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遙side





「……ゆう?」



息苦しくなって、目が覚めると。

僕の手を握りながら、兄が眠っていた。



「……悠。お兄ちゃん」



重たい体を起こし、体を揺すると、お兄ちゃんが起きる。

眠そうに眼をこすり、柔らかく微笑んだ。



「おはよう遙。熱は下がったか?」



僕の額に触れ、兄は肩をすくめた。



「まだみたいだな……。

今日はゆっくり休んでいろよ」


「お兄ちゃん……学校は?」


「休むに決まっているだろ?

遙が休みなんだから」


「だって今日は生徒会の会議だって…」


「そんなの先輩方に任せておけば良いんだよ」




「隣良いか?」と聞かれ、答える前に僕の隣に座る兄。

まぁ…断ることなんてないんだけど。



「今体調はどうだ?」


「……少し息苦しい」



ゼェ、ヒューと喘息独特の呼吸音がする。

今は頻度は低くなったけど、喘息持ちの僕。

肺の部分をさすると、兄は吸入器を持ってきてくれた。



「ゆっくり吸えよ」



薬をいれてくれて、僕の口に当ててくれる。

僕はゆっくり深呼吸して中の薬を吸った。




「……もう大丈夫、ありがとう」


「何かあったら言えよ」


「…………」




僕は何も言わず黙り込む。


僕は、悠の双子の弟だけど、育ってきた環境が違う。

幸せな幼少期を送ってきた兄と、ひとりぼっちの記憶しかない僕。


兄とは生まれてすぐ引き離され、再び出会ったのは中学生になってから。

それから数年経っているけど、僕はまだ兄という存在を信じられていない。


きっと兄も、アイツらのように僕をアッサリ捨てるんだ……。




「遙?」


「……ん?」


「どうした?」


「……何でもないよ。

僕、部屋に戻って寝ているね。

お兄ちゃんは学校に行っても良いんだよ」



布団を持ち立ち上がろうとすると、ふらっと眩暈を引き起こす。

倒れ込みそうになり、サッと兄に抱き止められた。



「部屋に戻るなら俺も行く。

遙をひとりになんて出来ねぇよ」



僕を軽々と抱き上げ、2階の部屋に連れて行き、布団をかけてくれた。



「お兄ちゃん……ありがとう」


「ん」



兄は照れたように笑い、僕の頭を撫でた。




兄を、悠を、信じられるようになりたい。

僕はそう願い、眠りにつくことにした。







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