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第4話 リコとの高校生活2

 ――朝、頬に違和感を覚えた、なぜか頬が湿っている感じがしていたが何で湿っているんだ?っと思うだけで、眠気には勝てず二度寝に入ろうとしたところで、湿っていた原因が分かった。

 ペロペロっと頬をなめる音がして、その後に女の子の声がきこえてきた。


「ご主人起きてください、二度寝するとまた遅刻しますよ?」


 その声の主はすぐにリコだと分かった、それは俺のことをご主人と呼ぶのはリコぐらいしかいないからだ。

 リコだと分かったところで俺は、リコが俺の頬が湿っている原因だと気づき慌てて飛び上がる。


「……うわぁ! な、何やってんだよリコ!」


「あ、やっと起きてくれましたご主人、さぁ学校へ行きますよっ」


 俺の目が覚めたことを確認したリコは、俺に早く行きましょうと急かしてくる。

リコが学校へ行くことが楽しみにしているのは分かったが俺にはどうしても聞きたいことがあった。


「早く行きたいのは分かったけど、リコ、何で俺の頬がこんなに湿っているのかな?」


 それを聞いたリコは、いったい何かおかしいのですか?当たり前ですよと言わんばかりに疑問な顔で言い返してくる。


「ご主人がいつまで経っても起きないから、いつものように舐めて起こしてあげただけですよ?」


「いつものようにって……わ、分かった今度から絶対起きるから舐めて起こすのはやめてくれ…」


 少し悲しそうな顔で「分かりました、ご主人が言うなら辞めます」というリコに、罪悪感を抱きながらも気持ちを入れ替える。

学校へ行く準備を整えてリビングへと降りていくと待ってましたという感じで俺の母、兼・俺の通っている高校の理事長(問題人)である、伊勢日和がそこへお弁当と朝ご飯を作って何故か仁王立ちして立っていた。


「おはよう、愛しき息子よ、よく眠れたかい?」


 何だ、その違和感あり過ぎる言い方はっとツッコミたいところだが、この人にかまっていると遅刻は免れないと思いスルーする。


「おはよう、おかげさまで眠れたよぐっすりとね」


「おお、それはよかった。なかなか起きてこないからリコちゃんにいつものように舐めて起こしてきてとお願いした甲斐があったわ!」


「って、やっぱりあんたの仕業か!!」


 せっかく今回は華麗にスルーできたのだが、やはり問題人、上には上がいる。と同時に一生この人にはどうしても勝てない気がする気持ちが湧き上がってきた。

この勝てる事のない強敵にため息を一つこぼし、早々と朝食をとり、早めに学校へと出発する。


「じゃあ、いってきます。」


「行ってきます、お母様っ」


 出かける挨拶を聞き母は、リビングからひょっこりと顔を出して「おぉ、行ってらっしゃい」っと手をヒラヒラと振りながら返事を返す。

 家を出た後、リコはいつものように俺の腕にひっついている。


「ちょ、リコ、歩きにくいって…」


「いいじゃないですかご主人っ」


 俺のことはお構いなく無邪気にひっついてくるリコに、やれやれっと思いながらも内心、少しうれしい。

 俺はまだこのとき気づいていなかった、いや気づくことが出来なかった。

 リコに向けられている目が好気の目ばかりではないことに、これから起こるちょっとした悲劇を見ることになるなんて、思ってもいなかった。

 ――学校へとたどり着き、教室に入ると待ってましたと言うような感じで、昨日の内にいつの間にか「リコ様のリコ様によるリコ様のためのファンクラブ」というものが結成されていた。

 学校に来て早速、驚かされたがそれよりも結成されたファンクラブのリーダーがあのバカ(高貴)ということも驚き、とりあえず声をかけてみた。


「お前、何してんの? というか何結成してんの?」


 するとよくぞ聞いてくれたという顔でこちらを向き、続いてドヤ顔で語り始めてくる。


「おお、直人か、よくぞ来てくれた、このファンクラブはなリコ様の高校生活を大いに応援し愛でるために結成されてな、そしてこのファンクラブをなぜ結成したのかというのはっ……」


「あっ、はい結構でーす」


「えっ、ちょっと……聞いてくれよ!」


 聞いてほしそうな目でこちらに訴えかけてくるが、そんな事よりこの高貴の話が長くなりそうな上に、こいつの訳のわからんリコに対する一方的な愛情にリコを巻き込ませるわけにも行かない。

このバカの話を切り上げ、さっさと席に座って授業の準備をすることにした。

 その間も、リコはファンクラブのみんなに「リコ様今日も美しいですね」などと崇め奉られていたが、あまりの圧にリコは困った顔で「あ、ありがとうございます」と言っていたがシッポが下がっていたところを見ると、相当苦手でいやな感じだった事が想像できた。


「……今度、あいつらに注意しておくか」


 高貴のバカによって集められた同士達に後でお灸を添えてやろうと心に決めて、次の授業のことでも予習でもしておくかと考えた。

――瞬間……俺の耳元へクラスの端の方から何やら歓声とは違い妬みや嫉みに満ちた嫉妬の声が聞こえてくる。


「なに、あの子ちょっと可愛いからって調子のってるしウザッ…」


「ほんとにうざいよね~、あとで遊んであげないとねぇー」


 聞こえてくる言葉は歓声とは違い嫉妬の声。

いずれにしても注目を集める子や自分にはないものを持っている相手に対して与えられる声であることは確かなもの。

 それが今、リコに向けられている事は間違いない。


「今日はリコの周りを見張っておくか――」


 ――変なファンクラブを作り上げた高貴の話に無視を決め込む。

それによって集まってきた同士達にも休み時間の間にお灸を添え、やっと午前の授業を終え何事もなく昼休みと入り俺はリコの元へ行き弁当を一緒に食べよう思うより先にリコが俺の元へやってきた。


「ご主人一緒にお弁当食べましょう!」


「おう、じゃあ屋上に行こうか、眺めもいいし弁当を食べるには最適だからね」


 その提案に「はい、行きましょうご主人」といい返事を確認し、そのまま屋上へ行こうとしたところ、割り込むようにあのファンクラブ代表であるバカが話に入り込んできた。


「直人さん、直人さん、折り入ってお話があるのですがよろしいですかね?」


「何だよ、きもちわるいなぁ」


「俺もお昼をご一緒させてほしい所存です! お願いします! 直人! いや直人様!」


 迫り来るバカの圧に、若干引くどころかドン引きなのだが断るとめんどくさいことになるので、「わかった、わかったから離れろ」と言うと「さすが親友!持つべきものは直人だな」っと調子のいい言葉を言ってくるあたり、やれやれの一言である。

 そう思った瞬間、あることを思い出し高貴に伝える。


「そういえば、一緒に弁当食べるのはいいけど、お前今日は薫によばれてなかったか?」


「……っあぁ! 薫のことすっかり忘れてた!やばいどうしよう……」


 俺と高貴が話していた薫とは、高貴と同じく俺の幼馴染みのひとりである。

 俺と高貴は昔から小さい頃遊んでいた中で、その中でも高貴と薫は家が近い理由からよく2人で公園で遊んでいたところへ、俺と残りの幼馴染み2人と一緒になって遊んでいた。

 そんな、薫が来ることに焦っている高貴をよそに教室のドアがガラッ!!と勢いよく開いた。


「コウったら昼休みになったら私の所に来てって言ったのに何で来なかったの!」


 教室のドアを勢いよく開け入ってきて高貴のことをコウと呼ぶ少女、この子が一ノ(いちのせ)(かおる)である。

 程よく焼けた褐色の肌。真夏の日差しの中の強い青空を思わせるような、深く濃い青色の紺碧色の瞳、茶毛の髪の毛を頭の後ろでキュッと結ばれたポニーテール。

 制服の上からでもわかる程よく引き締まった手足、そしてくびれのあるウエストすべてが絶妙に良いプロポーション。このような子が彼女になってくれと思う男達の理想郷が詰まった少女である。

 それもそのはず薫は学校内で半年に一回行われる美少女ランキングなるもので2位という結果にいるほど相当な美少女であることを裏付けていた。


「ご、ごめん、薫、今行こうと思っていたんだ! ほ、ほんとだよ!」


「ほんとに? んー、コウが言うなら信じるけどさぁ…」


 半信半疑の中、高貴の言葉を信じるも疑いの目が向けられていた。

 そんな高貴に救いの手を指し述べるかのように、俺は薫へ言葉をかける。


「本当だよ薫、本当に今からいこうとしていたんだよ。」


「ナオも言うなら、まぁいいや信じてあげる、それじゃあコウ、はいこれ」


 俺の後押しもあってか、信じた薫は、持っていた袋を高貴に手渡す。

 その袋には、弁当箱が入っていた。それをもらった高貴は「いつもありがとな」っといいながらうれしそう受け取る。それを見た薫は少し恥ずかしそうに高貴に返した。


「別に家が隣ってのもあるし、料理の練習もしたいからついでにあんたの分もついでに作ってるだけだから……」


「薫が作る弁当はおいしいからな、なぁ直人!」


 ニコニコしながら言ってくる高貴に「お、おう、そうだな」という限りである。

 ちなみに薫が作ってくる弁当は、この前少しおかずを分けてもらった時に食べてみた一言が、絶品。その一言がしか俺の口からは表現しきれなかったほどおいしかった。

 薫が高貴に弁当を作ってくるようになったのは中学生の時。そのときから早くこの夫婦付き合わねぇかなぁっとずっと俺が思っていた。

 高貴と薫は、端から見たら付き合っているようにしか見えないが、実際は付き合っておらず仲のよい幼馴染みの延長戦のような感じで今も続いている。

 反応を見て分かるように高貴のことを好きなようだが、高貴が仲のよい幼馴染みという感覚のままなので、関係が進もうにも進まない状態になっている様子。

 高貴の言葉に恥ずかしがりながらもうれしそうに「お、おいしいか……そうか……」とつぶやいている、上機嫌な薫はふと俺の後ろに隠れていたリコの方に目が向いた。


「ねぇ、ナオ、さっきから気になってたんだけど、その後ろの子誰? 初めて見る子だけど」


 その言葉の後に、リコは俺の背後からひょっこりと顔を出し、薫へと興味を示す。

 リコの姿を見た薫は、驚きながらリコと同じように興味を示し始めた。


「わぁ! 何この子、犬みたいな耳とシッポがある! かわいい!」


 やはり、リコの特徴的な耳とシッポに気づいたのか、近づきモフモフし始める。

 そのモフモフされているのが心地よいのか、ニコニコしている上に、そのモフモフしている薫すらもモフるのが癖になっているのかずっとモフモフしている。


「何この子の耳とシッポ! すごくモフモフしてる! ずっとモフモフしていたーい!」


「少しくすぐったいですけど、触るのが上手ですね! でも私のご主人様の触りにはかないませんけどねっ」


「ナオ、あんた普段どんな触り方してんの……」


 何かものすごく、冷たい眼差しを向けられながら言われているが、俺がいつリコにそんなにモフッたのか分からないで困惑しているとリコが追撃するかのようにまた話し始めた。


「ご主人様の触り方は時にやさしく、時に激しく触られるので本当にすごいんですっ」


「ちょっとまってリコ! そのままだとあらぬ誤解を生んでしまう、というかもう生みかけてるから! というか俺がいつリコにそんなことしたの!?」


 これ以上リコに言い方により、二次被害いや三次被害にまで発展しないように遮るように会話に入り込んで、そしていつ俺がそんなことをしたのか分からなすぎるのでリコに問いかけてみると、自慢げに早口で言い始めた。


「それはですね、ご主人が朝あまりにも起きないようなので起こしに行こうと思って、ご主人のところに言ったら、ご主人があまりにも気持ち良さそうに寝ているので私も一緒に寝たいなぁと思って、添い寝をしたらご主人の寝相によって触ってきたのですが心地よかったのでもう少しこのままでいようと思ったらそのようなことになりましたっ!」


「いや、なりましたって……何で止めなかったの……」


 普通ならそのような状況になったらぶっ飛ばされるか、殺されるのが当たり前なのだろうし、そもそも添い寝時点でおかしいのだがうちのリコにはそのような概念はなくむしろあっちからしてくるぐらいの無邪気さっぷりである。

正論かつ的確な指摘をしているつもりなのだが、リコは何か問題でもありましたか?って顔でこちらを見る。


「ご主人を起こしてしまうのも悪い気がしましたし、それに…ご主人に触れられるのは嫌じゃないですし、むしろ大好きですっ!」


「まってリコ! ……いやリコさん! それ以上はいろいろとまずい!」


 しかし時すでに遅しとはこの事。

薫のほうを見た時にはリコを保護するかのように抱き着いており、薫からの冷たく目そこからは嫌悪感すらも読み取れるくらいに鋭い目つきをしていた。

 ……と同時に後ろでは高貴がなぜかうらやましそうな顔をしていた。


「えっ……とぉ、か、薫…さん? その冷たくそして嫌悪感満載の目をやめてくださるとありがたいのですが…」


 自然と口調が敬語へと変換される。薫に話しかけるも黙り込んで、ひたすら睨みつけるばかりである。

そんな薫に何とかして誤解を解こうとして、一生懸命に無き知識をフルに活用し先ほどリコが言っていた「寝相」というワードを思い出した。


「か、薫、ほらリコが言っていた通り、俺が寝ているときにやってしまった寝相だって言ってたじゃないか! だ、だからほら不可抗力だって!」


「ナオ……」


 少し低く重みのある声で俺の名前を呼ぶ薫に少しオドオドしながら息をのむ。


「は、はい!」


「不可抗力なら仕方がないか! 今度、リコちゃんにそんなことしたらゆるさないからね!」


 間一髪救われた、こいつが高貴と同じ幼馴染でよかったと感謝している。

 高貴ほどではないが、少し天然なところがある薫はすぐに信用してくれたのでそこに救われ俺は一安心した。

 一安心したところで、先ほどうらやましそうな顔をしていた高貴がリコに対して話し始めた。


「リコ様、折り入ってお願いがあります!」


「はい、何ですか?」


 なぜか無駄に緊張した面持ちで一体なにをリコに言おうとしているのか薫やリコは、分からないでいるが俺にはすぐに検討がついた。


「リコ様のその耳を俺にも触らせてください!」


「「何言ってんだおまえはぁ!!!」」


 打ち合わせをしたかのように合わさった、薫と俺の突っ込み、そして薫に蹴られる高貴


「ぐふっ…! 何すんだよ薫!」


「それはこっちのセリフよコウ、あんた何言ってるのかわかってるの?」


 その言葉に高貴は、まるで最後のラスボスに挑む勇者の顔をしながらアホな回答を返してくる。


「わかっているさ、でもなぁ、男にはたとえ負けるとわかっていてもやらなければならないことがある……」


 その言葉がこんなクソなシーンじゃなければものすごくカッコいいんだけどなぁと思いながら見ていると、薫が小さい声で「触りたければ私を触ればいいじゃん……」っと言っていたことは不覚にも高貴には届くことはなかった。


「高貴……お前も隅に置けないぁ……」


「ん? なんのことだ?」


 高貴の肩に手を置きながら、ニヤニヤしていった言葉に高貴は何のことかわからず疑問な顔を浮かべているのを見て、なおさらニヤニヤが止まらないのでいた。


「いや、こっちの話しだ、それよりも高貴。先ほどのお前の願いだが却下だ。」


「な、なんでだ直人!」


「それは本人であるリコに聞いてみな。」


 そう言われた高貴はリコのほうを向き、リコに「なぜですか!」っと問いかけてみると。

 リコは、そのすべて物を包み込むような笑顔で高貴に言い放った。


「すみません、ご主人様以外の男の人に触れられるのは、ちょっと……」


「なん、だと……やっぱり直人には勝てないのか……」


 膝から崩れ落ちる高貴、その姿を例えるなら燃え尽きたボクサーかのような姿である。


「まぁ、そういうことだ、今回はあきらめろ高貴。ほら薫が弁当を持ってきてくれたことだしみんなで弁当を食べようぜ」


 男としてなぜが高貴を見てると悲しくなってきた俺は、救いの手を差し伸べるかのように本来の今日の高貴の目的である一緒に昼飯を食べるという約束を持ちだした。

 すると高貴は先ほどの姿が嘘のように、元通りに戻り生き生きとした姿を見せる。


「それもそうだな! よっしゃ! 屋上行こうぜ!」


「ふっ、まったく現金な奴だな……」


 俺はヤレヤレと思いながらも、高貴が元気になった姿を見てうれしそうにしている薫をみて、「嬉しそうだから、まぁいいか」っと思いみんなに声をかける。


「そんじゃ、みんなさっさと屋上行くぞ」


「はいご主人行きましょう!」


「コウ、私たちも行きましょう」


「お、おう」


 いつものように、リコは俺の腕にしっかりと掴んで歩き、薫は高貴の手を引くように掴んで高貴はそれに引っ張られるように連れていかれる。

 その間の薫は、嬉しそうな顔をしており小声で「どうしよう勢いで手をつないじゃった…」

などと恥ずかしそうにつぶやいていた。

 今日一日何も起きなければいいんだけどっと俺は屋上へ向かっている間ずっと思っていた。


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