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第31話 町民体育祭 (14)

「春海さん、送ってきたから」

「そう、ありがとう」


 車で待っていた花江に報告すると、安心したように花江が微笑んだ。再び走り出した車の中は何となく静かに思えて、オーディオのボリュームを少しだけ上げてみる。



「春海さんって、お酒飲むといつもあんな風なのかな?」

「今日は準備や片付けで一日中ずっと動きっぱなしだったらしいから、酔いが回りやすかったみたいよ」

「ふーん」


 お酒とはそこまでして飲みたいものなのか? 未知の飲み物に疑問を浮かべつつ運転に集中していると、家の駐車場に車を停めたタイミングで、後ろから声が聞こえてきた。



「歩はいつの間に春海と仲良くなったの?」



「……別に。

 仲良くなんてなってないから」

「『歩』って呼ばれてるのに?」

「!? そ、それは、春海さんが勝手に呼んでるだけだもん」


「そう」


 強がりを見透かされるような笑いを含んだ返事に黙ったままエンジンを切る。


「別に良いじゃない。

 むしろ誰かと関わろうとしてくれるのは私としても嬉しいし」

「…………」


「私に気を使う必要なんてないから、遠慮しなくて良いわよ」


 歩の返事を待たないまま、花江が停まった車から降りて歩き出す。




「………………遠慮するに決まってるじゃん」


 真っ暗な車内で小さく呟いた言葉は誰にも聞かれることなく闇に溶けていった。

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