第8話 リコとクロと買い物と?
「――買い物っ、買い物っ、ご主人とおっかいもの~っ」
「……買い物」
スキップしながら進んでいくリコ、一言しか言っていないがとても嬉しそうな表情しているクロ、その2人と買い物に行くことになった俺がだがお出かけ早々気がかりなことがある。
それは、リコとクロともに特徴的である耳とシッポがバレないかという気がかりである。
一応、耳はパタッと閉じてもらい髪の毛に隠れて分からないようになっていて、シッポは身体に巻き付けて洋服で覆い隠すような形をとって隠してるのだが、バレやしないか心配で仕方が状態である。
学校では転校初日に皆に耳とシッポがあるのをバレているため、今更隠すような事はする必要ないのだが流石に外出するとなるとそうは行かないだろう。
学校の時ですら、あの騒がれようだったのだから街中でリコとクロの耳とシッポのことがバレてしまったら大騒ぎどころではないだろう。
「リコ、そんなにはしゃぐとシッポが見えちゃうから、もうちょっとおとなしくな?」
「はい! 分かりましたご主人!」
「……(嬉しいのは分かるけど大丈夫かなぁ)」
やはり心配で仕方ないが、それよりも今はリコとクロの服装に目が行って仕方がない。
リコとクロには私服と呼べる私服もなく、ほとんど家の中では俺の洋服を勝手に着て過ごしている感じであったためそれでも目のやりどころに困っている状態。
だが今回に関してはうちの中で唯一の女性であり問題人である、あのお方の洋服を借りて外出することになった。
普段は露出が高い状態であるためか目のやりどころに困っているが、今はいまで女の子らしい格好をしているのが新鮮であるためか、そんなにマジマジと見るのもなんだかと思い、またしても目のやりどころに困っている所にリコが話しかけてくる。
「どうしましたご主人?」
「い、いや! 何でもないよリコ」
「ご主人が言うなら大丈夫ですね!」
何でもないと言っている俺だが内心はめちゃくちゃドキドキしている。
それもそのはずとして、いつもの俺の上着だけ着ているだけという露出も高く、一言で言ってしまえばエロい格好しかしていなかったリコとクロが今日は女の子らしくカワイイ格好をしているのに純粋にドキドキしていた。
そんなドキドキしている中、クロが俺の袖をクイッと引っ張って何か伝えたそうにこちらを見てきた。
「……」
「どうしたクロ?」
「……どう?」
一言でクロにどう?っと聞かれても俺には全く分からず、何をクロは望んでいるのだろうと思いながら考えていると、クロが少し不機嫌な顔をしながら服の袖を掴んでこちらに見せてくるようにして言ってきた。
「……洋服」
「あっ、洋服か! えっとぉ……」
クロに教えてもらうまで気づかなかった俺に不甲斐ない気持ちがこみ上げてくる。
クロが自分の来ている服装について聞いてきたため、改めてクロの服装を見てみることにした。
クロの服装を改めて見てみると、タイトなスカートながらも、スウェットのゆるい感じでリラックス感もある。その上フラットなブーツを履いていてもサスペとスリットによって、もともとスタイルのいいクロがもっと良くなっている。
クロにとても似合った感じの服装になっている事もすごいのだが、これを的確にチョイスしてくるあの問題人のセンスもすごいと思える、というかあの人こんな服持っていたのかという驚きもあった。
「似合ってるし、カワイイと思うよクロ」
「……うんっ」
俺の感想に満足したのか、嬉しそうにうなずき腰に巻き付けて隠していたシッポがヒョコッと出てきてユラユラと揺れて始めた。
「あっ、ちょっと、クロ! シッポ出てるから隠して!」
嬉しくてついシッポが出てきてしまったのか、それに驚いた俺はクロへ注意すると、それに気づいたのかクロが返事をする。
「……わかった」
気づいてくれたのは嬉しいが、この調子でシッポを出されたりすると俺の身が持ちそうにないなぁっと思い、はぁ……っとため息をつこうとしたところでクロの次には、リコが俺に向けて言ってきた。
「クロばっかりズルイですご主人! 私の洋服も見てください!」
「あぁ、わかったよリコ、だから落ち着けって」
「はいっ! わかりましたご主人! では、どうですかこの洋服は?」
自分の服も見てほしいと言って、クルッと一回転して見せてきたリコの服装も問題人チョイスによりリコにあった服装になっていた。
清涼感のあふれるシンプルな形のレモン色のスカート、だからこそネイビーの袖コンシャスなブラウスなどデザイン性のあるトップスともあうという所だろう。
「カワイイよ、リコ」
カワイイという言葉を言うと同時に、リコの頭を撫でるとリコは待ってましたと言うように撫でられに来る。
「ふふっ、ごしゅじ~ん」
撫でられることによって気が緩んだのか、隠してたシッポや耳が両方ともピョコっと出てきて、撫でられている頭の両耳はピョコピョコ動かし、シッポの方はパタパタと振っているのを見て今度はリコに注意する事になった。
「ちょっ! リコ! シッポと耳が出てきてる! 早く隠して!」
「あっ! ほんとですねご主人!」
注意に対して良い返事を返し、早々に出てきたシッポと耳を隠したのを見てようやく一息付けると思ったらそんな暇はない。今度は袖をクロが引っ張ってくるのでクロの方を見てみるとクロが私は撫でてもらってないというような顔をして言ってきた。
「……クロも」
「あぁ、はいはい、クロもね」
お望み通りにクロにも撫でてやると、クロも嬉しいそうな顔をしている。
すると、クロが突然、俺の手を掴むと俺の方に向いて何か言いたそうな顔をしていた。
どこか撫でどころが悪かったのだろうかと思い、クロに聞いてみることにした。
「何か、イヤだったかクロ?」
聞いてみるとクロ、左右に首を振ってこちらに向けて言ってきた。
「……イヤじゃない、……アゴの所も撫でてほしい」
「アゴ? アゴを撫でればいいのか?」
「……うん」
何故、アゴを撫でるのかわからないがとりあえずクロに言われたように、アゴの所をやさしく撫でて見ると、先ほど頭を撫でられているときと違いクロの喉からゴロゴロっと言う音がなっているようだった。
本当にこれでいいのかという疑問が浮かんで着た俺は、クロに確認しようと思い聞いて見る。
「本当にこれでいいのかクロ?」
「……うん、これがいい」
「そ、そうか……」
どうやらこれがいいようなので、もう少しだけ撫でてあげようと思い撫でてみる。
その瞬間、さっきまでシッポぐらいしか出てこなかったのが、シッポと耳の両方が出てきて、耳はリコと同じくピョコピョコと動いているが、シッポがリコと違って今度はピシッと立つような状態になっていた。
「えっ! クロどうしたのそのシッポ!?」
今まで見たことないクロのシッポの動きに驚いて声が出てしまう。
「……っ大丈夫、……っ!」
「(あれ? 何か息切れしてないか? しかも何か顔が赤いぞ?)」
顔を赤くして息切れしているクロ。
何かこれ以上続けるとなんだかいけないと感じ、俺の手が本能的に撫でるのをやめる。
「大丈夫かクロ?顔が赤いぞ?」
「……大丈夫」
何事もなかったかのように、先ほどまでピシッと立っていたシッポをサッと隠し、出て着ていた耳もペタっとして隠して冷静に話すがまだすこし息切れしているように見える。
しかし、何故だろうかこれ以上触れてはいけない気がし、これ以上は聞かず自分でいろいろ調べてみようと思った。
「そうか、それならいいけど」
クロの意外な一面を知った所で、ようやく近所で一番大きいであろうショッピングセンターへとたどり着く。
「わぁ! 大きいですねご主人! ここで買い物するんですか?」
「そうだよ、ここでリコとクロの洋服の買い物をするんだよ」
「すごいですねご主人!」
初めて見た大型のショッピングセンターに興奮する、リコに冷静な顔をしているようだが明らかに目が興味津々の目をしているクロ。
そんな2人に表情が微笑ましいと思いながら、2人に話しかける。
「それじゃ中に入ろうか、洋服を買うところの他にも遊ぶところもあるみたいだし……」
「はい! ご主人!」 「……うん」
元気よく返事をするリコといつものように口数少ない返事のクロを連れてショピングセンターの中へと入って行く。
この時俺は、この買い物が想像していた物より波瀾万丈になるのを知るよしもなかった。




