057「新たなる新入部員」
「⋯⋯ラルフ」
「あ! ミーシャ様⋯⋯」
「ミーシャ⋯⋯です」
「っ!? ミ、ミーシャ⋯⋯」
次の日のお昼——食堂でテイラーとランチを食べていると、そこにミーシャ第一王女がやってきた。あと、相変わらず、すごいガン飛ばしてくる従者のサブリナさんも一緒だ。⋯⋯ひぇ。
「お昼はもう済んだのですか?」
「あ、はい。ちょうど今食べ終わったところです⋯⋯」
「あら、そうなんですね。私もちょうど食べ終わったところだったので丁度よかったです。実は、いろいろ聞きたいことがありまして⋯⋯」
「聞きたいこと?」
「ラルフは『生活魔法クラブ』に入部したんですよね?」
「はい、テイラーと一緒に入部しました」
「やっぱり、そうなんですね。どうですか、生活魔法クラブは?」
「え⋯⋯?」
うーん、ミーシャは仮にもセルティア王国第一王女。あまり『生活魔法』の話はしないほうがいいだろうか⋯⋯。
「あ、もしかして、私が第一王女だから生活魔法の話は⋯⋯とか考えてます? それでしたら杞憂ですよ。私の学園入学の目的は『生活魔法』を研究することなのですから」
「あ⋯⋯」
たしかに。そう言えば、最初会った時に「生活魔法に可能性を感じている」と言ってたっけ⋯⋯。
「そ、そうでしたね。すいません、何か気を遣ってもらって⋯⋯」
「そんなことないよ。それよりも、生活魔法クラブはどうなの?」
「うん。すごく面白いですよ。顧問のフリオ先生も部長のレイカ先輩も優しいですし⋯⋯」
「⋯⋯シュバイツァー侯爵家のご令嬢ですよね。私あまり話したことないのですが、見た目、すごく迫力があるというか、その⋯⋯」
「わかる! 俺たちもレイカ先輩怖いもの!」
「テイラー」
そう言って、テイラーが話に入ってくる。
「テイラー⋯⋯レイカ先輩ってやっぱり⋯⋯あの⋯⋯怖いの?」
「ああ、怖い。でも、すごく真面目で優しい人だと思う」
「! 真面目で⋯⋯優しい人?」
「ああ。なんかレイカ先輩って表面上はすごくおっかないけど、魔法研究に関しての姿勢はすごく実直というか、素直というか、魔法研究が本当に好きな人なんだな〜⋯⋯て感じするよ」
そう言って、テイラーがニカッと笑う。
「へ〜。ずいぶん、詳しいね、テイラー」
「ああ、俺は今、レイカ先輩とマンツーマンで生活魔法研究やっているからさ。だから、レイカ先輩と話す機会も多いんだよ」
「そうそう。それで、私もテイラーにその話を聞いてレイカ先輩の印象が変わったんだ」
「へ〜、そうなんだ。ありがとう、色々と教えてくれて! あ、じゃあ私そろそろ行くね。午後の授業で⋯⋯」
「あ、うん」
そう言って、ミーシャがそそくさと去っていった。
「な、何だったんだろう⋯⋯ミーシャ?」
「さ、さあ?」
どうして、ミーシャがそんなことを聞きにきたのか。
それは、放課後に判明することとなった。
********************
——放課後/生活魔法クラブ
「⋯⋯コホン。では、自己紹介を願いします」
「今日から入部することになりました。ミーシャ・セルティアと申します! よろしくお願いします!」
「「へ⋯⋯?」」
放課後、部活に行くとフリオ先生に1階の大部屋に呼び出されると「今日からもう一人、新入部員が入る」と言われ、そのタイミングで入ってきた人物がミーシャ・セルティア第一王女だった。
「「ミ、ミーシャ!?」」
「はーい、ラルフ、テイラー⋯⋯」
「お、おい、君たち。彼女はこの国の第一王女だぞ。その言葉遣いは⋯⋯」
「あ、フリオ先生。大丈夫です。二人は私の友達ですので、そのように呼んでと言ってあります。それにフリオ先生やレイカ先輩も同じように私のことは『ミーシャ』で構いませんので」
「ええっ?! い、いや、それはさすがに⋯⋯」
フリオ先生がミーシャの言葉にたじろいでいると、
「別にいいんじゃね? 王女様本人がそう言っているんならさ⋯⋯」
「レ、レイカ君っ?!」
レイカ先輩がミーシャの前に立った。
「そうだよね、ミーシャ様?」
「は、はい! そ、それに『様』も不要です! レイカ先輩もフリオ先生も年上ですし⋯⋯」
レイカ先輩に話しかけられたミーシャは、かなり緊張しているように見えた。
「ふ〜ん、そうなんだ。じゃあ、ミーシャ⋯⋯でいいの?」
「はい! 大丈夫です!」
「で、そっちの子は?」
「⋯⋯⋯⋯」
と、レイカ先輩がミーシャの隣にいる従者のサブリナに視線を向ける。
やばい!? サブリナはミーシャに対しての言葉遣いとか礼儀に厳しいし、性格もだいぶ好戦的だ。そんなサブリナがレイカ先輩のこの態度を見たらブチギレ必至⋯⋯!
「ミーシャお嬢様の従者をしております、サブリナ・リンドバーグと申します。⋯⋯以後お見知り置きを」
あれ?
「⋯⋯レイカ・シュバイツァーよ」
サブリナがブチギレると思っていたら、まさかのノーリアクションで淡々と挨拶を交わした。
「⋯⋯サブリナ」
「はい」
すると、レイカ先輩がサブリナにふと声をかけた。
「あなたは⋯⋯⋯⋯ミーシャの味方と思っていいのね?」
「⋯⋯はい」
「!」
ん? 味方? どういう意味だ?
サブリナは味方というか、ただの従者だよね?
何だろう⋯⋯今のこの二人の会話。何か、訳ありなのだろうか?
いや、訳ありだとしても⋯⋯誰と誰がだ?
私が二人の会話に違和感を抱いて考え込んでいる間に、
「ということで、今日からミーシャ君も参加ということで、みんなよろしくね」
「「はい(ああ)」」
ミーシャの自己紹介が終わった。
その後、ミーシャは生活魔法研究か魔道具開発のどちらがいいかと聞かれると、
「生活魔法研究がしたいです!」
ということで、ミーシャはレイカ先輩とテイラーのいる2階へと去っていった。
「さて、少しバタバタしましたが⋯⋯今日は早速、昨日のラルフ君のオリジナル魔法『鎌鼬の狂い刃』の魔道具開発をしましょう」
「は、はい!」
そうして、私とフリオ先生はいつもの魔道具開発の部屋と向かった。
「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」
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mitsuzo




