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みんな異世界が好き  作者: らーきー
8/12

あの、ゲームがしたいんですが

リアラちゃんはどこへ行ったのか


「あの、ゲームがしたいんですが」


買い物から戻った俺は、ふとゲームをしたくなった。

対戦ゲームである。主に俺は見知らぬ人とオンラインでバトルをしている。


「どうして?理由を聞かせて?」

「ゲームをするのに理由なんて要るんですかね」


俺のゲームプレイを阻んでいるのは、女神アルセイヌ。

いまいちよくわからない理屈で俺を困らせる存在で、外出前に代理の精霊・リアラとチェンジしていたはずだったのだが。


「実に興味深いですね。ゲームという非生産的な行為にいそしむ理由、それは何ですか?」

「頭の体操さ。思考力の訓練というか、鍛錬というか、そういう効果もあると思うぞ」

「それは詭弁です。効果などではなく、あなたが『したい』と思う理由を知りたいのです」

「それは・・・うまいこと立ち回って、対戦相手に勝利するのが気持ち良いからだろ」

「気持ちが、良い。ふむふむ、それはなぜですか?」

「少なくともその相手より俺は、そのゲーム内で強いってことになれば、相対的に幸せな感じなんじゃないかな」

「貴方は強くなりたい、と?」

「いや、別にそんなんじゃないよ。・・・いや、そんなんか。他人より強くなりたいわけじゃないけど、今の自分より強くはなりたいかな」

「果てして、ゲームをすることが『強くなる』ことなのでしょうか」

「うっ・・・」


言葉に詰まった俺は、部屋を出てキッチンに向かい、缶ビールを取って自室に戻った。

そして缶ビールを飲みながら、話を再開した。

ちなみに、ノンアルコールである。


「ゲームってのはな、強さを感じられるんだ。俺のやっているゲームではな、オンライン対戦をする毎に世界ランクってのが上下する。そもそもゲームってのはルールがあって、勝敗が明確に定まる。だからこそ、自分の成長が実感できるんじゃないかと思う」

「対して人生というものは、数値化することが難しく、成長の実感が沸かない、そういうことね」

「そう・・・なのかもしれない」


俺はビールテイスト飲料を少しずつ飲みながら、女神に答える。


「それなら、簡単なことです。人生を数値化すればよいのです。あるいは、ルールを定めましょう」

「というと?」

「例えば、今あなたの部屋は相変わらず散らかっています。これを評価します」


<女神アルセイヌの部屋評価(ざっくり版)>

1点:生活するのが困難であるレベル

2点:生活はできるが、散らかっているレベル

3点:特に散らかっているという印象は受けないレベル

4点:おしゃれである。魅力がある。


「ざっくり言うと、こんなところかしらね」

「これでいうと、今の俺は2点というわけか」

「3点を目指してみてはいかがでしょう」

「うん。数値化すると、少しモチベが出てきた気がする」


今日の女神は多少はマシな話をしている気がする。


「しかしだなぁ、それとこれとは別というか。ゲームしたいんだけどなぁ」

「どのようなビジョンをお持ちですか?」

「対戦ゲームで、いろんなキャラが選べるんだけど、キャラには種類があってね。近接格闘型、中距離剣術型、長距離射撃型っていう三つなんだけど。射撃型で遠くから攻撃していれば、安全に相手を倒せるんじゃないかと思ってね、試したいんだ」

「それでは、試してみてください。あなたの頭の中で」

「・・・。対戦スタート。俺は遠くから攻撃を仕掛ける。相手は避けつつ俺に近づいてくる。近づいてきた相手に俺はタックルを仕掛ける。すると相手はシールドを張る。俺の攻撃が止んだ瞬間に相手はシールドを解き、反撃してくる。俺は負ける」

「負けるじゃないですか」

「もう一度。今度は近づいてきた相手に対し、ジャンプ攻撃を仕掛けつつ距離をとる。距離がとれれば遠距離攻撃を仕掛ける。その繰り返しだ」

「いいでしょう、わかりました。ただし条件があります。あなたのタスクをひとつ完了させてください」

「タスク?社会人だし宿題とか無いけど・・・そうだな、とりあえず資格試験の参考書でも注文しとこう」


ネットで調べてみると、俺の取ろうと思っていた資格試験について、リニューアルが実施されることがわかった。

リニューアルでは出題範囲が広がるのだが、それに対応したテキストは今から3~4か月くらいしないと出ないらしい。


「それなら仕方がありませんね。多めに見ましょう」

「待って」


そう言って俺は散らかっていた段ボールと買い物袋を片付けた。

買い物袋は、ごみ袋の代用として使えるかもしれないと思って取っていたのだが、無駄と思える分はゴミ箱に突っ込んだ。


「土は土に、ゴミはゴミ箱に。紙は紙に、プラスチックはプラスチックに。部屋はまだ散らかっているけれど、『部屋の掃除』のタスクは少し進んだと思うぞ」

「いえ、十分です。『段ボールと買い物袋を片付ける』というタスクは完了されました」

「そうだな。しかしアルセイヌ、さっきまで俺にあった『ゲームしたい』という衝動がどこかに行ってしまったのだが」

「でしたら、無理にゲームをされる必要はありません。引き続きタスクを進められることをおすすめします」


こうして俺は、部屋の掃除、片付けを進めた。

まだきれいにできる箇所は残っているが、今日やるべき片付けとしては納得のいくところまでいけた。


「少し、外に出ましょうか」

「ああ、そうだな」


最近は運動不足のような感じがあるので、少し歩こうと思う。



実はネットで調べものをするときに、何かの拍子でお笑い芸人の動画(5分弱)を観たのだが、それは異世界ではないと思ったのでセーフとする。

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