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遙side




「……良かった」




僕はひとりになった部屋で息を吐く。


お兄ちゃんが学校に行ってくれて良かった。


お兄ちゃんは生徒会長だもん。

皆から信頼されている優等生だもん。

学校に欠かせない存在なんだもん。




「……僕と、違うんだもん…」




ぎゅっと布団を握る。

辛くて、涙が流れた。

涙は喘息発作を誘発させるから流しちゃ駄目なのに。




「ふっ……うぇっ…ゼェゼェ……」




胸が苦しくなってくる。

僕は必死に涙をこらえ、出来る限りゆっくり深呼吸を繰り返す。


数分深呼吸をしていると、

胸は苦しいままだけど呼吸は楽になった。




「ねぇちょっとー、いるんでしょ?」




ノックもなしに入ってくる叔母様。

僕はゆっくり上体を起こした。




「お帰りなさい、叔母様」


「何ー?本当にまた熱出しているの?

わざとじゃないの?」


「わざとなんかじゃ……」




叔母様は父親の妹。

だからかな。

父親に面影が似ている。


実際ふたりはかなり仲が良かったと聞いている。

兄妹の境界線を越えていると思われるほどに。


僕は叔母様が嫌いだ。

僕が大嫌いな父親に似ているから。




「アタシ出掛けて来るから。

変なことしないで大人しくしていてよね」



変なこと。

以前、救急車を呼ぶ事態になったことを叔母様は言っている。


その時叔母様は家にいなかった。

叔母様の旦那さんであるおじ様と一緒に、出掛けていた。


家の中にその時いたのは、僕だけ。

酷い喘息の発作を起こし、玄関で倒れていた所を、宅配便のお兄さんが見つけ、救急車を呼んだ。

扉が開いていたので不審に思ったらしい。


病院に運ばれた僕は、高熱で苦しむ中、叔母様とおじ様が警察に向かって謝っていたのを覚えている。


高熱で寝込んでいた甥を置いて出掛けていたことが、

保護責任者ナンチャラに引っかかりそうになったかららしかった。


結局平謝りしたからか、

「次は気を付けてくださいね」と叔母様たちが逮捕されることはなかった。


だけど数日後退院した僕を見て、

叔母様たちが「今度から変なことしないでね」と言ったのは覚えている。


その目は冷たく、僕の存在を憎んでいるような目だった。




「……わかりました」



叔母様は部屋を出ていき、間もなく玄関の扉が閉まる音がした。



「……ゼェ…ヒュー……」



数分後、喘息の発作が起こる。

僕はいつもベッドの脇にある吸引器を手に取った。



吸い込みつつ考える。



絶対兄に助けなんて求めない。

だってそれが、僕の目標だから。



それに兄は、

僕なんか……大嫌いだ。








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