悠side
苦手な方は回れ右をお願い致します。
いつもと変わらぬ朝。
毎朝自然と6時に目覚める俺は、起き上がってすぐ顔を洗い、簡単な朝食を作る。
凝ったものは作らず、重たい瞼をこすりつつ作ったのは、玉子粥。
今はコンビニで買えるから便利な世の中になった。
鍋でグツグツ煮込んだ玉子粥をお椀に流し込み、ふたつリビングのテーブルの上に置く。
他にもこの家に人は住んでいるけど、作るのは俺のを含めたふたり分。
欠伸をしつつ、俺は自分の隣にある部屋の扉をノックもなしに開けた。
カーテンは閉め切られていて、薄暗い室内。
もう1度大きな欠伸をした俺は、まだ眠っている弟に声をかけた。
「遙」
布団に埋もれるようにして眠る弟に声をかける。
低血圧な弟はすぐに起きず、反応は全くない。
俺はベッドに座り、ぽんぽんと布団の上から優しく叩いた。
「遙、朝だぞ。起きろ」
いつもはこれぐらい声をかけ体を揺すると起きるけど、全く起きる気配がない。
俺は不審に思い、布団の中に手を突っ込み弟の手を探して掴んだ。
「おい遙、起きろ」
「……お兄ちゃん」
強めに声をかけると、ようやく反応があった。
でもまだ眠たそうで、布団にますます埋もれてしまう。
「遙。大丈夫か」
「ん…平気だよ……いつものことだからね…」
俺が握る弟の手は燃えるように熱かった。
完全に熱が出ていた。
遙は、俺の双子の弟は他人に比べ体が弱い。
熱を出し寝込んだりすることは日常茶飯事で、もっと幼い頃は救急車で運ばれることもしょっちゅうだった。
今はその頃よりだいぶ安定してきているけど、弱いのは変わりない。
「遙。起きられそうか?」
「んっ……無理そう…だるくて…」
「でも朝ご飯は食べねぇとな。抱き上げるぞ」
そっと布団ごと抱き上げると、遙は俺の首に手を回してくる。
俺は遙を出来る限り揺らさないように、気を付けて1階のリビングへ向かう。
ソファーに座らせ、テーブルの上冷ましておいた玉子粥のはいったお椀を持ってくる。
「遙。少しでも食べような」
「食欲ない……」
「それでも食べないと駄目だ。
一口だけでも食べような」
遙は小さく頷き、俺の持ったスプーンからそのまま玉子粥を食べる。
朝ご飯が味が違うともいつもお粥なのは、遙の体調を気にした結果だった。
「美味しい……お兄ちゃんはお料理の天才だね」
熱で火照った顔にふわりとした笑みを浮かべ、遙は笑う。
俺はこの笑顔のためだけに、
存在しているといっても過言ではないだろう。
大切な、魂の片割れのために。