女神と水晶玉
創造主は君自身だ。
それは、「おっぱい」だった。
かつてない感覚が、俺の心を満たしていく。
ふと我に返る。
「誰だ、お前は!」
「私はアルセイヌ。」
「アルセイヌ?アルセーヌ・ルパンのような名前だな」
アルセーヌ・ルパンというのは、フランスの推理小説に登場する怪盗の名前だ。
「それで、この状況は何だ?何をしに来た?」
「あなたは先ほどの世界で、失敗されたのです。そのリカバリーのために、私がここに来たというわけです」
「何を言っているのかわからないな。」
ここで状況を整理すると、俺は布団に入っていて、横を向いて寝ている状態だ。
そして、彼女は後ろから俺に抱き着いてきているような、そんな構図である。
もし強盗であれば、もう俺の命は無いようなものだし、無駄に焦ることも無いと観念していた。
もしかすると、まだ俺は夢を見ているのかもしれない。
そういう気もしていた。
「とにかく、あなたがするべきことは、そういう問答ではありません」
「だったら、何だと言うんだ」
「思い出すのです。冒頭の出来事を」
「――そうか、『創造』だな」
俺は、謎の男ナロウに水晶玉をもらったことを思い出した。
彼は言っていた。「創造主は俺だ」と。
ここで初めて、俺は後ろを振り返る。
そこには薄い桃色のドレスを着た女性がいた。
もちろん、胸は大きかった。
「そうか、『自由』にしていいんだな」
「そうです。ここは貴方の世界。」
「じゃあ、胸を揉ませてもらう」
そう言って俺は彼女の乳房をわしづかみにした。
やわらかかった。
よく見る漫画やラノベであれば、こうやって胸を触ったときに、女は動揺したり声を上げたりするのであるが、アルセイヌは終始真顔であった。
まあ、現実というものは、そういうものなのだろう。
「ふむ。それでお前は、アルセイヌは女神という話だったか」
「いえ、女神というと正確ではありません。私は・・・」
「いや、そこは女神ということにしておいてくれ。よくある異世界モノでは、お前みたいな感じのやつは大体女神っていう奴なんだ」
「そうでしたか。それでは女神という呼称を承認いたします」
「カタいな」
横になったままで話をするのはアレだったので、お互いに座った状態で話を再開した。
まあ、自室なので、布団の上ではある。
「それで、女神アルセイヌ、お前の狙いは何だ?」
「今、世界は危機に晒されています。あなたの手で、世界を救ってほしいのです」
「危機?いつも通りの日常に見えるが」
「・・・あなたにはわかるはずです。『黒い影』の脅威が」
「いや、そんなものは無い。黒い影というのは、さっき見た夢の話だ。」
「そうですが・・・」
「そんな暗い話はやめようぜ。もっと明るい話をしよう」
「明るい話ですか、そんなものがこの世界にあるのですか?」
「お前、女神じゃないのか?日本にはな、『八百万の神』ってのがいる。
というか、あらゆるものに神が宿っていると考えたほうがいいかもしれない」
「それはダメです。現実から離れてください。『創造』するのです」
「いや、現実あっての空想だろ」
「やめてください。現実に希望を持たないでください。いや、希望は持ってください。」
「アルセイヌ、お前、おかしいぞ」
うまく会話が成り立っていないような気がした。
ブロンドの女神は、机にあった水晶玉を取ると、うつむきながら俺にそれを手渡した。
「これをどうしろと?」
「何かで見たんですが、水晶玉には特別な力が宿っているとかなんとか。この水晶玉の力で、世界を救って・・・、いや、なんでもないです。生活を便利にしてください。あ、なんでもできますよ、これ」
そう言うと、女神は布団の中に消えていった。
「水晶玉か・・・」
手に持った水晶玉の先に、散らかった荷物が見えた。
「水晶玉よ、あれを片付けよ」
能力バトル的な感じにしていきたい。