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道中、そしてお手並み拝見!

第三話 『道中、そしてお手並み拝見!』



「……ところで、君ってなんでトレジャーハンターになろうと思ったの?

収入も不安定で生命の危険もあるんだし、普通の人間ならなろうとも思わないけど。」



 不意に目の前を歩くルキアが背を向けながら聞いてきた。

 


「そりゃあ勿論金のためだ。これでも元々上流の出なんでね。普通の仕事をして普通のものを食べて、平々凡々な生き方なんて分からない。

……落ちぶれ貴族が死んだとしても、誰も気には止めないだろ。」



 出発してからすでに1時間は歩きっぱなしに加え、絶対無駄に思い荷物を持たされていたら口調も雑になってくる。



「なら、出自はともかくほかの奴らといっしょだね。

世間からしたら探検家なんてやってるのは金に困った貧民で、しかも理解の及ばないナニカを扱う変人たちだから。

オマケに、僕たちがもたらす恩恵にあやかっているはずの王国政府サマだって、ろくに補助金なんて出しやしない。

見たでしょ?ギルドのぼろぼろ加減。

結局トレジャーハントっていう仕事は下の下、誰も成りたがらない。…………でも君、向いてるよ。生命への頓着がないのは良い事だから。」



「じゃあお前は……その、いつ死んでも良いってことか?」



「そうとは言ってない。ただ、人間死ぬときは死ぬ。

だからぜーんぶ覚悟してるだけ。」


 

 言い方はいちいち鼻につくが、ようやくコイツの人間らしいところを見たかもしれない。

 コイツもコイツなりに仲間のこととかギルドのことを考えているのだろう。

 ……それにコイツからは、どことなく諦めのようなものを感じる。俺よりも絶対に若いだろうに。

 


「ところで、ダンジョンってどこにあるんだ?

今のところずっと林道で、終わりが見えないんだが……。」



「危機感なさすぎ。もう見えてるし、僕たちはもうダンジョンの中にいるよ。」



「もう見えてるって言ったって林しか……まさか、

「そのまさかだよ。この林道の一区画がまるごとダンジョン。正確に言えばダンジョン上部だけど。

軍団アリは『将軍アリ』を殺さない限り無限に巣を作る。

しかもとびきり大きな巣をね。

だからその巣自体がダンジョンに指定されて、その度にこうして制圧しなきゃいけないんだよ。」


 

 一つの生物の営みそれ自体が、一つのダンジョンを形作るだなんて全く想像できない。

 ……そもそも、アリの巣って人が潜れるような大きさだったか?



「……ちなみに、そのアリの大きさは?」



「僕と同じぐらいだから……縦1.4m、横2mぐらい。

当然アゴもサイズに比例して強靭で、噛まれたらまあ……骨折ですめば良い方だね。」



 ……聞かなければ良かったし、見たくないものが見えてしまった。歩いている丁度行先に、ヒト一人が余裕で入れるような大穴が、ポッカリと口を開いているのだ。



「アレだね。じゃ、ちょっと離れてて?死にたいなら別だけど。」



 ルキアが俺の前に出て杖を構えるやいなや、木製の杖の先端に嵌め込まれた結晶が輝き、穴の数m上に光球が現れる。ルキアがなにか得体の知れない言語を唱えるのと共に、光球はより大きくより紅くなっていく。



「初級火魔法【ファイアーボール】」

 


 あとはもう一瞬だった。

 穴に吸い寄せられるようにして落ちた火球は内部で爆発し、地響きと崩落を引き起こした。ルキアの足先数cmから先は巣が崩れて蟻地獄のようになっていた。

 これでは巣の中にいたアリは押し潰されて全滅、生きていたとしてもそのまま生き埋めだろう。

 唯一、異変を察知して穴から首を出したアリが一匹いたが、火球に首から下を焼却され、蟻地獄の中心に転がっていた。



「ま、こんなもんでしょ。巣ごとぶっ壊しちゃえば奥まで行って将軍を叩く必要もないし、これが一番早いと思う。

あとは数時間ここで待機して、巣に戻ってくるアリを殺して終わり。その袋の中に色々便利なの入ってるから取って?」



 ……有無を言わさず、いや、こんなものを見せられてしまったら逆らおうなんて気は微塵も起きない。

渋々今まで自分が背負ってきた袋を開けてみる。



・ライター

・水瓶

・土の入った鉢植え

・食器類



「……色々と説明を貰っても?」



「食器以外は遺物。ライターは火、水瓶は水を無限に出せる代物。鉢植えは植えた作物が小一時間で育ちきるよ。全部C級遺物だから壊さないでね?」

 

 

 ……なんにも知らない男にこの量の遺物を背負わせていたのか。自分の勝手な想像だが、遺物というものはもっと仰々しく扱われるものだと思っていた。

 いや、コイツが異常だと思いたい。そう思おう。


 

 ……そしてその後も結局、残党アリも光の槍だか風の刃だかで瞬殺。俺の出る幕は無かった。

 

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