032「セルティア魔法学園学生寮『聖鳴館』」
ホームルームが終わった後、私はすぐに学生寮へと向かった。
セルティア魔法学園学生寮『聖鳴館』——セルティア魔法学園北側に位置する敷地にある建物で、主に平民・獣人・亜人が利用。たまに、男爵や子爵貴族の生徒も利用することもあるが、貴族のほとんどは王都内の別荘から通う。よって、学生寮『聖鳴館』を利用しているのはほとんどが平民・獣人・亜人である。
また、貴族にとって学生寮から通う行為は「プライドが許さない」らしく、そのため王都に別荘がないラルフのような貴族の生徒でも「学生寮に入るよりかはマシ」という理由で、王都にある高級宿を学生期間となる約3年間借りて通う者もけっこういるらしい。いや〜全く贅沢な話である。
「まーウチじゃ無理だろうな〜。ていうか、仮に可能だとしても学生寮一択だけどね」
そんな無駄遣いしなくても学生寮で十分だし、それに寮生活なんて学生のうちにしか体験できないからね。
さて、そんな事情があるため、学生寮『聖鳴館』にいるのはほとんどが平民だ。一応貴族の生徒もいるがだいたいは『我関せず』を貫いている。
「おそらく、平民と仲良くするのはプライドが許さないとか、そんなしょうもない理由なんだろうな⋯⋯」
この世界でも、やはり『金持ち見栄っ張り』は平常運転のようである。
ちなみに、学生寮は3階建てで基本、上から3年生・2年生・1年生と部屋割りされている。校舎も3階が3年生で下に降りるにつれて2年、1年となっているアレと同じ感じだ。
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——セルティア魔法学園学生寮『聖鳴館』
「こ、これが⋯⋯⋯⋯『聖鳴館』」
私は今『聖鳴館(男子寮)』の目の前にいる。ちなみに『聖鳴館(男子寮)』と『聖鳴館(女子寮)』の間には50メートルほどの空間があり、そこには屋根付きの休憩所のようなものだったり、手入れされた美しい花や木々などが並んでいる。
「うわぁ⋯⋯すごいきれいな場所じゃないか!」
私はその休憩所⋯⋯『東屋のような建物』に入って腰掛ける。その『東屋』は男子寮から近いので今後は私のお気に入り空間として利用しようかな。
「それにしても、聖鳴館の目の前は『武闘ホール』で、さらにその先に校舎、そして校門⋯⋯があるんですね。知らなかった」
いわゆる『縦長』に並んでいることがわかった。とはいえ、セルティア魔法学園の敷地は正方形なので、左右両翼にまだ敷地があり、そこには運動場、武闘場、プール、カフェルーム、トレーニングジム、ミニスーパー(コンビニみたいな)などが並んでいる。
「複合施設⋯⋯だな、まるで」
とはいえ、これは便利そうだ。
——『聖鳴館(男子寮)/1階』
さて、そんなこんなで現在、私は聖鳴館の一階にいる。
さっきも言った通り一階は一年生が使っているのだが、さらにそこには『平民・獣人・亜人』しかいないので、一階の広い共有ルームにいる学生らは教室に比べると皆寛いでいるように見える。
「さて⋯⋯と、じゃあ、早速自室へと向かうか」
私の部屋は一階の一番奥にある部屋なのだが、何とありがたいことに個室である。
本来、二人で部屋を使うのが普通なのだが⋯⋯おそらく、学生寮の人たちが『辺境伯家の嫡男』ということで私に気を遣ったのだろう。
「いや、待てよ? 気を遣ったというよりむしろ、『貴族と一緒の部屋なんぞ安らげるか!』ということでの隔離⋯⋯かな?」
まーおそらくそういうことだろう。
私だって逆の立場だったら貴族と相部屋なんて全力回避だ。
それに、一人で部屋を使えるのはありがたいしね。
役得♪ 役得♪
————『聖鳴館(男子寮)/自室』
「おーこれが、私の部屋⋯⋯か」
部屋にはすでにピカピカで家具など生活に必要なものはすべて用意されていた。
実は、昨日の時点で従者らが掃除や家具の運び入れなどをすべて終わらせていたので、『今日引っ越してきた何もない新しい部屋』というより『昨日の延長線上、いつもと変わらない部屋』という感じだ。
「ウチの従者さんってすごいな⋯⋯」
部屋の広さは一人用としてはかなり広い。三人で使うとしてもそれでも十分な広さだと思う。
そうして、自室の様子を一通り確認した後、外に出て食堂へと向かった。
——『聖鳴館(男子寮)/食堂』
「おお〜広い!」
食堂は日本のフードコーナーくらいの広さがあった。100人くらいは普通に入るんじゃないかな?
食事は1日3回『朝食・昼食・夕食』。土日は朝は無く『昼食・夕食のみ』となっている。
「異世界もの作品での学生寮の食事は1日2食となっているのが多い印象だったので1日3食あるのはすごく助かる。これって、やっぱりセルティア王国全体が豊かなんだろうな⋯⋯」
セルティア王国は農産物も海産物も取れる土地でどちらも毎年豊作・豊漁で、貴族だけでなく平民やさらに貧しい貧民、あと獣人や亜人たちも奴隷扱いとはいえ、ちゃんと飯にありつけているらしい。
『セルティア王国は周辺国に比べて奴隷への扱いが素晴らしい国』
これをセルティア王国に暮らす人々は誇りに思っている。
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「さて⋯⋯と、風呂でも入ってこようかな」
私は少し早めだがお風呂に入ることにした。
「おお! さすが広いっ!」
やはり⋯⋯というか、学生寮の風呂ということなので期待して入ると、その期待通り目の前に大浴場があった。ちなみに風呂は3階にある。なぜ、3階かというと、
「すごい景色⋯⋯!」
そう、なんと学生寮のくせして『露天風呂』があるのだ。
「す、素晴らしい。これは母国日本並みの温泉施設⋯⋯!」
感無量である。
ちなみに、当然ここは『男子寮』なので男子専用のお風呂だ。そして、同時にこの寮は男子寮ということで当然女性は男子寮に入れない。『異性入寮禁止』である。
しかし、実情は男子も女子も寮に侵入するのは多いらしい。
「まー思春期の彼らのことを考えたら気持ちはわからんでもないが、しかし、ここは学校の学生寮だからねぇ〜⋯⋯。やっぱり、見つかったら厳しいペナルティーとかありそうだよね」
しかし、何と驚きだが学園としては結構『黙認』しているらしい。
なぜか? それはセルティア魔法学園は『学びの場』でもあると同時に『将来の花婿・花嫁候補との出会いの場』という役割も兼ねているから⋯⋯だとか。
この話を聞いて私は驚いたが、まーただお堅いのよりはいいと思う。
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mitsuzo
 




