目元を染めたbもとい女将さんを尻目に脱衣室を横切り、壁際右奥のロッカーが使用中なのを見て舌打ちする。
というのはこいつが大仰に頭に巻きつけているタオルの絵柄をみれば明らかで、どうしても許せない理由の二つ目がそれである。やけに露出の多いメイド服に機関銃(M134)を構えた少女のアニメ絵で、実はこれこそ小学生女児とキモオタ共の間で爆発的人気を博しているアニメ番組『メイド戦隊☆ゴスロリん』の登場人物ミクたんことメイド戦士No.4氷月美久乃(14)であることを俺はたまたま知っているのだが、このような破廉恥かつ病的嗜好を公衆に晒して恥じない奴には何を言っても無駄だろう。ちなみに俺の異性の趣味は全く正常にして健康であり、ゲロ男もといテロ男の痛タオルに詳しいのは職業柄雑多な知識を蓄えておく必要があるからに過ぎないということをここでハッキリ言っておく。
それにしてもまったくこんな変態野郎のためにかなり行数を費やしてしまったわけだが、いい加減目を転じて横をみれば、そこにいるのは今にも死にそうにプルプル震える年齢じじい性別じじい職業じじい特徴じじい、どこから見てもじじい以外の何者でもない一人のじじい。ていうか絶対明治維新知ってるよねこの人、なんでまだ生きてるの? という素朴な疑問はさておき、こんな骨と皮だらけの老人がどうやって鬼も裸足で逃げ出す「ゆっとり」の焦熱地獄に耐えていられるのかという深い謎に俺もさんざん首をひねったが、どうやら筋肉と脂肪のバランスに秘密があって、これが1:1に近いほど耐えやすいのでないかという仮説に到った。つまり人体は「ゆっとり」による熱暴力に対抗するため発汗して体温を下げようとするのだが、そのためには筋肉内で脂肪を燃焼させる必要があり、脂肪の量に対して筋肉が多すぎると火力ばかり強くて効率が悪いが逆に少なすぎると不完全燃焼をおこすわけで、この爺さんは筋肉も脂肪も限りなくゼロに近いからうーむやっぱり訳分からん。多分あれだ、ラバウル帰りなんだよきっと。俺もいい加減人物描写ばっかりで疲れてきたし、さっさと次に行ってもいいかないいよね。そして残るはあと一人。