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第2話 リコとの高校生活

 男子が俺の方に熱~い視線を向けている。

その理由は意図せずとも分かっていた。朝に転校生としてこの学校に来たリコが、挨拶でいきなり、俺の愛犬であると発言したためこうなっている。

視線の中には殺意と憎悪が込められてるを察すると身体が身震いを起こす……。

――そんな視線の雨が過ぎ去り、昼休みがやってきた。

午前の授業の間、リコからの期待の眼差しや俺が不意にリコの方を見ると絶対に返ってくる満面の笑み。

それにより俺のHPは同級生からの視線の雨によって削られていたのが、完全に回復することが出来たところで俺が抱いている疑問をリコに問いかける。


「リコ、思ったんだがどうやって高校に入学できた?」


その質問にリコはシッポをパタパタさせ、うれしそうには話してくれた。


「それはですねぇご主人! 私が家に1人でご主人の帰りを待っているのを見ていたお母様がですね、私に言ってくれたんですよ」


「そんなに、直人と一緒に居たいなら高校に行ってみたらいいじゃない! 良いねぇ! このラブコメ的展開!……」


「……みたいな、感じにお母様が言っていたので来ちゃいましたっ」


あの問題人!ついに職権乱用しやがった!自分がこの高校の理事長だからってやりたい方題しすぎだろ……

俺の母はここの高校の理事長であり最高権力者であるからやりたい放題。そのやりたい放題なことから高校の生徒や教員、もとい俺から問題児……いや問題人とよばれている。


「来ちゃいましたって……まぁ、可愛いから許そう……」


あまりの可愛さに許してしまうしかなかったが、もし俺じゃなかったとしても、許してしまうだろう……そんな中、リコからの新たなる質問が来た。


「それよりもご主人! ラブコメって何ですか?」


今まで犬であったリコにそのような言葉は聞き慣れないだろうと思いその言葉について説明してやるとしよう。


「ん? あぁ、ラブコメってのは……」


ここでラブコメがわからない人に説明しよう、ラブコメというのは、ラブコメディーの略で、おもに、お色気要素に重点を置く作品が多く、大抵はハーレム状態。

また、「○○ラブコメ」と前にいろいろと要素を付け足すものが多い……それにラブコメは……

 ある程度話したところで、もう一押しラブコメについて語ろうとしたところで、リコに遮られてしまう。


「ご主人、何をさっきから独り言を喋っているのですか? 私を放置しないでください! ……もぉ!」


 頬を膨らませながら、こちらに怒ってくるリコだが、俺はそれを見て『あぁ、可愛い』と思ってしまう(反省する気なし)。


「あぁ、すまん、何でもない、つまりラブコメってのは、恋愛みたいなもの……かな?」


言った後に気がついたのだが恋愛という表現だけではオブラートに包みすぎたと今更ながら思う……


「恋愛? よく分からないですけど、私はご主人と一緒に入れてリコは嬉しいですっ」


もう説明なんて、そんなことどうでも良い!今は先ほど言ってくれた言葉を!俺は!心の糧として生きていく!うん!絶対そうする!

 圧倒的使命感を持って独りで、決意を胸に秘める。


「可愛すぎだろ、もはや兵器レベルだなこれ……」


あぁ、どうしようこのまま、こんな感じがこのまま続くとなると俺いつか萌え死ぬか、もしくはリコからの熱い信頼を得ている俺に対するみんなに暗殺されて死ぬんじゃないかと思うわ。


「何か言いましたかご主人?」


先ほどの言葉は、リコには聞こえていないようだったので、チャンスと思い仕切りにごまかしの言葉を添えることにしておく


「い、いや、気のせいじゃないか? ……そ、そんなことより授業始まるぞ!」


 授業が始まるってことを伝え、リコの気をそらす作戦に出る。


「ご主人がそうおっしゃるなら、気のせいですねっ」


さすがリコ、我が愛犬ながらお利口すぎて今後変な人について行きやしないか、心配で仕方が無いぞ。


「ふぅ……なんとかごまかせた、さて授業に集中っと…」


なんとか、リコの気を逸らす事が出来て授業に集中しようと思ったところで、今度は授業中にあいつが話しかけてきた


「なぁ、直人くん、いつ説明してくれるのかなぁ?」


「説明?! あ! あぁ! 説明ね、説明! し、してやろうじゃねぇかよ!」


 完全に忘れていた事により逆ギレのように返事をする俺にそんなことは気に気にもせず、グイグイと高貴の質問がやってくる。


「リコちゃん、いやリコ様のあの犬耳とシッポはどういうことだ? 本物なのか?」


ん?おいおい、ちょっとまて、リコ様って何だ様って、午前中の間に何があったんだよ。

そしておまえの中でリコの地位がどこまで上がってんだよ、最終的に女神ってよばれそうだなおい。っと思考するツッコミと絶妙に痛いところを適切についてくる高貴の質問に、俺の語彙力ではこの言葉で返すしか見当たらないと思っていた。

――瞬間。俺の中に一つの案が生まれていた。いや、まてよ?奴はバカだ、適当なことを言って単純バカだから信じるんじゃないのか?と考えと共に一か八か、言ってみる。


「ほ、本物なわけないだろ! コスプレだよ、コスプレ!」


そうコスプレ、あの状態を説明するに最も適し誤魔化すことが出来る上に一般的に見てそれにしか思わない。

さすがに高貴でも、信じてもらえないかもしれないけど、この言葉でどうか信じてくれ、お前のバカはそんなものじゃないだろ!っと願うしかなかった。


「コスプレ? ……あぁ! だからあんな格好しているのか! 本物かと思ったぜ!」


あっ、やっぱりこいつバカだ、いやバカで助かった、俺は今までで一番おまえがバカでよかったと思うよ。うん、本当に(切実)。

そんなバカに油断していると、さらなるバカの猛攻が俺を襲う。


「耳とシッポについては理解できた、しかし何でリコ様が、お前のことご主人って呼んでるんだ?」


一難去ってまた一難の意味がどういうことか、辞書を引かなくても理解した瞬間。

言葉の選択を誤ればまた今後の高校生活が残酷になる未来が余儀なくされる。

よし、コスプレつながりで話をつなげればいけるはず。いや行かなければならぬと言い聞かせ、最適な言葉を添えた。


「ほ、ほら、コスプレしてるから、そのキャラの設定っていう物があるだろう? ほら! なりきらなきゃダメだろ? ……なっ?」


何かそれっぽい事と俺の笑顔いらないによって、なんとかならないかなぁっと、少し期待と願いを込めて高貴の返答を伺った。


「まぁ、そう言われてみればそうか……」


よっしゃあ!なんとかなったぁぁぁ!さすが俺!我ながらほれぼれするぜ。っと心の中でガッツポーズをとる。

しかし、高貴の猛攻も止まることなく、喜んでるのもつかの間。次なる質問が襲う。


「あとさ、リコ様がお前に「私はご主人の愛犬ですっ」とか言ってなかったか? あれはどう説明してくれる?」


 さすがにこれに関してはコスプレの言葉では、ごまかしはきかない。

さてどうする俺。もうほかに手段がないぞ。誰か助けてと思いながらもとりあえず言い返事に専念する


「あぁ、えっとぉ、それはだなぁ――」


喉から一つとして出てくる言葉はないし、どう返せばよいのか分からない、もう終わりださらば俺の学園生活!(半分終わりかけてるけど)。

そんなとき、我らが音ちゃんから救いのお言葉が舞い降り、俺を質問地獄から解放させてくれた。


「先生の授業中に堂々と話をするとは、良い度胸ですね~……先生の授業とそのお話どっちが楽しいですか?」


 あぁ、お怒りだ、すげぇお怒りだわ。

冷酷の音さんがお出ましだ!ふだんは温厚でテンションが高いのか低いのか分からない音ちゃんだけど、怒ったときにだけ見せる冷酷の女王かと思うほどの凍り付くような言葉を無慈悲にお告げになる。

 そのような様子をみて卒業した先輩達から代々、冷酷女王・音さんと名前が受け継がれてきて来ているわけが今分かった。


「先生の授業が一番! いや世界一楽しいです! じゃ、じゃあ直人また今度この話しようぜ!」


先生の一言によって救われた……先生、感謝します!もう少しで俺も凍り付く所だったけど……心の中で感謝の祈りを捧げてる俺がいた。

 ―-午後の授業も終わり、後は帰宅するのみとなった俺は、リコのもとへ向う。


「ふぅ、授業も終わったし帰るか……帰るぞリコ」


待ってましたと!っと感じさせるように、うれしそうな顔をこちらに向けてくる。


「はい、ご主人っ」


 返事をするとともに突然、腕に抱きついてきて、しっかり離されないように手と握ってくる。男としては、それはうれしいのだが、恥ずかしいが僅かながら勝ってしまう。


「ばっバカ、そんなに抱きつくな歩きにくいだろ……」


 俺の心境なんてお構いなく、とにかくうれしそうにくっついてくる。


「いいじゃないですかご主人っ」


これは、言っても絶対に離れないなっていうことがわかった俺は、恥ずかしさをごまかしながらあきらめる。


「あぁ、わかったよ勝手にしろ……」


 愛するご主人に許しをもらったリコは、より一層強く抱きついて来た気がする


「ふふっ~、ごしゅじ~ん」


リコに抱きつかれるのは、嬉しかったが、なんだか後ろから学校の校門から出るまでの間生徒達、主に男子高校生(高貴も含む)の視線が痛かった……

 またもや、生徒達の視線の雨により俺の心のHPはもうゼロに近い所まで行っていたのだが、それにお構いなくリコに抱きつかれたまま、数十分やっと我が家に着いた。


「ただいま~」


「ただいま帰りました~っ」


「おう、お帰り~」


今日の原因を作り出し張本人がお出迎えたのだが、今日のことを問いただすまでの気力がなかったので、そのままソファーへと俯せ(うつぶ)に転がるのであった。

しかし、疲れてソファーで寝転がっている俺を見て問題人が言ってくる……


「そんなに疲れてるならお風呂にでも入りな……リコと……」


「お、おう、じゃあ風呂に入ってくる……って今なんて言った!?」


危うく聞き流そうとし、ギリギリの所で気付いた俺を褒めてほしいものである。


「ん? だ~か~ら~リコと風呂に入って来いって言ったの」


「はぁ!? なんで、リコと風呂に入らなきゃ行けないの!?」


「いいじゃん、愛犬なんだし……」


「愛犬なんだしって……でも、今は人間の女の子じゃん!」


 ど正論をぶつけてみるも、さすが我が母、その正論らも聞いてはくれない。


「いっぺんに入った方が早いだろ、それにリコも直人と一緒に入りたいよな?」


俺には、お母さんの笑みがニヤケ顔にしか見えなかった……

その言葉にリコは嬉しそうなに俺に向けて言ってきた。


「はい! ご主人と一緒にお風呂に入りたいです!」


「ほら、リコもこう言っていることだし……」


 この人達、実は裏で繋がっているんじゃないかと思うくらいに息が合っている気がした。


「お前らには、羞恥心というものが無いのか!」


 追い打ちかのように、リコがこちらに問い掛けてくる。


「ご、ご主人……」


「な、なんだ、リコ……」


「わ、私とじゃダメですか?」


上目遣いの涙目でこちらを見ているリコに、あふれ出る罪悪感が俺を追い詰めてくる。

そんな目で俺を見ないで~!っと心の中で叫んでみるも、勿論届くはずもない。

こんなに可愛いし、しかも犬耳の女の子が、そんな顔でこちらを見られたら断れないじゃないか!……と思いつつも若干嬉しい……


「い、嫌じゃないけど、男と女が一緒に風呂入るのはちょっと……うわっぁ!?」


 話してる途中でお母さんに、覚悟を決めろと言わんばかりの蹴りをもらい、体制を崩す。


「男だろ! 覚悟を決めろ!」


「えっ、何、その俺が駄々こねてるみたいな言い方はぁ!」


 事実、駄々はこねているのだが、さすがにこねないといけない気がする。


「お前がぶつぶつ言ってるからだ早く行け!」


 言い返してやろうかと思ったが今度はリコに遮られた


「嫌じゃないならいいじゃないですかっ、さぁ、一緒に入りましょうご主人っ」


しっかりと腕をつかみ、引きずられながら風呂場につれていかれてしまう。


「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ、俺の話を聞いて~!……」


 まさかのリコとお風呂に入ることになってしまった……一体どうなるのだろうか、このままだと別の意味で死んでしまう……


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