030「クラスメイト<平民視点>④」
「は、はは、初めまして! 平民のライズです、よろしくお願いします!」
僕の名はライズ。
平民だ。よって姓はない。
ただ、平民とは言っても両親は商人をしていて、自分で言うのもなんだけど⋯⋯王都の中でも大きな商会の1つなのでそこそこ裕福な家庭だとは思う。
僕は今『セルティア魔法学園』という場違いなところに来ている。はっきり言って帰りたい。
しかし、それは両親が許してくれなかった。というのも、さっきも言ったけどうちの両親は王都でも1、2を争う商会なので、少しでも王族や貴族とのコネが欲しかった。
そんなとき、平民に比べて極端に多い魔力量を持つ僕に『白羽の矢』が立った。
当然、僕は猛反対した。だって、こんなところに平民が入ったらイジメられるのは目に見えているからだ。しかし、父はほんの数年で王都を1、2を争う商会になるまでとなった『話術』を駆使して、全力で僕を唆した。
結果、見事に唆され今に至る。
で、でもさー、息子相手にそんな一流の話術まで使うってどうなのっ!?
そんな、まったく納得のいかないまま入学を果たした僕は『魔法自由科』の教室に入った。教室内は予想通り貴族で溢れかえっていた。教室に入った僕を一度見るが、すぐに目線を外した。学生服ではあるが顔を見て平民だと瞬時にわかったのだろう。
まー、下手に絡まれるよりは全然マシだけどね。
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教室には僕を合わせて平民は8名ほどいた。男子5名、女子3名という感じだ。あと、獣人⋯⋯あれは『ラビット族』の獣人かな? あと、エルフの女子もいた。エルフの子は「さすがはエルフ」という感じで可愛かったが、ラビット族の子も『人間寄り獣人』だからか結構可愛かった。⋯⋯学園に来てよかった。
ちなみに、僕の称号は平民なので当然『生活魔法士』だ。たまに『六大魔法』の称号を授かる平民もいるが僕はそんな平民見たことがない。ただ、僕と同い年の子で二人、六大魔法の称号を授かった平民がいると聞いた。
「ここにいない⋯⋯ということは騎士科か。いや、六大魔法の称号を得たというその二人の平民は魔力量も多いと聞いた。ということは魔法騎士科か?」
僕たち平民や獣人・亜人の入学希望者の場合、『六大魔法士』か『魔力量が基準以上あるか』で入学が決まる。つまり、言い方を変えれば魔力量が合格基準以上あれば入学できるとも言える。
とはいえ、『六大魔法』が使えない者がほとんどなので、学園に通おうと思う平民は主に『騎士科』に行く。理由は騎士科に入り卒業さえすれば『騎士団』に所属できるからだ。
この『騎士団』は六大魔法が使えないが剣術・武術に長けた平民が入る部署で、平民にとってこの騎士団に入るのは憧れとなっている。
ちなみに、六大魔法士で魔力量が豊富な者⋯⋯つまり貴族のエリートたちが入るのが『魔法騎士団』。団員は全員が六大魔法を駆使し、且つ、剣術・武術に長けた者たちばかりで、セルティア王国の『剣であり盾』と言われる最強集団だ。
で、僕は『魔力量』は多いものの、剣術も武術もできないので『魔法自由科』に入った。ていうか、そもそも、僕は『騎士団』には興味がない。入ろうとも思わない。僕の魔法学園へ入った目的は『人脈形成』なので、『100%卒業できる』という『魔法自由科』に入ったのは自然の流れだ。摂理だ。
学園卒業後は父の後を継ぐので、僕にとっての最重要事項は学園での『人脈形成』なのである。
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「う、嘘⋯⋯?」
先生が来て、ホームルームが始まると自己紹介となったのだが、そこで最初に挨拶をしたのが⋯⋯⋯⋯なんとセルティア王国第一王女のミーシャ・セルティア様だった!
ええっ!? な、何で、王族の人が『魔法自由科』にいるの?
王族なら『魔法騎士科』一択だよね? 何でわざわざ『魔法自由科』に?
何だ? 何がどうなっているんだ?
僕が盛大に戸惑ったのも言うまでもない。だって、王族だよ?! 正直『魔法自由科』に通う生徒というのは『貴族の派閥形成』の目的がほとんどだ。9割そうだと言っても過言ではないはずだ。
そんな『魔法自由科』に王族がいるのは前代未聞なのである。実際、周囲の貴族のご子息・ご令嬢方も皆、戸惑った顔をしていた。
「で、でも、これはもしかしてチャンスかもしれないっ!? も、もしも、もしも⋯⋯ミーシャ様と仲良くなれたら⋯⋯!」
そう言って、僕は恐れ多い妄想を膨らませる。たしかに平民の僕がミーシャ様と仲良くなるなんて相当厳しいことはわかっている。でも、3年間同じクラスメイトになるんだ。可能性はゼロじゃないはずだ!
そうして、無謀とも言うべき高い目標を掲げ一人気合いを入れていると、
「初めまして。ウォーカー領よりまいりましたラルフ・ウォーカーと申します。東の辺境の田舎者ですので何卒いろいろと教えていただければと存じます。3年間、宜しくお願いいたします」
え? ウォーカー辺境伯?
そう言えば聞いたことがある。ウォーカー辺境伯は嫡男ではなく、次男が次期当主になると⋯⋯。そして、周囲の噂では「ウォーカー家の嫡男は辺境伯家なのに称号が生活魔法の称号らしい」とか「1つ違いの弟のヘンリー様が嫡男よりも称号はもちろん、全てのおいて優れているらしい」とのことだった。
実際、『魔法自由科』にいるということであればその2つの噂は本当のことなのだろう。
なので、僕はこれまでそのウォーカー家の嫡男を『ドラ息子』というイメージをしていた。弟に次期当主の座を奪われた哀れな嫡男⋯⋯と。
しかし、今目の前で自己紹介をしたウォーカー家の嫡男⋯⋯ラルフ・ウォーカーは、僕のイメージを180度覆した。
「な、何て、きれいな所作なんだ⋯⋯」
その気品漂う挨拶は同い年にはまるで見えなかった。
「こ、こんな、傑物のような雰囲気を醸し出す人が次期当主になれなかったっていうのか?」
まー考えられるとしたら、称号が『生活魔法士』だからというとこだろう。
でも、それでも、この⋯⋯何と言うか⋯⋯この人の魅力であれば、例え、称号が『生活魔法士』でも次期当主にしたほうがよかったんじゃないのだろうか?
「あ、いや、それは無理か。だって、『東の辺境伯』だものね⋯⋯」
セルティア王国の『辺境伯』とは侯爵の次に位の高い爵位。そして、隣国と接する領地を任される。だから、辺境伯家の当主の条件は最低でも『六大魔法の上級士』以上が必要となる。
「⋯⋯そうか。でも、これほどの人物なら学園で何か結果を残すんじゃないかな」
僕は、ミーシャ様だけでなく、このラルフ・ウォーカー様とも仲良くなろうと心の中で決心した。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo
 




