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The sunrise of the world  作者: うぉるす
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3.男子会




ハッと気づくと俺は男子寮の談話室にいた。

夜ご飯を食べたあと談話室のソファに座っていたらいつのまにかうたた寝をしてしまったらしい。




ソル学は全寮制だ。男子寮、女子寮があり、男女兼用の談話室も、男子専用、女子専用の談話室がある。


いつもならすぐ部屋に戻るところだが、なんとなく誰かと話がしたかった。同室のルナン先輩も、ビビも今日は遅くなると言っていたのだ。

目の前でパチパチと音を立てながら燃える暖炉の火は暖かい。だがこれは炎魔法ではない。かといって自然の炎でもない。この炎は偽物だ。感覚魔法の一種で炎が燃えているように見せ、暖かさを感じさせる魔法だ。龍族の炎が失われてから作られた魔法。



この炎の暖かさが偽物だとしても暖かいならそれでいいのではないか、などと考えてしまう。






誰か来ないかなとしばらくぼーっとしていると、案の定ルカがやってきた。

「あれー?ノっくん何してるのー?」

「いやー…今日ルナン先輩もビビもいないから部屋戻ってもやることないしなーって思って…」

「そういうことね〜」

わざとルカの目を見ずに話していると、

「ノっくん〜〜こっち向いてこっち向いて」

と言ってきた。

「やだよ、俺石化したくないからな。」

ルカの目を見ると徐々に石化してしまう。

「いつも保護魔法使って目見てくれるのに〜」

そう言って拗ねるルカを見て、思わず笑ってしまった。

「楽しそうだね!部屋に戻らないで何してるんだ?」

振り返るとそこには、黒髪に、すこし長めの前髪、黄色い目、紫色の和服を着た整った顔立ちの男性がいた。メッザノッテ高等部の天先輩だ。種族は天狗。

「あってんてんだ〜。のっくんが寂しいっていうから今一緒におしゃべりしてたところだよ〜てんてんも一緒にどう〜?」

「寂しいなんて一言も言ってないからな!!天先輩すみません。」

「相変わらず仲良しだね〜!俺も混ぜてほしいな。」

天先輩はそういうと向かい側のソファに腰掛けた。

「あ、今確かエスポワールが会議してるのか…それで部屋にルナンがいないってことなんだね!」

「そうなんですよね。ビビも今日はいないので…」

「最近ルナぴょんたち忙しそうだよねぇ〜からかっても構ってくれなくてさ〜」

不満げにいうルカを見て天先輩がクスクスと笑った。

「いやルナン先輩たちをからかうなよ…そっか、忙しいのか、エスポワールは…」

「近々、生徒総会があるからだと思うよ。ルカもノワールも、ルナンと仲良いもんな。」

「それを言うならてんてんこそ仲良いでしょ〜昔は2人でやんちゃしてたっていう噂聞いたけど〜」

ルカがそう言うと天先輩は若気の至りだ、と苦笑した。

天先輩とルナン先輩は本当に仲が良く、お互いのインスダによく2人の写真が上がっている。

言うまでもないが2人とも女子にモテる。

昔はやんちゃしてたという噂は俺も聞いたことがあった。今度ルナン先輩がいる時にでも聞いてみようと思った。

「てんてんってさぁ、モテるよねぇ〜?なんでそんなにモテるのか知りたいんだけど〜」

俺も知りたいと思わず言いそうになったのをこらえ、天先輩の反応を見る。

「えっえっ?モテないよ〜ルカの方がモテてるよね?」

「いやたしかにルカもモテてると思いますけど、天先輩もかなり人気ありますよね?」

「そうかなぁ…あんまり意識してなかったなぁ…」

天然タラシか…内心ツッコミながら、思わず笑ってしまった。

「俺も愛されたいんだけどな〜」

「あれ?でもこの前ルカ告白されてたのに断ってなかった?」

たまたま告白現場に遭遇してしまったのだ。

天先輩が意外そうな顔をした。

「へえ!ルカでも断るんだね…前は来る者拒まず去る者追わずって感じだったよね?」

「…」

「たしかに…そういえば最近ルカ全然彼女作らなくなったよな…」

俺がそう言ってもルカは目をそらして黙ったままだった。

そんなルカの様子を察したのか、天先輩が不意に話題を変えた。

「ノワールはどうなんだ??ノワールのそう言う話全然聞かないけど…」

天先輩がそう言った途端、ルカの目がキラキラと輝きだした。

「ゴホッゲホッ……な、な、なんですか天先輩…俺は……別に…」

思わず咳き込むとルカがニヤニヤして言った。

「のっくんは心に決めた人がいるんだもんなぁ〜?」

「えっ、そうなのか!?」

「ちょ、ちょっと気になってるだけというか…!!」

「ノワールクンは好きな人がいるんですカ?」

さっと振り返るとそこには リエさんがいた。

少しはねている黄緑色の髪、黒いマスクで目を覆い、歯を見せて笑い、黒いシャツに白いジャケットを羽織っている。マッティーナ高等部のニェーリエ・アエン。彼は手が8本ある蜘蛛族だ。

「びっっくりしました…リエさんじゃないですか…最近見なかったので忙しいと思ってました。」

「キシシ…私が忙しいわけないじゃないですカ。」

地雷を踏んだ気がした。

リエさんは(売れない)お笑い芸人だ。

「それで、ルナクンがいないようですが、メッザノッテの男子会ですカ?私も混ぜてほしいですねェ。」

「ニェーリエ!今ちょうどノワールの恋バナをしてたところなんだよね〜」

リエさんが来たことで話が逸れたと思ったのに、天先輩がさらっと話を戻してしまった。

「そうなんですネ。気になりますねェ、ノワールクンの好きな人が誰なのカ。」

キシシっとリエさんが笑った。

「いやそのただの一目惚れなんで大した話じゃないですから!!」

思わずそういうと、3人がニヤニヤし始めた。

「へぇ…一目惚れですカ。ノワールクンは面食いっていうやつなんデスネ。」

「リエリエ知らないのぉ〜?のっくんの一目惚れの逸話なら他にもあるんだよ〜?」

「あ、それなら俺も知ってるよ!ノワールが昔…」

「わあああああ!なんで天先輩が知ってるんすか!勘弁してくださいよ!!」

あの話だけはされたくない、そう思ってなんとかして天先輩の話をさえぎろうとした。

「何〜?ノワが僕に一目惚れしたっていう話?」


またこのパターンかと思いながらサッと振り返ると案の定、今この場に一番いて欲しくないやつがいた。


輝くほど綺麗な金髪は女の子のように2つにまとまっていて、まつげの長い綺麗な青い目、黒いシャツに紺のスカート、白い可愛らしいマントを羽織っている。ジョルナータ初等部、アリィ・エトワル。惑星の種族だ。女の子の格好をしているが正真正銘の男だ。

「おい!キラキラ女!やめろ!」

俺がそういってもアリィはニヤニヤと笑った。

「おや、アリィサンではないですカ。先ほどもテレビで見かけましたよ。羨ましいですねェ。」

アリィはツキという芸名でアイドルをやっている。


「ところでアリィサン、今の話はどういうことなんですカ?」

「ふふっ…ボクとノワが初めて会ったとき、ボクのことを女の子だって勘違いして一目惚れしたんだよねぇ?ボクが男だって知った時のノワのあの顔…今も思い出しただけで笑えてくるよ。」

「キラキラ女!なんでバラすんだよ!相変わらず性格悪いな!」

「え?面白いからだよ?」

アリィは見た目は天使のようなのに中身は悪魔だ。ゲスだ。

「ノワールクンにそんな過去が…微笑ましいですネェ。」

「のっくんかーわいい〜〜」

「アリィ可愛いから気持ちはわかるよ」

4人ともニヤニヤと笑っていた。

自分でも頰が赤くなっているのがわかる。恥ずかしい。アリィは今見ても本物の女の子のように可愛い。昔のアリィはもっと清楚で可愛らしかった。女の子に間違えない方が無理というものだ。

「それで?最近どうなの?ラヴィーナ先輩とは!」

アリィなりに話題を変えようとしてくれたのだろう。しかしその話題は今一番したくない話だった。

「…………!!」

俺がなんでその話題なんだと目線を送ると、アリィはドヤ顔をした。


嫌がらせでこの話題にしたのか!?


「ノワールってラヴィーナのことが好きだったのか!!」

「ラヴィーナサンですカ!なかなかレベル高いですねェ。」

「のっくん面食いだよねぇ〜」

「う、うるさいな!!」

「ノワはもっと積極的にいかないとダメだよ?」

大真面目な顔でそう言ってくるアリィ。

「な、なんだよ…人のこと言えないだろ?」

俺がアリィを動揺させようとそう言っても、アリィは表情1つ変えなかった。

「何のこと??あっ!そうだった〜あと10分でボクが出てるミュージックナイトの放送が始まる!部屋に戻って観なきゃ!」

アリィはそういうとさっさと部屋に戻ってしまった。

「くっ……キラキラ女め……」

「のっくん部屋戻る〜?いつも絶対見ねぇ!とか言いながらアリィの番組みてるでしょ〜?」

「なっ、何で知ってるんだよ!録画してあるからいい!!」

「何だかんだ言っても、幼馴染みですネェ……素敵デス!」

「ハハッ。仲が良くて安心したよ。」

みんなが楽しそうに笑うから、思わず俺も笑ってしまった。




最初に感じていた少しの寂しさはいつのまにかどこかに消えてしまったらしい。


あたたかい寮のみんなと話を続けながら、俺はルナン先輩の帰りを待った。


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