118「生活魔法帝と古代遺跡(2)
「まず、えーと⋯⋯これまで私たちが教えられてきた歴史ではアガルタ大陸が誕生したのは1万年前で⋯⋯それから1000年前までは『邪神』が自身の眷属である『魔物』を産み出して世界を支配していた⋯⋯そういう歴史だったと思いますが⋯⋯これが偽りだと言うのですか?」
「⋯⋯あくまで、古代遺跡で発見された『メモ書き』の内容ではな」
「⋯⋯その後今から1000年前頃にオプト神がこの世界に現れ、その眷属である魔物を駆逐し、邪神を封印したという話も嘘⋯⋯だと?」
「ああ。しかも、この後オプト神は現在の王族や一部の貴族と協力関係を結び、現在の世界のルールを作りあげたとあった」
「そ、そんな、突拍子も無いこと⋯⋯できるわけ⋯⋯」
「まー普通はな。しかし、このメモ書きにはこうも書いてあった⋯⋯⋯⋯『創世女神アルファ様はこの世界を生み出し、そこにいる生き物すべてに安寧と豊穣を与えた。しかし、オプト神が現れ、その豊かさを自分だけのものとするため、この大地の生命を次々と破壊した』と」
「な⋯⋯オプト神様が⋯⋯ですか?」
「ああ、メモ書きにはそう書いてある。そして、そのオプト神は次々と生き物を駆逐していく中、創世女神アルファ様と協力してオプト神の脅威を食い止めようとするものが現れた。それが『人間族』⋯⋯我々の先祖らしい。他にも『獣人族』『エルフ族』『ドワーフ族』⋯⋯また『精霊神』や『龍神』といった神の眷属らもその創世女神アルファ様のもとに集まったそうだ」
「す、すごいメンバーじゃないですかっ!?」
「まさに、この星に住むすべての力ある者たちが集結したわけですね」
「で! で! どうなったんですか!」
気づけば、皆レイカ先輩が語る『メモ書き』の続きが気になって仕方ないという状況になっていた。⋯⋯もちろん私も。
「すぐに倒されると思われたオプト神だったが、しかし、オプト神の眷属である魔物たちにも強力な魔物が存在していたらしく、その強さは『精霊神』や『龍神』にも匹敵する強さだったらしい」
「ええっ?! 神の眷属と同等の力⋯⋯ですか!!」
アリスが一人、レイカ先輩の言葉に大きなリアクションを見せた。
「あ、あの、アリスは精霊神や龍神⋯⋯という存在を知っているんですか?」
「もちろん! 生活魔法の研究が主ではあるけど古代史や神話が個人的に好きなの。だから、その辺の知識はそれなりに持っているの。『精霊神』とは文字通り『精霊族が崇める神様』で、『龍神』は『龍人族が崇める神様』という存在よ」
「精霊族の神⋯⋯龍神族の神⋯⋯」
「私も『精霊神様』はもちろん知っている」
「僕もー!」
「セリ、ソアラちゃん⋯⋯そうか、エルフ族にドワーフ族だもんね」
「レイカ先輩⋯⋯結局それからどうなったんですか?」
そう言って、アリスがレイカ先輩に続きを促す。
「結果的に、創世女神アルファ様たちはオプト神を追い詰めたらしい」
「「「おお!」」」
「だが、ここで⋯⋯実はこの続きはなかった」
「ええっ?! せっかくいいところなのに!!」
アリスがそう言って思いっきり落胆する。いやまったくその通りである。
「ただ、その後の後日談というか、その後の歴史の話はあった。そして、そこに『生活魔法』の記述があった」
「「「⋯⋯え?」」」
********************
「「「生活魔法の⋯⋯記述がっ?!」」」
私やアリス、セリ、ソアラちゃんが創世女神アルファ様とオプト神の戦いのその後の続きがないことで、思いっきり落胆したが、しかし、その後レイカ先輩の『生活魔法の記述が見つかった』ということで再び、テンションが上がった。
「な、何が書いてあったんですか?!」
アリスがレイカ先輩に鼻息荒く問いかけた。
「お、落ち着け、アリス! まず、そこにはこう書いてあった⋯⋯『今では生活魔法と呼ばれ、人々から蔑まれるようになった。これはまさにオプト神とその協力者たちの勝利と言えよう。ああ⋯⋯今では生活魔法が全属性魔法であると知る者は殺され、私以外にはもうほとんど生き残ってはおるまい』と」
「「「全属性⋯⋯魔法っ!!!!」」」
皆が驚く中、私は「やっぱりそうでしたか」とこれまでの生活魔法の研究でそうだと思っていたことがついに確信を得たという、一人喜びを感じていた。
「ああ。この人物は死ぬ前にということでこのメモを残したらしい。『⋯⋯せめて、この私の記憶をこのメモに残しておく』と記してメモは終わっていた」
「「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」」
しばし、全員が沈黙する。
そして——、
「えーと、色々と衝撃な話が多くて情報過多だし、それにその話がどれだけ真実かは不明だけど⋯⋯でも、とりあえず『生活魔法は全属性魔法だった』っていう話⋯⋯これについては信憑性は高いと思うわ」
「「「アリスっ?!」」」
セリ、ソアラちゃん、レイカ先輩がアリスの発言に驚く。そして、
「私もアリスと同意見ですね。おそらく生活魔法が全属性魔法というのは間違いないと思いますよ」
「「「ラルフまで!」」」
「おい、ラルフ! お前、そこまで確信するのは何か知っているのか?」
レイカ先輩がすごい形相で問い詰めてきた。
怖い、怖いです⋯⋯レイカ先輩。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
https://ncode.syosetu.com/n3084hz/
『毎週土曜日13時更新』です。
よろしくお願いいたします。
mitsuzo




