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第191話 一歩、前へ (3)

 落ち着きを取り戻した春海が「話があるの」と花江と勇太に向き直った。二人が、彼女の名前を一度も出さないのは、自分を慮ってのことだろう。緊張する春海に、二人とも真剣な表情へと変わる。

 

「あの、花江さん、勇太。

 あたし、少し前に、歩と再会したの」

「え!? 歩と会ったの?」


 花江の驚きに満ちた態度に、昨夜の歩の言葉が正しかったことを知る。


「歩が、花江さんとは会ってないって話してたけど。本当だったのね」

「会ってないというか、あの子とのやり取りは、メッセージばかりなのよ。それも、こちらから連絡しないと、返ってこなくて。最後にちゃんと会ったのは、確か、お正月だったかしら」

「なんだか意外。

 てっきり、花江さんには色々話してると思ってたから」


 かつての二人を思い浮かべながら、目を丸くする。「そんなことないわよ」と花江が緩く首を振った。


「ここにいた頃だって、肝心なことは最後まで打ち明けてくれなかったもの。結局、私は、歩にとって、ただ都合のいい存在だったのよ」

「そんなことない。

 歩は、いつだって花江さんを大切に思ってるわよ」

「三年前って、あいつ十九才だったんだろ?

 大人でも子供でもない、そんな微妙な年齢のヤツが、自分のことを何もかも打ち明けるわけないじゃない。

 きっと、花江さんに心配かけたくなかったからこそ、言えなかったんだよ」


 花江が二人の言葉を噛みしめるように、下を向く。


「そう、よね。

 歩も、もう大人なんだものね」


 小さく呟いた花江が、遠くを見るように目を細めた。ぐっと柔らかくなった表情は、姪の姿を想像しているのかもしれない。


「あ、話の続きがあるのよね。ごめんなさい」


 慌てる花江を前に、こほんと咳払いする。


「それで、その」

 

 たった一言が、なかなか言い出せない。二人の不思議そうな視線に、じわじわと頬が赤くなる。気がつくと、椅子から立ち上がっていた。


「あたしっ、今、歩と付き合ってる、の」


「「ええっ!?」」


 結局、ぎこちない言葉となった友人への報告に、今日一番の驚いた声が重なった。

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