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遙side


夜中。

何だか体がだるくて熱くて目が覚めた。


僕の部屋は一人部屋。

にしては広いベッド。

そこで僕はいつも寝起きしているけど、広くてどうも慣れない。


隣の部屋には双子の兄がいる。

僕とは違い、しっかり者で頼れる兄が。


体が辛くて助けてほしかったけど、呼びに行く気力なんてなくて。

第一、気力があっても僕は兄を呼ぼうとしなかった。


兄は僕とクラスは違うものの同じ学校に行っている。

学年で、兄の名前を知らない人はいないほど、兄は有名人で。


頼りがいがあり、1年生で生徒会長を務めているから、学年問わず兄は人気者で。

成績優秀で、スポーツは苦手みたいだけど明るいムードメーカーで、いつも誰かに囲まれている。


その分お願いをされることも多く、兄はいつだって学校で忙しそうにしている。

勉強を教えてあげたり、他の人の仕事を手伝ってあげたり。

困っている人を放っておけない性格だから、見つけたら先生まで助けてしまうため評判も良い。


文句なしの、頼れる優等生…それが兄。



何が言いたいか言うと、

兄は基本的に疲れている。

皆が皆、頼れる兄に全てを任せてしまうから。

お人好しで優しい兄は、全部文句言わず引き受けてしまうから、いつも疲れている。


それに家でも学校でも、双子の弟という肩書きを持つ僕の存在は兄に付きまとう。

人より体が弱く、頼られるより頼ることが多い、兄と正反対の僕。


僕という厄介な存在を兄は背負っていて、その上多くの人から頼られる。

心も体も兄が休める瞬間は、今寝ている間しかない。


だから僕は、絶対に兄を頼ったりしない。

出来る限り、自分で出来ることは自分でやる。


兄に言ったことがない僕の目標。


僕はちっぽけで、でも大切なプライドを守るため、

ぎゅっと布団の中で辛い体を忘れるため、眠ることにした。



★★★




でも結局、朝には起こしに来た兄にバレてしまった。


申し訳ないと心の中で平謝りしながら、兄の作った朝ご飯を食べる。


僕の体調を考慮して、我が家の朝食は毎回お粥。

1ヶ月の半分以上体調を崩す僕の胃は、他の人より小さく、多くの食べ物を消化することは出来ない。

無理して食べてしまえばお腹を壊すため、医者にも多く食べないよう言われている。


本当は兄は、もっとしっかりとしたご飯が食べたいはずなのに。

僕の体調が、兄を邪魔している。


僕の存在が、兄を邪魔している。




「……お兄ちゃん」


「ん?」


「……ごめんなさい」




兄の顔が見たくなくて、背中を向ける。

泣きそうになるのをこらえていると、兄の優しい手が頭に触れた。




「謝るな。

俺は今が幸せだから」




僕は何も言わず、背を向けたままだった。

ひとつ違うのは、


涙が我慢出来ず、流れてしまったことだろう……。





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