悠side
「遙っ!」
急いで家に入り、靴を乱暴に脱いで階段を駆け上がる。
扉を開けると、酷い喘息特有の呼吸音が聞こえてきた。
「遙しっかりしろ!遙っ!」
そっと抱き上げ背中をさすりつつ、吸引器を口に当てると。
遙は薄っすら目を開けた。
「ゆっ……悠……」
「俺がいるから、ゆっくり深呼吸しろ」
背中をさすり、喘息発作を治めさせる。
すると、遙の喘息は治まっていった。
「悠……学校は」
「早退だけど」
他に何がある?と思い微笑むと、
遙はパッと俺から離れようとして…ふらついた。
「遙。熱上がったな」
「ケホケホッ……そう?」
「めっちゃ熱いけど自覚ねぇの?」
「……平気。いつものことだから」
俺は遙を抱き上げベッドに横たわらせる。
「叔母様、いねぇのか」
「……」
「靴なかったぞ」
「……」
「何で叔母様いるなんて嘘ついた。
叔母様が家を出たのは何時ぐらいだ」
「……お兄ちゃんが家を出てすぐぐらい」
遙は布団を目元まで引き上げ、目を閉じる。
「遙!」
「ッ!!」
その拒否をしている感じにイラつき、声を上げると。
遙はビクッとして、ぽろりと涙を流した。
「ごっ……ごめんな、さい…」
「遙、俺の方こそごめん。
大丈夫だから、な」
後悔しつつ、頭を撫でる。
遙は体を固くしてガタガタ震えていた。
「俺ここにいるから。寝て?な?」
「…………どこにも、行か、ない?」
「行かない。遙のそばにいる」
嗚咽を漏らし涙する遙を撫でていると。
遙はゆっくり目を閉じ、眠りについた。
「……大丈夫だ、遙。
俺が絶対にお前を守るから」
俺は遙の手を握りながら、改めて心に誓った。