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希求のリキト  作者: 硯 蝋 (Suzuri rou)
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第一章 始まり

剣術の練習が終わり、リキトは学校の教室で授業を受けていた。低ランク魔法の原理を学び、実践に活かすといったものだ。

リキトにとって、魔法は得意では無いが不得意でも無かった。魔法よりも、剣術の方に魅力を感じているからだ。


しかし、剣士でも魔法を習得するというのは得策だ。剣士だから魔法が使えないというのは理由にならない。

現に先程のウェールとの一件の時もウェールは剣士の選考で有りながらも魔法を使い、風船の硬度を上げた。

リキトもピスタチオをウェールから守る為に、風の魔法で風圧を起こして周囲の人間を吹き飛ばした。

剣士だろうが弓や斧使いだろうが、必要最低限の魔法は習得するべきなのだ。


「この世界には、様々な属性の魔法が存在する。火を操る魔法、異空間を使う魔法、無機物を作り出す魔法、体力や魔力を回復させる魔法…。挙げ出したらきりが無い。」


教卓の前に立ち、教師は話す。


「各々で得意、不得意な属性の魔法が有る。先祖代々受け継がれてきた属性魔法は、子の代の君達にも遺伝して使える可能性が高い。かと言って、今まで魔法とは無縁だった商人や格闘家には魔法の才能が無い、という訳では無いんだ。」


親が火属性の魔法使いであれば、子も火の魔法を使える可能性が高い。血は争えないのだ。

リキトは、ユーチェ族という一族の血を引いている。代々科学者や研究者に多い一族で、魔法が得意な一族では無い。

しかしリキトには将来、研究者になるという選択肢を考えた事は無かった。イレギュラーもあるものだ。


「そう考えると、結局自分にはどの魔法を学ぶべきか分からなくなってくる。最初から自分には何が向いているのか分かっている人なんて居ないし、そんな人が居たら苦労はしない。習得の不可能な魔法を幾ら勉強したって時間の無駄だし、人生の選択を誤る事も有るだろう。」


そう言いながら教師は、黒板に目を向けて、手を伸ばした。


「そんな人々の為に発明されたのが…。」


「ライフ・レベル。」


リキトの右斜め後ろの席の方で声が聞こえた。声を発したのは、リキトと同じ孤児院で生活しているブルッシュ・コープルだ。歳はリキトと同じ17歳で、リキトよりも少し後で孤児院にやってきた。


「そう。ライフ・レベルだ。流石はブルッシュだね。」


教師は、滑らかな手付きで黒板に文字を書いていく。


「ライフ・レベルは、個人に対してどの属性の魔法が適応しているのかを調べ、それを属性毎にランク化したものだ。FからA、そしてSランクが一般的なランクだね。例えば火の魔法がライフ・レベルFランクでも、雷の魔法がAランクなら迷わず雷の魔法を習得すれば良い。ライフ・レベルさえ分かれば自分のポテンシャルが一目瞭然なんだ。」


ライフ・レベルは確かに便利だ。ディコニア王国はライフ・レベル制度というものが有り、ライフ・レベルを就職するまでには調べておく必要が有る。ライフ・レベルは就職活動の際に、履歴書と共に企業へ提出しなければならない。

企業側は、働き手のライフ・レベルを把握する事により、その者の適材適所を知る事が出来るのだ。


「ライフ・レベルさえ知る事が出来れば、人は迷わずに自身に合った道へ進む事が出来、天命を知り、全うする事が出来るのだ!未来への覚悟が、子供の内に出来るとはなんたる幸福!」


教師はライフ・レベル制度推奨派だった。それが活き活きとした表情からも伝わってくる。彼は、ライフ・レベルは画期的な発明だと信じて止まなかった。

しかし、ライフ・レベルには賛否両論の意見がある。実際、リキトにはライフ・レベルに対してはアンチテーゼな点が幾つかあった。

ライフ・レベルは本当に正しいのか。Fランクだと診断された属性の魔法は、幾ら血が滲む様な努力をしてもランクの高い魔法を習得する事が出来ないのか。

リキトにはライフ・レベルがただの決め付けの様な気がして、幾ら教師が魅力を語ったところで好きにはなれなかった。

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