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第11話 リコとクロと買い物と?4

――深呼吸をする。脈打つ心臓が徐々に落ち着きを取り戻していくのが感じる。

数分くらい経って、ようやく落ち着きを取り戻した俺はリコとクロの待っている所へと戻ることにした。


「よしっ、戻るか」


――ドンッ。

 その場を後にし、リコ達の方へと足を向けようとしたところで何かにぶつかってしまった音がする。


「きゃっ……」


 ぶつかったのが小さく小柄な白いワンピースを着た少女だと気づき、すぐさま詫びと共に手を差し伸べる。


「あっ! ごめんね君、大丈夫?」


 すると少女は、俺の手を取り立ち上がる。


「い、いえ、こ、こちらこそすいませんっ……」


 ――タッタッタッ。


「えっ、君、ちょっ、ちょっとまだちゃんと謝ってなっ……行っちゃた」


 立ち上がるとすぐに少女は、すぐに逃げ出すかのようにその場から立ち去って行った。

 その時、大きな帽子を被り顔の隠れた少女の特徴的な白い髪を靡かせると共に、大きな帽子か覗かせる髪色と同じ色をした長い耳のような物が俺には見えた気がした。


「あれは耳? いやそんなわけ無いか……って、そんな事よりリコとクロを待たせてるんだった!」


白い少女のことが頭に残ったものの、俺に取っては優先事項であるリコとクロの元へ行くことを思い出し止まっていた足取りを動かし始めた。

――リコとクロの待っているであろう所に行くと、そこにはリコの影があるものの、もう一つはクロの影ではなく別の見覚えのある影があった。


「おっ、やっと来たね、なおとくん」


シンプルな紺色の帽子から、さらりと見える露草色の髪とその髪を飾るように結ばれた氷晶の模様が特徴的なスカーフ。

帽子のツバからのぞかせてこちらに向けられる紺青色の双眸。

白の後ろが長くなったデザイン性の高いロングシャツを容易く着こなしてしまうスタイル。ボトムスにシャツの前を入れ込みラフな着崩しを物してしまう細く白い脚。

オールホワイトの着こなしを物とし、すべての異性、いや同性までもが魅了されるであろう容姿。

その顔には俺は見覚えがあった。我が母校の生徒会長にしてクールレディの異名を持つ少女、氷島雪姫である。


「ゆ、雪姫!? 何でここに? あれ? それとクロはどこにいった?」


ここにいるはずのない雪姫の突然の登場とクロの行方不明により少し混乱に陥っている俺に対し、さすがクールレディ、落ち着いた面持ちで俺に向かって話しかけてくる。


「落ち着いてなおとくん。まずは何故僕がここにいるのかだけど、僕もたまたま買い物に来ててね。そしたら何故か知らないけど一般のお客さんが集まってきたものだからここまで逃げ出してきたらその椅子に座っていたリコくんと出会ってね、そこで僕も君と一緒に来てるということを聞いたから一緒に待っていたのさ」


「あそこでめちゃくちゃ、キャーキャー言われてたのは雪姫だったのか……」


若い女の子達からの声援を受けていた有名人と思っていた奴の正体が雪姫である事を告げられ、さすが雪姫の一言に尽きる。

混乱の原因の一つを解決した俺は、もう一つの原因について問い掛ける。


「雪姫がなんでここにいるのかは分かったけど、さっきまでいたはずのクロはどこ行ったんだ?」


本来いるはずであるクロの姿がどこにも見当たらないのを、恐らく知っているであろうリコ達に聞いて見ると雪姫の後ろにいたリコは答えた。


「クロさんなら、ご主人を探しに行くと言って後をついて行ったはずですけど。途中で会いませんでした?」


「会ってないなぁ、という事はすれ違いかぁ……」


後を追って行ったのにもかかわらずクロと会えてない。ってことは今頃、俺を探しているだろう。

 そんなことが俺の頭の中で過ぎるがその他にも何だか胸騒ぎのような物が感じられた。


「何か、イヤな予感がするなぁ……」


「イヤな予感とはどういう事かい? なおとくん」


口走ったイヤな予感という言葉に疑問を浮かべる雪姫に対して俺は淡々と話を続ける。


「ん? あぁ、いや別にそんな感じがしただけ何だけど、初めて来た場所だし迷子になってそうで心配だからそんな感じがしたのかな?」


「リコくん達は初めて来た場所だから迷子になる可能性は無くもないね。大事になる前に探しに行こうか」


雪姫が探しに行くことを決め、いざ探しに行こうとした所で突然リコが一階の方に指を差し言ってくる。


「向こうの方からクロさんのニオイがしますご主人!」


「えっ? ニオイ? リコ、もしかしてクロの居場所が匂いで分かるのか?」


「はい、ご主人! 私、鼻には自信があります!」


さすが元犬と言った所だろうか、人の100万倍~1億倍もあるとか言われている犬に対して人間である俺には到底できることの無い荒技をこなして見せる所をみると、すごいを通り超してヤバイ気がする。

そんなリコの特技を垣間見て驚いた俺に対し、どうですかご主人すごいでしょ!っとドヤ顔しながらこちらを見てくるリコに素直に称賛し撫でてあげることにした。


「すごいなリコ! そんな事もできるのか!」


「えへへ、ご主人、くすぐったいですっ」


撫でて貰うことをうれしそうに受け、甘えてくるリコに癒やされまくっている俺の所にもう一人寄り添ってきたものがいた。


「なおとくん、リコくん、お楽しみの所申し訳ないけど、そろそろクロと言う子を探しに行かないといけないのではないかい?」


「あぁ! そうだった! よしリコ、クロの所まで案内してくれ」


「はい、分かりましたご主人! こっちです!」


雪姫の一言により我に返り、今の目的である事をリコの先導を元にクロを探し始めた。

そんなとき、リコが匂いを探りながら先頭を歩いてこちらに注意が向いていないのを余所に雪姫が俺の腕に胸を押し当てながら抱きついてくる。


「えっ、ゆ、雪姫!? いきなり何!?」


突然の雪姫からの誘惑に翻弄されながら雪姫の方を見る。


「さっきまでリコくんとなおとくんが二人でお楽しみ中、仲間はずれだったから今度が僕の番かなと思ってね」


「えっ、いや、別にお楽しみのようなことはしては無いつもりだけど?」


「それでも僕は、さっきまで仲間はずれ状態だったんだから、今は僕に少しはご褒美があっても良いと思うよ?」


そう言うと抱きついていた腕をより強く身体に押しつけるように抱きつかせたてきた。


「ゆ、雪姫さん!?」


「どうしたのなおとくん? 顔が赤いよ?」


「あ、あの少しだけ力を緩めて貰ってもよろしいでしょうkっ……ん!?」


雪姫からの魅力的な誘惑から少しでも逃れようと交渉しようとしたところに、その思考をさせることすらも許さぬ一撃を雪姫はしてくる。

先ほどまで単純に腕に抱きついていただけなのが、手の指と指を絡める言わば恋人つなぎという状態で自分の身体の中心に押し当て腕に抱きついてくる形なり、俺は有無言えぬような事になった。


「力がどうしたのなおくん?」


雪姫は頬を少し赤くし微笑みながらこちらに話しかけている。


「い、いえ、何でも無いです……」


妖艶、その言葉について説明するまでも無く理解するは容易であった。

その妖艶さに魅了されない異性がいるのならば、それは生物学上にて意に反しているであろう。それは普段の状況下で魅力的な少女達からの自然な魅了に晒されいる俺も例外では無く心臓が張り裂けそうな勢いで脈打っていた。

逃れる事ができるのであれば今すぐに、逃げたい。

しかしそれが出来ない俺はどうしようも無く受け入れるしか無いと思っていた……。


「ご主人! 雪姫さん! 何してるんですか! 私も混ぜてください!」


後ろの二人の状況に築いたリコは、こちらに勢いよく飛びついてくる。


「うわぁ! り、リコ、落ちついて!」


「雪姫さんばっかりご主人に抱きついてずるいです! 私も混ぜてください!」


自分だけが抱きついていない事に、不満そうなリコはそう言いと空いているもう片方の手に抱きついてくる。


「り、リコ、そんなに抱きついてたらクロを探しにくいんじゃ無いか?」


「大丈夫ですご主人、これでも探せます!」


「そ、そうか? それなら良いけど」


「はい! では行きましょうご主人!」


「お、おう」


2人の美少女を両手に抱きつかせ、まさに両手に花の状態で歩いて行く俺の姿は他の人にどう映るのかと思うと頭痛がしてきた俺は考えるのを止めた。

頭を抱え悩んでいる俺を余所に、うれしそうな2人を見てると考えることがバカバカしくなってきて結局、この言葉に行き着いた。


「2人がうれしそうだし、まぁいいか……」


さっきまでの状況が解決した俺はどこかで迷子になっていないかクロの事が心配でしかたなかった。この心配事が無事に終わってくれることを願うが俺の中でのイヤな予感というものが消えることは無かった。

早くクロを見つけてあげないといけない気がする。焦る気持ちとともに足取りも自然と速くなってくる、このイヤな予感が俺のただの思い違いなら良いのだが……。


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