プロローグ 擬人化の始まり
プロローグ
説明いらないほどの美少女すぐ隣に、朝起きるとそこにはいた。
しかし、俺にはその女の子が誰なのか特徴的な仕草によりすぐに分かった。
「お前、リコなのか!?」
「はい、リコですよっ」
自慢の犬耳をピョコピョコと動かしながらこちらに笑顔で応えてくる。
俺にとってはどうしてこうなったのか訳が分からないでいた。
リコが突然こうなったのも、昨日のことである。
――いつもの日常。
学校の無い土日はいつもの日課である愛犬のリコと散歩する。
朝起きてリビングまで降りて行くと、さんぽっ、さんぽっとこちらに訴えかけるように駆け寄り、トコトコ歩いてる中で時たまこちらをチラッと見ては、また前を向いて歩いてを繰り返しながら散歩をしている様はとても愛らしい。
散歩から帰宅し俺は汗を流すためにシャワーを浴びに行き、シャワーを浴びた後で月に一回行うリコをお風呂のも俺の役目。
リコは月に一回のお風呂を楽しみにしていたのか、しっぽをパタパタとさせながら俺の方を見つめていた。
そんなに待ち遠しかったのかと思い俺はリコに話し掛ける。
「リコ、お前の好きなお風呂の時間だぞー、キレイにしてあげるからおいでー」
その言葉を待ってました!っと言わんばかり、リコは走って駆け寄ってきて、ササッとお風呂場へと入っていく。
ブラッシングからドライヤーまで一通り終わって一段と毛並みが綺麗になったリコが嬉しそうにシッポをパタパタさせている。
「綺麗になってよかったなリコ、それにしてもお前は可愛いなぁ〜」
リコにお褒めの言葉を掛けながら、その綺麗になった毛並みを撫でると、リコはそれに答えるかのように吠える
「わんッ」
お風呂も入り終わり、あとは寝て明日の学校に備えなければならないから寝るようとすると、リコが俺のベットの中に入ってきた。
「どうしたリコ? 一緒に寝たいのか?」
リコに問いかけてみると、その通りですと話しているかのように吠える。
「わんッ!」
「そうか、じゃあ一緒に寝るか、おやすみリコ」
--その日、俺はぐっすり寝た。散歩で疲れていたのか深い眠りについた頃、俺は夢を見ていた。
「やめろ! こんな子犬を虐めるなんて酷いじゃないか!」
少年は叫んだ。
そしてその小さな少年はその虐待を受けている子犬を、守るようにして覆い被さる。
その小さな少年は俺に似てる様な気がする。でも幼少期俺の過ごした場所や、知らない風景ばかりだか、なぜか懐かしく、そしてかなして、むなしくて、つらい気持ちが湧き上がってきた。
その子犬と少年を弄ぶかの様に殴り、蹴り、暴言を吐き、自分の欲求を満たすためだけに愚行を繰り返す奴らを見て俺は怒り叫ぶ。
「何やってんだ! やめろぉ!!!」
しかし、夢の中の奴らには、俺の声は届かない。止めようとしたところで、俺の手は触れるとはできなかった。
その時、かばっていた少年は怯えてる子犬に話し掛ける。
「大丈夫、僕が守るから、こんな奴らなんかに僕は負けたりなんかしないよ。だから大丈夫だよ。」
少年は子犬を励まし、守る。自分の身を危険に晒してまでも……
そんな少年を見た奴らは、ニヤリと笑いながらバットを取り出す。
「僕が守るから大丈夫だぁ? だったらお望み通り守って見せてみろよぉ!!!!」
振り上げられたバットに、俺は手を出したが触れることすら出来ず、少年はバットで何回も何回も殴られた少年は抵抗もなく、力尽きていく。
そんな愚行を目にした俺は何度も止めようとした、でも夢の中の俺には何も出来なかった何もしてやれなかった、それが俺には悔しくて悔しくて仕方がなかった――
奴らは少年が力なく尽きていくのを見て息するまもなく、少年に心なき言葉を躊躇無く言い放った。
「なんだよ、守るとか言っておいてもうくたばってやがる、面白くねぇなぁ」
それに続いくように、残りの二人の奴らも言い放った。
「こいつ、死ぬんじゃね? まぁ、どうでもいいけどっ」
「死んだところで、俺には関係ないからねぇ〜」
残酷にして外道な事、そんなものはバカげている。
それに俺は今までにないくらいの怒りを込めて殴ろうとし握りしめた拳を振るうが、夢の中の奴らには俺の拳がすり抜け届くことはなかった。
奴らが高笑いしている中、倒れて動かなくなった少年に子犬が近づきペロペロと頬を舐める。
その時少年はまだ、息があった。
か細く今にも途切れそうな声で少年は、心配している子犬に話し掛ける。
「ぼく……の…しん…ぱいを…してくれて…いるの? …きみ……は、やさしいね…」
少年の声に応えるかの様に子犬はくぅ〜んと鳴き声をあげる。
「いま…の、うちに…にげ…て、さぁ、はや…く」
自分よりも、子犬ことを思い早く逃げるように言うが子犬は逃げようとはしなかった。
むしろ、先程はよりも近くに寄ってきて、寄り添うように横に座ってくる。
喋ることすらままならない少年の手はその子犬を撫でた後、少年は子犬に話す。
「きみ…の、な…まえつけて…あ…げる、きみの…な、まえは…〇〇…」
「まだ、生きてたんだ? ラッキーっと、殴り足りなかったんだよねぇ!ってことで殴らせろ」
少年の言葉を遮り、またしても奴らは少年にバットを振り下ろした。
「おっ? 一発でもう喋らなくなったぞ? 死んだ? 死んだか? じゃあ次はあの子犬でもやりますか!」
少年はもう動きも言葉も話さなくなり、ただ少年の身体中から血が溢れていた。
そんなことなんかどうでもいい奴らは少年を手に掛けたあと、子犬へと手を伸ばす。
「この子犬は、さすがにバットじゃすぐ終わっちゃうから蹴っちゃおうかな」
子犬は無残にも蹴られ、石を投げられるマトにされた。
俺は何度も止めようと必死にあがいた。奴らの蹴りから子犬を守ろうとして前に立ち塞がっても俺の身体をすり抜けてしまう、マトにされ投げられるのを止めようと奴らの手を掴もうとしてもすり抜けてしまう。
俺には、何も出来ないのか…何もしてやれることは出来ないのか!と嘆くことしかできなかった。
そして奴らは、ついに先程のバットのように今度はナイフを取り出し始めた。
「おい、やめろ! もうやめてくれ!」
俺の声は届かない、届くはずがない。
奴らには、躊躇なく子犬を切り刻み、少年と子犬のあられもない姿を見て言い放った。
「あぁ〜あ、面白かった。さてと次はどんな遊びをしようかな」
信じられなかった、信じたくなかった。
こうも簡単に、人を殺し、動物を殺し、それを遊びだと言う奴らの言葉を俺は信じたくなかった。
「うああぁぁぁあぁぁぁあああああ!!!!!!」
夢の中で俺は叫んだ。
その瞬間、俺は夢から覚め現実へと戻っていった。
――月曜日の朝、俺はあの夢のせいで冷や汗と頬に一筋の涙が溢れると同時に吐き気を催すような不快感とともに身体を起こした。
「あの夢は、一体何だったんだ?、あの子供と子犬はやっぱり死んだのか?」
あの時見た夢の内容が、只々残酷であり、妙にリアルな感覚だけを覚えていた。
その時未だに、先程のリアルな夢と今の現実が入れ混った状態の俺に聞き覚えのない声が聞こえた。
「どうしましたご主人? 体調でも悪いんですか?」
「あ、あぁ、大丈夫だ、ちょっと悪い夢を見ただけだから……って、誰!?」
危うくスルーするところだったのを、間一髪のところで気づいた。
振り向くと、そこには普通は生えているはずのない犬耳、そしてあるはずのないシッポ、まさに犬が擬人化した感じの子が横に座っていた。
「えっ……とぉ、ど、どちらさま〜でしょうか?」
なんともぎこちない敬語で話し掛けた、俺にその子は頬を膨らませ、怒った表情で言い返す。
「ご主人! リコですよ! もしかして忘れたのですか?」
「えっ? リコ? リコってあのリコなのか?」
「はい! そのとおりです! ご主人のリコですよっ」
自信満々に自分のことをリコだと言う女の子。
だが、俺には確信が持てなかったためリコだと証明するためにリコがいつもやっていたことをしてもらい確信を得ようと試みる。
「えっと、本当にリコかどうか確かめるためにやってもらうことがあるとだが……その前に服着ようか……目のやりどころがこま…」
「目のやりどころがなんですかご主人?」
「いや、何でもないから先に着替えよう」
「はいっご主人」
すかさずタンスから自分の服を着せ目のやり場を作り上げる。リコだと証明するためにやってもらうことは、うちのリコがあることをやるときに出る癖を見たほうが1番手っ取り早いのである。
「よし、リコ、このスーパーボールを右と左のどちらかの手のひらに隠して見てごらん」
「はい! わかりましたご主人っ」
背を向け、リコが隠すのを待つこと数分。
「隠したかー?」
「はい!バッチリです!」
返事を確認したところで、前を向き返し、俺はリコのこの癖はまさかっと思い右と答えた。
その答えを聞いて、リコが右手を開いてみるとそこには、スーパーボールがあった。
「ご主人すごい! どうして分かったんですか!」
目を輝かせて関心の眼差しを向けるリコに、その後も何回か繰り返し試したが同じ癖が出ていた。ちなみにリコの癖は、特に物など隠した時は、その隠した物がある方の耳がパタッと閉じるという癖である。
確信を得た俺は再度リコに問い掛ける。
「お前、リコなのか!?」
「はい! リコですよっ」
昨日まで犬だったリコが突然の擬人化し人間の女の子になるという波瀾万丈ことがあって今に至るということである。
「なぜこうなった……」
一体なぜ、こうなったのか謎のままだが、今の俺にはわかることが1つあった。可愛いということだけだった。
犬のリコの擬人化によって始まった、突然の非日常。
これから始まる擬人化少女達と少年の波瀾万丈な日常が動き出すことになる……