第24話 町民体育祭 (7)
第二、四走者は応援席側からのスタートらしく、目の前には様々な色の旗を掲げたテントが並んでいる。地区対抗とあって、応援団らしき人たちが鳴り物を片手にテント前で陣取っており、掛け声に合わせて観覧者たちが盛んに拍手を送っている。
『それでは、これより最後の種目、地区対抗リレーを始めまーす。
まずは女子の部です。その前に──』
スピーカーから聞こえる説明を聞き流しながら、その場でひたすら身体を動かしていると、本部席前からぞろぞろと人が出てきた。
『皆様ご存知の通り、今年7月より地域起こしプロジェクトが一機関として立ち上がりました。
それに伴い、このおおかみ町をより良くしていくためにこちらの方々がスタッフとして活動します。通称“おおかみファイターズ”のメンバーです。これから、様々な場面で活躍してくれる事と思います。どうぞ、宜しくお願いします!』
アナウンスと同時に、横一列になったメンバーが一斉にお辞儀をする。ぱちぱちと場内に広がる拍手につられて、歩も拍手を送った。
『お披露目を兼ねまして、この競技には地域起こしプロジェクトのメンバーも特別枠でリレーに出場します。若い力を見せつけてくれることでしょう。皆様、応援宜しくお願いします』
一際大きな歓声が起き、拍手が続く。
『それでは、ここで出場メンバーから一人ずつ自己紹介と、意気込みをお願いします』
その一言は予想外だったらしく、前に並んだ春海達が一斉に慌て出し、その様子に笑いが起きた。わちゃわちゃとしていたもののどうやらまとまったらしく女性が四人、前に出てくる。
『皆さん、こんにちは。
地域起こしプロジェクトで働いています、小川美奈です。最年少という事もあり、まだまだ勉強不足ですが、一生懸命頑張っていきたいと思います。宜しくお願いします』
リレーを走る順番に自己紹介するらしく、次いで春海が一歩前に出てくるのをどきどきしながら見守った。
『皆さん初めまして。
4月よりおおかみ町に引っ越してきました、鳥井春海です。町の方々に印象を聞くと、『何もない田舎町』だとよく言われます。実際、電車は通ってないし、バスは毎日一時間待ちだし、コンビニは一軒だけだし、初めて来たときは凄く困りました』
春海のおおかみ町自虐ネタに、どっと場が盛り上がる。
「この町の良いところもそうでないところもここにいる方々の方が私よりもずっと詳しいと思います。
だけど、他所から来た私だからこそ分かる町の良さを見つけ、皆さんにもっとこの町を好きになってもらえたら良いと思っています。
どうぞ、宜しくお願いします」
ぺこりとお辞儀をした春海が拍手に包まれる。笑いながら次の人へマイクを渡す春海をただじっと見守っていた。