037「専門科目①」
突然、王女様が私に近づき、耳元でそっと告げる。
「(ボソッ)それは⋯⋯⋯⋯生活魔法に大いなる可能性を感じているからです」
「っ!?(ボフン!)」
う、うわぁぁああぁぁあぁあぁぁぁ〜〜〜っ!!!!!
突然、私の耳元で吐息混じりに呟いたミーシャ・セルティア第一王女。
耳ぃぃ!? いきなり、耳ぃぃ〜〜!!!! あ、あと、近いぃぃぃ〜〜〜っ!!!!
な、なぜにっ!! どうしてこうなったっ!!
初対面でございますがぁぁぁ〜〜!?
あ! 何か王女様の横にいる女子がすんごい目で見てる⋯⋯いや、睨んでるっ!? いや、これ、不可抗力ですからぁぁ〜〜〜っ!!!!
ま、待て! 落ち着け、私! まだ、あわてるような時間じゃない!
む、そうか! これは、王女様という身分の人が「生活魔法に可能性を感じる」なんて簡単に口にすることができないから、そのための耳元への発言だったのだ!
うむ、それだ! それなら辻褄があうじゃないかっ!!
ふぅ〜、これで万事解決。
それにしても、王女様含めここにいる生徒たちは皆同級生ではあるが、前世の記憶を持つ私からすれば全員年下。何だったら『お父さんと娘』⋯⋯いやさ『おじいちゃんと姪っ子』のような年の差である。そんな姪っ子のような王女様相手にドキドキしてどうする、私っ!?
「ふぅ〜、やれやれだぜ⋯⋯」
「あ、あのぅ〜⋯⋯ラルフ? どうしました? すごい汗ですし、顔色も悪いようですが⋯⋯」
「いえ、お気になさらず。問題は速やかに解決致しました」
「?? は、はぁ⋯⋯」
あ、何か、王女様すんごいポカーンしてる。
まー致し方あるまい。非常事態だったのです。
それにしても、確かに王女様のような王族が「生活魔法に可能性を感じている」などと発言するとは本当にビックリした。なんせ、この世界の常識は『六大魔法』がすべてで『生活魔法』は日常生活でしか使えないクズ魔法という認識なのだから。
そんな生活魔法に可能性を感じるなんて、そんなの『六大魔法絶対主義』のこの世界で王族の口から飛び出すのはだいぶ過激な発言⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん? ちょっと待て。
なぜ、そのような過激発言を私だけに聞こえるように言ったのだ?
私にそんな言葉を伝える自体おかしい。ていうか、やってることが矛盾している。
王女様は過激発言とわかっているからこそ、私にだけ聞こえるように言った。ということは、王女様は自ら過激発言をしたことをちゃんと理解している。
であれば、私に『生活魔法の可能性』を告げるなんてあり得ない⋯⋯。
わからない。なぜ、王女様はそのようなことを私に⋯⋯?
もしかして、私のことを何か知って⋯⋯?
い、いや、それはない。あり得ない!
だって、王女様とはこれまで一度も面識などないのだから!
可能性があるとしたら『神託の儀』だが、しかし、あの時の私は赤ちゃんとはいえ当時から前世の記憶はあったので、その時のことは今でも鮮明に記憶している。だからこそ、王女様に会ったことがないのは確実だ。
わからない⋯⋯。気のせい⋯⋯なのだろうか?
そんな、私が一人物思いに耽っていると、
「ラルフ・ウォーカー⋯⋯いえ、ラルフ」
「えっ?! ラ、ラル⋯⋯は、はいっ!!」
「よろしければ一緒に授業受けませんか? あ、もちろんお友達もご一緒に。いかがでしょう?」
「「ええっ?!」」
自分だけでなく、テイラーも指名されたため二人の返事が思わずハモった。
「わ、私みたいなのが一緒で、よろしいのですか?」
「もちろん!」
「で、ですが、私はしがない東の果ての辺境伯家という田舎者⋯⋯⋯⋯」
「ラルフ! せっかくの王女様のお誘いを断るなんてそんなの名がすたるってもんだぜ!」
「テ、テイラーっ?!」
「ここはミーシャ様に甘えさせていただこうぜ!」
「ええっ?! テ、テイラー⋯⋯本気?」
「あったぼーよ! ここで王女様の誘いを断ることこそ不敬だし、そもそも男としてダサいぜ!」
「お、おう⋯⋯」
「フフ⋯⋯では、決まりですね!」
ということで、私とテイラーは王女様と一緒に生活魔法基礎の授業を受けることとなった。
あ、ちなみに、王女様は一人じゃなくお付きの人もいたので、その人も含めた4人で授業を受けることとなった。
「——初めまして。ミーシャ様の護衛兼メイド役の『サブリナ・リンドバーグ』です(ギロリ)」
「うっ!?」
な、何か、すごい睨まれた⋯⋯。あと、威圧がもの凄いんですけど!
こ、怖い⋯⋯。
********************
「ど、どうも、初めまして。生活魔法基礎のルナ・ウェンブリーです。よ、よろしくお願いします⋯⋯」
教室にフワッと心地よい風が入ると、ルナ先生の淡いピンク色のショートボブがサラサラと揺れ、彼女の可愛らしさに彩りを添えた。⋯⋯ていうか、
(ま、まさかの、合法ロリっ!?)
身長はおよそ160センチあるかないかという小柄で、尚且つ、自信なさげに喋るその仕草。そんな庇護欲を掻き立てられるその佇まいは、まさに合法ロリに相応しい至高の存在。
しかも、彼女の『武器』はそれだけではなかった!
(((((な、なんだ、あれ⋯⋯っ?!)))))
教室の全男子の心の声がシンクロする。
そして、そのシンクロを引き起こした『物体』に男子全員が釘付けとなった。
(((((何という巨乳⋯⋯いやさ、爆乳っ!!!!)))))
合法ロリでありながらその見た目に相反する高々と連なる双丘に、思春期男子全員がクリティカルヒットした。
ルナ先生は『合法ロリ』ではなく『合法ロリ巨乳』でした。
いけない! ルナ先生(※わかる人だけ)。
ちなみに、そんな男子に女子全員からの冷ややかな目がビシバシ突き刺さったのは言うまでもない。
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mitsuzo




