101「エミリー・クライオット(2)」
「私、ずっと迷っていたんだけど⋯⋯やっぱり生活魔法クラブに入りたくて⋯⋯それで入部に来たの!!」
「「入部?」」
「うん」
見た目ライトブラウンの髪色でボブカットな彼女はパッと見『快活美少女』という感じで、何と言うか、生活魔法クラブに入るような動機はないような雰囲気⋯⋯と思っていたら、
「そういや、『魔法オタク』のお前にしては今までこの生活魔法クラブに入らなかったのは意外だったな」
「え? 魔法オタク?」
テイラーの口から『魔法オタク』という言葉が出て、私が横で軽く驚いているがそんなこと気にしていないどころか、
「オタク言うなし!『魔法の深淵を覗く者』と言え!」
と、若干『厨二病』も患っている節もあった。
「だって、仕方ないでしょ! 父から『待った』をかけられていたんだもの」
「え? キャスター様が?」
「うん。父が『もう少し様子を見てからだ』とずっと言われていて⋯⋯それで私、生活魔法の研究にはあまり関わらないほうがいいのかなとか色々考えていたの」
ちなみに『キャスター』とはエミリーの父親『キャスター・クライオット伯爵』のことだとテイラーが横で教えてくれた。
それにしても、そのエミリーさんのお父さんが「待て」とか「様子を見てからだ」とか言っていたのは、おそらく『既得権益貴族』に対しての警戒なのだろう。そして、エミリーさんもそのことに懸念があったというわけか。
やっぱり、それだけ『生活魔法』というのは警戒されているんだな⋯⋯。
「でも、『魔法の深淵を覗く者』という二つ名を持つ私としては⋯⋯」
((あ、すごい気に入ってんだ、その自作の二つ名⋯⋯))
「生活魔法の研究こそが魔法の深淵の入口だと思っている私としては⋯⋯! やっぱり、生活魔法クラブへの入部を諦めることはできなかったのっ!!」
「な、なるほど⋯⋯」
「ま、まー落ち着け⋯⋯」
そう言って、思いっきり詰め寄ってきたエミリーの気迫に二人が思わずたじろぐ⋯⋯その時だった。
「何だ、お前ら? そこで何やってんだ?」
「あ!」
「レイカ先輩!」
そこに、レイカ・シュバイツァースケバン先輩がやってきた。
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「何? 入部希望?」
「はい。彼女は⋯⋯」
「レ、レイカ・シュバイツァー様! 初めまして! キャスター・クライオット伯爵の娘エミリー・クライオットと申します!! レ、レイカ・シュバイツァー様に会えて光栄でありまふゅ⋯⋯っ!?」
((あ、噛んだ))
「キャスター・クライオット伯爵⋯⋯ああ、そうだったのか。たしか私の父と⋯⋯」
「は、はい! 懇意にさせていただいていると父から聞いております!」
「うむ。キャスター様の話は聞いているよ。そうか、エミリーは生活魔法クラブに入部希望なんだな?」
「はい!!」
「「⋯⋯⋯⋯」」
私とテイラーは目の前でやり取りをするレイカ先輩を見て唖然とした。だって普段のスケバン言葉じゃなく、いかにも侯爵令嬢然とした言葉遣いなんだもの。⋯⋯正直普段とは別人のレイカ先輩がそこにいた。
「じぃぃぃ⋯⋯⋯⋯何か言いたいことでもあるのか、お前ら?」
「「(ビクッ?!)い、いえ?! そんなことないですぅぅ⋯⋯!!」」
「ふ〜ん⋯⋯それならいいが」
こ、怖ぇぇ! あの人、エスパー? 心の声聞こえてんのかな?
私とテイラーはレイカ先輩の相変わらずの勘の鋭さに恐怖を覚える。
「まーいい。とりあえず、フリオ先生が中にいるから紹介してやる。ついてこい」
「は、はいっ!!」
ということで、レイカ先輩と一緒に中へと入るエミリーさんの後ろから、俺たちも何となくついていくことにした。
「ん? どうしました、皆さんお揃いで?」
「フリオ、入部希望の一年だ」
「ええ?!」
「ど、どうも! 魔法自由科1年エミリー・クライオットです!!」
エミリーさんはフリオ先生がいる魔道具研究室に入るや否や、元気よく挨拶をし、そして、そこから一気に捲し立てた。
「わ、私は! 小さい頃から魔法を勉強することが大好きで! それで⋯⋯それで⋯⋯魔法自由科に生活魔法クラブという部活があることを知って、それで入部しにきました! 本当は入学してすぐに入部したかったのですが、父に少し待つよう言われすぐに入部できないでいました。ですが、魔法への想いは強く、それこそ誰にも負けないくらいだと自負しております! ですので、どうか入部を認めてくださいませぇぇ!!」
エミリーさんの鬼気迫る口上に全員がポカーンとなる⋯⋯が、ここで意外な言葉がフリオ先生から飛び出した。
「え、えーと、これは奇遇⋯⋯と言うのでしょうか?」
「え? 奇遇?」
「エミリー君が来る少し前に、ちょうど同じように入部希望の生徒が来まして⋯⋯」
「「「「「え?????」」」」」
「それがこちらの⋯⋯」
「どうも。魔法自由科1年⋯⋯セリです」
「え?」
「魔法自由科⋯⋯1年?」
と、フリオ先生きっかけで私たちと同じ魔法自由科の1年の『セリ』という女子生徒が低めのトーンで挨拶をした。⋯⋯ていうか、
「び、美少女エルフ⋯⋯っ?!」
「は?」
私はそのセリという子の特徴的な『とんがった長耳』を見て、思わず想いを言葉にしてしまう。すると、そのセリーという子から、それはそれは身も凍るような蔑んだ目を向けられる。
「あ、いえ⋯⋯その⋯⋯失言でした。大変申し訳ございません」
「⋯⋯フン。別にいいけど」
とりあえず、すぐに先ほどの失言を謝ると全然納得いっていないであろう様子のセリから一応の謝罪を受け取ってもらった。
「おい、ラルフ? 貴様、セクハラ発言なんていい度胸じゃねーか?」
「そ、そうですよ、ラルフ・ウォーカー! 今のはアウトです!」
「いや、気持ちはわかる。わかるが⋯⋯口に出しちゃダメだぜ、ラルフ」
「ラルフ君。⋯⋯反省を」
「大変申し訳ございませんでしたぁぁ!!!!」
私が皆さんに全力で謝罪を敢行していると、
「ふあぁぁ⋯⋯何? うるさいなぁ〜、何事ぉ〜?」
と、魔道具研究室に入ってきたのはソアラちゃん。
「やあ、ソアラちゃん。よく眠れましたか?」
「ちょうど眠ろうかなぁ〜ってときにこの部屋で何だか騒ぎ出すから目が覚めちゃいまし⋯⋯⋯⋯ええっ?!」
「「「「「?????」」」」」
ソアラちゃんが部屋に入り、フリオ先生に話しかけた最中⋯⋯急に固まった。なんだ?
「セ⋯⋯セ⋯⋯」
「「「「「セ?」」」」」
「セリーナ・シルフェ⋯⋯第三王女様ぁぁぁぁ!!!!」
「「「「「え? ええええええええ!!!!」」」」」
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo




