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第10話 リコとクロと買い物と?3

  ――クロのシッポと耳を直すという俺にとっては試練のような物を終えた後に、今度はリコのシッポと耳を直す事になって、もう一度気合いを入れ直し深呼吸をする。


「(……クロの次はリコかぁ、よしやるか!)」


 クロの試練を降り超えた俺なら、きっとリコの試練の超えられると言い聞かせながらリコの方へ身体を向けた。


「ご主人っ、ご主人っ、早くブラッシングしてください!」


「お、おう、任せとけ」


 ブラッシングしてもらえるとわかっているリコの期待の眼差しに、気圧されながら威勢を放ったのは良いが、その後に行うシッポを直すのが一番神経を注ぐ所である。

 耳の直し方については、いつもやっているブラッシングに耳の事を意識しながらやればいいだけのことであるため、そんなに気を張る必要はないがシッポの方はそうとは行かない。

 なぜなら、クロの時のように服の中に手を入れなければならないからだ。


「よし、始めるぞリコ」


「はいご主人っ!」


 リコの髪の毛へ櫛を入れて行きブラッシングを始めると共にそのブラッシングが心地よいのか、リコから自然と嬉しそう声が出る。


「ふふっ」


「どうしたリコ? くすぐったかったか?」


 俺のやり方がくすぐったかったのかと思い、リコに問い掛けてみるとリコはこちらに振り向き、はにかみながら言ってきた。


「ご主人のブラッシングが気持ち良くてつい、声に出ちゃいました」


「ぉお、おう、それなら良かった」


 リコのなんとも可愛らしい回答に、俺の心は素直に心拍数を上げていく。

 そんな純粋無垢なリコに、世の男達の理性は到底勝てる気がしないではないかと俺の中でまた一つリコ最強説が作り上げられた。

 俺の中でのリコの伝説を作り上げている間に、ブラッシングはもう終わりに近づいていた。


「ブラッシングはこのくらいかな? 次はシッポの方に行くぞリコ」


 俺がそう言うと、リコは残念そうな顔でこちらに言ってきた。


「えっ! ご主人、もうお仕舞い何ですか? もう少しだけ! もう少しだけしてほしいです!」


「そう言われてもなぁ……」


 もう少ししてあげたいのは山々ではあるが、これ以上時間をかけると今回の目的である、リコとクロの洋服を買うのが出来なくなってしまう。

 もう少ししてあげたいという気持ちと買い物をする時間が無くなってしまうという二つの葛藤に挟まれながら悩んでいると、追撃するかのようにリコが俺の洋服を引っ張りながら言ってくる。


「お願いです……ご主人っ」


 リコの上目遣いからのそんな健気にお願いされてしまったら、この世に生きている世の男性諸君(俺を含め)は一溜まりも無いだろう。

 しかし、俺にはそんなリコにも罪悪感に駆られながら心を鬼にして言わなければいけない、言ってやらねば次のステップに進めないからだ。


「リコ、してあげたいのは山々なんだけどこれ以上時間をかけると買い物するじかn…」


「してくれないんですか?……」


「うっ、い、いや、そういうわけでは……」


 心を鬼にして言おうとした言葉も、リコの悲しく切実な思いを込めた言葉によってあっけなく散ってゆく。

 もうこれはしてあげるしかない、いやしてあげたい!(使命感)という気持ちが徐々にこみ上げてきているのに負け、時間は惜しいがやってあげる方を選んだ。


「もう少しだけだけだぞリコ」


 そう言うと、先ほどまで悲しそうにしていたリコの表情が一変し瞬く間に顔をあげてこちらに満面の笑みで飛び込んでくる。


「ありがとうございますご主人っ! 大好きですっ!」


「お、おう、ありがとう……っ」


 リコの天真爛漫童貞キラーにまたしても俺のチョロい心はすぐに心拍数を上げ行く。

 そんなチョロい俺の心を落ち着かせつつ、買い物へと行くためにリコのブラッシングの仕上げを行っていく。


「――よし、こんな感じかな?終わったぞリコ」


ブラッシングにより先ほどよりも、艶もありサラサラした髪になったその姿に嬉しそうに髪を撫でるリコ。あまりの出来にそのブラッシングを施した張本人である俺も何だか自然と自慢げな顔になってきていた。

すると、綺麗になった自分の髪の毛に満足したのか、リコが立ち上がり再び俺の腕へと抱きついてくる。


「ありがとうございますご主人っ、またしてくださいね!」


「あぁ、いつでもしてやるよ」


「では、お買い物にいきましょうご主人!」


「あぁ、行こうか」


またしてあげる約束をし、リコのシッポを直すのも素早く済ませたのだが、やはりクロと同じように可愛らしい声をあげていた。そしてようやく今回の目的であるリコとクロの洋服の買い物をすることができるようになった。

ようやく次の場所へ移動できるようになったため、リコをブラッシングしている間、後ろの椅子でおとなしくちょこんと座り待っていたクロの方へと向かう。


「クロ、ごめんな待たせて」


「……大丈夫」


 リコがブラッシングをしている間、クロは暇しているかと思いきや、先ほどのUFOキャッチャーでゲットした黒猫のぬいぐるみで遊んで暇を持て余していた。

 実はクロもリコがUFOキャッチャーで奮闘している時に隣で、やっていたがリコとは違って冷静にボタンを押し尚且つ一発で商品を手にして見せ、クロの意外な一面を目にした瞬間だった。

 ちなみにリコは犬のぬいぐるみという、元犬が犬のぬいぐるみを持ち、元猫が猫のぬいぐるみを持っているという事情を知らない人が見たらなんとも可愛らしい光景ではあるが、事情を知っている俺からしたら奇妙な光景だった。

 しかし、ぬいぐるみを持つ姿は2人との可愛らしく絵になるというのは納得である。

 そんな、ぬいぐるみで遊んでおとなしく待っていてくれたクロの頭に手を当て撫でながら俺はクロに向かって口を開いた。


「おとなしく待っててくれたからアイスでも買ってあげるぞクロ」


「……うん」


 撫でてもらった上にアイスを買ってくれるのが良かったのか嬉しそうな顔で返事しながら頭をコクリと振る、クロ。そんなクロを見ていて、すぐさまに俺の元へとやって来て、自分にもしてほしそうに期待の眼差しを向けてくる奴がいる。

 そうそれは、うちの中で最も天真爛漫である上に、俺の通う高校では転校してきて一ヶ月も立たぬうちに、俺の友達であり男の幼馴染みの和田高貴がいつの間にか結成されていたファンクラブ(今は俺にお灸を添えられ休止中)の女神様的存在に勝手にされた人物――リコである。


「ご主人!私もアイスが食べたいですぅ!」


 すかさず自分も!っと意思表示をしてくるリコ。自分だけしてもらわないことが気にくわないのか不機嫌に顔で頬を膨らませている。


「リコのも買ってあげるから、そんな顔しないでくれよ、なっ?」


 リコの頭を撫でならが、リコを納得させる言葉をかける。


「はい! ご主人っ」


 リコとクロの幸福な顔を見れて満足した俺は、本来の目的である二人の新しい服を買うことを果たすために洋服屋の所へ向かうことにした。

――洋服屋へ向かう途中で、リコとクロにアイスを買ってあげ休憩を含めて、近くの椅子で座って食べようとしていた時だった……向こう側の道に何だか人集りができ話し声が聞こえてきた。


「ねぇ、見て見て! あの人すごい綺麗!」「カワイイ! いいなぁ私もあんなに可愛かったらなぁ」


どうやら若い女の子達からの多くの声援を貰っているすごい人がいるみたいだった。


「何かすごい声援が送られてる人がいるけど有名人かな?」


 すごい声援を送られてためか俺はおそらく有名人か何かだろうと思うがあまり有名人に詳しくない無い俺からしたら、どんな人なのだろうという興味しか持たなかった。

 そんな興味を持っていた俺を余所に、ペロペロとおいしそうにアイスを食べているリコとクロを見て自然と笑顔で見守りたくなる親の気持ちが分かった気がする。


「アイスおいしいか? リコ、クロ」


 率直にリコ達に感想を聞くと、リコ達は笑顔でこちらに向いてうれしいそうに感想を述べてくる。


「はいっおいしいです! ご主人っ」


「……おいしい」


「そうか、それなら良かった」


 満足してくれていたのを見て和んでいる俺を見て、リコ達がアイスをこちらに差し出してくる。


「ご主人も食べますか?」


「……食べる?」


 唐突に聞かれ戸惑いつつも、一口だけ食べようかと思った瞬間。

脳裏に通り過ぎる一つの感情……これはいわゆる間接キスというものでは無いかと思うと小っ恥ずかしくなり、一口貰おうにも貰えなくなってくる。


「いや、俺は大丈夫だから二人で食べな」


 一度思ってしますと、その事が意識して離れなくなってしまうのは何とも厄介なところであるが、リコ達には悟られないように自然と断って回避しようとしていたが、そんな事がリコ達に通用するわけがないことを考慮していなかった。


「そんな遠慮しないでくださいご主人っ、はい、あ~ん!」


「いや、だから俺は大丈夫だっ…tんっ」


 最後まで言葉を言う暇も無く、一瞬にして口の中に広がるさっぱりとしたオレンジの風味とこんなに甘い食べさせられ方にごちそうさまでしたの一言である。


「どうですかご主人? おいしいですか?」


「はいっ、非常においしいです……つ」


「どうしたんですかご主人? 顔が赤いですよ?」


 手で顔を隠しているがそれでもバレる赤面。

小っ恥ずかしさと平常心が混ざり合った結果によって生まれた敬語と照れのコラボレーションに内心俺でも何でこうなったのか分からないでいた。


「い、いや、別に何でも無いよリコ、それよりもアイスおいしいな!」


「そうですよねご主人っ、このアイスおいしいですよね!」


 話題を変えリコの意思を別の所に向けることに成功した俺は、一息ついて再び平常心を保とうとしたが、そんなの事をする隙を許さない。

そう、その隙を与えない子がもう一人いるのを忘れている事に気づいたときには時はすでに遅し、リコとは反対の方向から何やら袖を引っ張ってくる感覚がありそちらの方に向くとその子はいた。


「……食べて」


 さっきまで食べる?っと、疑問型が食べてという願望型に変わっていた。


「えっと……クロ、俺に食べてほしいのか?」


 一応、確認するように食べてほしいのか聞いて見ると、クロは何の迷いもなく無言で縦に首を振る。


「そ、そうか、じゃあ少し貰うな」


「……うん」


 クロからアイスを少しだけ貰おうとして口にアイスが入った瞬間。

ある程度時間がたっていたからだろう、少し溶けてきていたアイスに気づき咄嗟に出した手にたれ落ちてきた。


「うおっ! あぶねぇ服に掛からなくてよかったぁ」


 さすがに一張羅の洋服に落ちて汚れて気分が落ちてしまうところをギリギリの所で回避したが、その代償として手がベタベタになってしまう。


「どこか洗うところあるかなぁ。トイレとか探すか……リコ、クロ、ここで待っててくれる?ちょっと手を洗ってk……おぉ!」


この手のベタベタの不快感から早くも解放されようとトイレを探しに行こうとした所を突然クロに手を掴まれ体制を崩すようにして元の位置へと戻って行く。


「えっ、なに? どうしたのクロ?」


 突然掴まれ何が何だか分からなくなっている俺を差し置いて、俺の手をジーッと見つめているクロに聞くしかこの状況を理解できずにいた。


「クロ? そんなに俺の手を見てどうしたn……ってクロ!? 何してんの!?」


 今の今まで俺の手をジッと見ていたクロが、徐に俺の手を舐め始め外そうとするも確りと固定されていて外せそうにないことが分かったが、今はそんな事より何故クロが俺の手を舐めているのかという状況についての理解が追いついていなかった。


「ちょっと待ってクロ! 何で俺の手舐めてるの!?」


 必死の俺の言葉にやっとクロがしゃべり出す。


「……きれいにしてる」


「いやいや! 洗ってくるから大丈夫だから! 舐めて綺麗にしようとしなく良いから!」


「……ダメ、クロがやる」


どうあがいても止めてくれそうにないクロに、どうしようかと悩んでいるとクロの舐めはどんどん激しくなっていく。

初めは、手の平をペロペロと舐められてくすぐったいだけであったのが、指の間から指先まで綺麗に余す事無く舐める仕草が異様なエロさを引き立たたせ色気を帯びて来る。

その姿に恥ずかしさが湧いてくる。


「く、クロさん!? も、もうそろそろよろしいのでは!?」


問い掛けも空しく理性的にもう限界に近い俺を余所に、まだご丁寧に指先を舐めているクロに早く終わらせて欲しいが、この状況をどうすることもできないのも事実。

そんな理性を必死で保っているとついに終わりがやってくる時がきたと思えば思いもよらぬ所で不意打ちを食らう。

クロの人差し指の先端を加えた口を開き離れていくと唾液が指先と下唇に糸を引く……すると少し頬を赤くして、こちらに微笑みながら口を開く。


「……これできれいになった」


暴力的な妖艶さ。その妖艶さに魅了されない異性がこの世に存在するのかと思うだろう。

その妖艶さに一瞬にして魅了されたものは性的欲望を叶え、その少女を自分の物にしようと思う者がいるのも無理もないだろう。

辛うじて理性を保てたあの男をおいて一人以外は。


「お、おう! そうだな! ありがとうなクロ!」


「……うんっ」


悟られまいと頑張って返事をしているが、さすがに限界寸前。

気を抜くと、クロの唇の方へと目を向けている自分がいる。

意識してはいけないと自分に言い聞かせるも不意に向けてしまう魔性の唇に、このままではいけないと感じた俺はこの場から離れる為にリコ達へと言葉を残す。


「あっ、ちょっと俺トイレに行ってくるからここで待ってて!」


トイレに行くことだけ伝え、リコとクロの返答は一切聞かずその場から全力で逃げ出していく。

――ハァハァ。

息が荒れ、頬が赤くなる。ここまで全力で逃げてきたからだろうか、それともさっきの名残が残っているのか、恐らく半数以上は後者のほうだ。

クロに舐められていた手を見て、また心臓が強く脈を打ち始めた。


「あんなの反則だろっ」


顔を腕で隠していても分かってしまうほどの赤面。

こんな表情を誰かに見られても恥ずかしいほどの顔

口に残るクロからも貰ったアイスの味。その味はチョコですごく甘かった。でもそれよりも甘い事をされた俺にとっては口の中のチョコの甘さなどほんのり甘く感じた。


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