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みんな異世界が好き  作者: らーきー
11/12

異世界とカタルシス

異世界というワードを使えばよいものとする。

ようこそ、異世界へ。

ここは、お助け精霊の存在する世界。

うちのはリアラっていう名前だ。


「なあ、リアラ。」

「なんでしょう、マスター」

「ユーツーバって知ってるか?」

「ああ、動画配信者のことですね」

「そうだな。」

「それが、いかがしましたか?」

「あれってさ、生放送ってやつで、視聴者から投げ銭がもらえるんだ」

「はい、そのようですね。条件があるようですが」

「でもさ、それってズルくない?ゲームしてるだけで儲かるなんてさ」

「配信者は実況者といって、トークとかも面白いんですよ」

「そうだけど・・・」

「何かあったのですか?」

「いや、なんかさ。そういう投げ銭もらってるやつらを見てさ。思ったんだ。

ズルいっていうより、やるせないっていうか。

俺は生放送を見ているのに、あいつは稼いでいるというか。

俺は負けているというか、稼げていないというか。

悔しいというか、嫉妬というか、なんというか。」

「アイドルみたいなものですよ。生産者がいれば消費者がいるものです」

「いや、でもさ、おかしくないか?理解できないね。なんて投げ銭なんかするんだ?

あんなの認められないよ。だって、なんかズルい」


俺は自分がみっともないと思うが、それでも言うのをやめなかった。


「ご主人様、そもそも、動画配信者というよりは、動画投稿者というものは、広告収入を得ているのです。

その収入の形式が変わっただけなのですよ」

「しかしな、それってお金の無駄遣いじゃないか?とりとめのない話に、くだらない話に、金を払うだなんて」

「ご主人様、そんなことを言っては、フィクションや創作というものは、たいてい無駄ということになりますね」

「そうだとも。無駄さ。この世界にとってはマイナスでしかない。ニートや引きこもりの温床だよ」

「それは言い過ぎです。」

「ああそうだ、言い過ぎた。でもな、バランスがおかしいのは事実だと思うぞ。」

「そうなのですか?それはご主人様が週末に動画ばかり見て、なんともいえない惨めさを感じているだけではないのですか?」

「それはそうだな」

「人間というものは、相対的な幸福感を得るものですよ。

ご主人様が見ていた動画配信者は、いつもは下らない、愚かな話を繰り広げられていました。

それを見てご主人様は、その者と比較して、自分は相対的にマシだとか、あるいは自分も同情できるとか、そういう感覚をもっていたのでしょう。

しかしそれが、投げ銭システムの導入によって、イーブンでなくなった。

かの動画配信者のほうが、ご主人様よりも相対的に上だということが明らかになった。

それでご主人様は不快な感情をもたれたのです」

「さすがリアラ、分析がうまいな」

「いえ、ご主人様。」

「そうか、俺はやつの動画を見て、相対的に安堵していたんだ。

やつみたいな駄目人間がいるのなら、俺も俺でいいんだ、と」

「カタルシスっていう言葉がありますが、それも似たようなものかと思われます」

「ふむ。ありがとう、リアラ。話してスッキリしたよ」

「ご主人様のお役に立てて、うれしいです。そして働け、ダメ人間」


俺は少しでも挽回したくて、台所の流し場に大量に溜まっていた食器を洗った。

いつもは親がやってしまっているが、今日くらいはさせてくれ。



会話だけでもいいような気がしてきた。

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