで封入する魔法を発動させることは無理なのです」
「へ〜、それはちょっと意外でした」
「ほう? というと?」
「いえ、強い魔物⋯⋯例えば魔法を使役するほどの上級魔物物なら魔石の中に大量の魔力を内包していると思ったのです」
「なるほど。その気持ちすごくわかります。しかし、魔物は生きているときに魔法を行使するとき、魔石の中の魔力を使っているのではなく、体内に張り巡らされた魔力を制御して魔法を発動させます」
「え? 体内の魔力を制御して魔法を発動? それって、私たち人間と同じ⋯⋯ということですか?」
「はい。一緒です」
「ええええええっ!?」
今日1・2を争うくらいビックリした。
「ぶっちゃけ、魔物が魔法を発動させるメカニズムは人間とほぼ一緒です。面白いですよね。ちなみに『魔石』というのは魔物の体内にありますが、これは『魔力を貯める器』ということではなく、魔物の『魔力の性質』を表しているだけです。もちろん、魔法を使わない魔物でも魔石はありますし、その魔石は『魔力の性質』を表しているだけに過ぎません」
「や、ややこしい⋯⋯ですね」
「わかります。たしかにややこしいかもしれませんが、簡単な考え方だと『魔物によって魔力の性質が皆決まっていて、それを示すのが魔石の役目』と考えるとわかりやすいかもしれません」
「あ、それだとわかりやすいです。なるほど⋯⋯魔物によって性質に違いがあって、それは魔石の色を見ればわかる⋯⋯ということか」
「そうです。よかった」
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ということで、私は早速、緑の魔石にオリジナル魔法『鎌鼬の狂い刃』を封入する。
「そうです。魔石に魔法を止めるイメージを⋯⋯。はい、そうです。その調子です」
イメージは魔法の発動イメージを魔石の中に入れる感じだ。
「はい、オッケーです!」
「ふー⋯⋯」
「これは成功かもしれません⋯⋯見てください」
フリオ先生が、そう言って魔石を見るよう促す。すると、
「ま、魔石の中で何か黒い渦のようなものが⋯⋯動いて⋯⋯いる?」
「はい、この動いている黒い渦のようなものが、今魔石に入れた魔法です」
な、何か、生き物のように見える。
「そして、これだけでは魔法を留めただけですので⋯⋯ここに、今度はこの魔法が発動するのに必要な魔力を入れていきます。つまり、ここで魔法を発動させる回数を決めるのです」
つまり、『何回魔法が発動できる魔道具』にしたいかということ。
「あのフリオ先生⋯⋯魔石の大きさで封入できる魔法や魔力量に違いはありますか?」
「そうですね。確かに魔石のサイズによって封入できる魔法や魔力量に違いはあります」
「やっぱり⋯⋯」
「ただし⋯⋯! 強い魔物の魔石であれば、指輪やネックレス、イヤリング程度の大きさの魔石でもかなりの強力な魔法を入れることができますし、魔力量も豊富に封入することも可能です」
「おおっ!!」
「しかし、そんな強い魔物の魔石なんて市場に出たとしても、ものすごい金額ですのでまず購入は不可能です。そんな魔石を買えるとすれば王族や財力のある貴族くらいでしょう」
「じゃあ、魔物を直接倒しにいくのは⋯⋯」
「まー可能性があるとすればソレしかないです。つまり、魔物を直接狩りに行くということ⋯⋯。しかし、そんな魔物を狩れる者など⋯⋯そうですね〜、冒険者で言えばBランク以上。王宮の魔法騎士団で言えば第一〜第九までの各隊の副隊長クラス以上といったところでしょうね」
「ぼ、冒険者でBランク⋯⋯魔法騎士団で副隊長クラス⋯⋯」
そんなに⋯⋯ですか。
「ちなみに、今回使ったこの10センチほどの魔石ですが、これはそのまま裸で持つタイプです。一応、上級士レベルの魔法を封入するのは可能ですが、ぶっちゃけ魔力は5回分の魔力しか入れられないです⋯⋯」
「ええっ!? な、なんだ⋯⋯どっちみち5回分の魔力しか入れられなかったんじゃないですか!」
「ははは、すみません。では、5回分の魔力を封入してください」
ということで、私はさっさと5回分の魔力を魔石に封入した。
「はい、オッケーです。これで完成です。お疲れ様でした。どうでしたか?」
「ありがとうございます。そうですね。ぶっちゃけ、話を聞いていたよりも⋯⋯」
「簡単⋯⋯でしたか?」
「え? え、ええ⋯⋯まあ⋯⋯」
「ふふ⋯⋯そうでしたか。でもね、ラルフ君。今、ラルフ君が私の説明を聞きながら何事もなくスムーズに魔石に魔法や魔力を封入しましたが、こんなにスムーズにできる生徒は滅多にいません」
「え?」
「おそらく、テイラー君やレイカ君ではこんなにスムーズに封入作業などできません。正直私でも難しいです」
「ええ?! 先生でもですか!」
「はい。とはいえ、正直こんなことを言っても今はピンとこないでしょうが、まあいずれわかるでしょう。それにしても、ラルフ君の魔力制御技術がここまでとは思っていませんでした。まだ一年生で入学したばかりなのに⋯⋯いや、素晴らしいです」
「フリオ先生⋯⋯?」
「あ、すみませんっ!? と、とにかく、これでラルフ君は魔石への魔法封入作業は完璧にできることがわかりましたので、今後はどんどんやっていきましょう!」
「はい!」
ということで、初めての魔道具開発は大成功に終わった。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo




