106「巡り合わせ〜ラルフと魔法騎士科の面々(1)〜」
「⋯⋯ケビン。なんだ、ここは?」
「ここは、生活魔法クラブの部室棟だ」
「「生活魔法クラブ?」」
初めて聞いた。そんなクラブがこのセルティア魔法学園にあったのか?
この⋯⋯六大魔法絶対主義のこのセルティア王国の教育機関に。
私はその事実に軽い衝撃を受けた。
「それにしても⋯⋯何でここに?」
マリア嬢が私が今抱えている疑念をケビンに問う。
「ここの生活魔法クラブはな、生活魔法を研究しているクラブだ」
「「はあ⋯⋯」」
そりゃ、そうでしょ。
「で、この国は六大魔法絶対主義だろ?」
「「はあ⋯⋯」」
そりゃ、そうでしょ。
「で、このクラブはクズ魔法と言われる生活魔法を研究して、最近では『生活魔法版治癒の魔道具』を極秘裏に開発・販売しているそうだ」
「「はあ⋯⋯」」
そりゃ、そうで⋯⋯⋯⋯え?
生活魔法版治癒の魔道具ぅぅぅ!!!!
「お、おい、ケビン! 今、なんて⋯⋯」
「だから⋯⋯この生活魔法クラブで『生活魔法版治癒の魔道具』を極秘裏に開発・販売しているんだよ!」
「な⋯⋯そんなバカなっ?!」
私はケビンの発言に度肝を抜く。
「え? 生活魔法版の治癒? え? え? それって、どういうことですか? 治癒って、たしか六大魔法の『光魔法』にある魔法ですよね? どうして、生活魔法に? ていうか、それを魔道具にしたんですか? え? え?」
どうやら、マリア嬢はプチ混乱しているようだ。無理もない。
「ていうか、ケビン⋯⋯お前、そんな情報どこで⋯⋯?」
「ある筋からスレイプニール家に連絡があってな⋯⋯」
「連絡?」
「⋯⋯ああ。『生活魔法クラブに協力してくれないか?』とね」
「何っ?!」
「えっ?!」
「あと、こうも言ってた⋯⋯『我々は既得権益貴族を打倒したいと思っている勢力だ』とも」
「「ええええええええっ!?」」
********************
「お、おい、ケビン? お前、その話って⋯⋯現国王を批判しているのと同じになるぞ? つまり、謀反⋯⋯」
「ああ、わかってる。これがどれだけやばい話かってことはな。しかし、スレイプニール家は協力することにした。そして、俺もそれは受け入れているし、俺にとっても望むものだからな」
「ケ、ケビン⋯⋯お前⋯⋯」
「ケビン君⋯⋯」
3人に沈黙が流れる。
「お前らには協力してくれとは言わない。ただ、さっきの既得権益貴族の奴らに言った啖呵は⋯⋯これが理由だ。まー遅かれ早かれ、いずれ対立することになっていただろうしな。それがたまたま今回だったってだけの話だ」
そう言って、ニカッと笑うケビン。
「あ、あの、ごめんなさい!」
「「マリアちゃん(嬢)?」」
「わ、私が、私のせいで⋯⋯! ケビン君に迷惑が⋯⋯」
「はっはっは、マリアちゃん! そんなことは全く気にすることはない! ノープロブレムだ!!」
「ケ、ケビン⋯⋯君⋯⋯」
マリアの心配をケビンが軽く一笑する。
「フン、それは私も同感だな」
「え? アリス?」
「我がオネスティ家にそのような話があったかどうかは定かではないが、だが少なくともオネスティ家は中立派だ。今は表立っての協力は難しいがいずれどちらかにつくのか判断を迫られる時が来るだろう。その時、父の助けになるような情報は一つでも多ければいいからな。ということで、私はその範囲内で関わらせてもらうよ」
「アリス!」
「それに、個人的に私も既得権益貴族、大嫌いだしっ!!」
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「そ、それじゃあ、いいんだな? 中に入るぞ?」
「ちょ、ちょっと待て!」
「な、何だよ、アリス?!」
「中に入るのはいいが⋯⋯お前どうするつもりだ?」
「どうするって⋯⋯入部するつもりだけど?」
「え? そうなのか! 私はてっきり生活魔法クラブの顧問に話を聞きに行くとか、さっきのことを相談に行くとか⋯⋯そういうつもりでいたのかと⋯⋯」
「いや? だって、今後のこと考えたら生活魔法クラブに入部したほうがいろいろと都合がいいかと思ってな」
そ、そうか。たしかにケビンの⋯⋯スレイプニール家の人間の立場からしたらそれが都合がいいし、理にかなっているか。
「大丈夫。アリスもマリアちゃんも俺の付き添いで来ただけ⋯⋯ってことでいいから。実際そのつもりだったしな」
「⋯⋯ケビン」
「⋯⋯ケビン君」
「ま、そういうわけだから、あまり気にしないでくれ。もっと気楽に⋯⋯」
「おい、何者だ⋯⋯お前ら?」
「「「っ!!!!」」」
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